ツクルバは3月15日、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」のオンラインプレスセミナーを開催した。拡大を続けている中古住宅流通市場の現状と課題について説明した。
カウカモは、年間150万⼈以上のリノベーション物件購⼊検討ユーザーが利⽤している住宅の流通プラットフォーム。再販事業者が売主から物件を買取し、ポータルサイトが物件情報を掲載、仲介事業者を通じて買主が購入するといった不動産における既存の分断された流通構造ではなく、売主から買主までを一気通貫で結ぶことが特徴だ。取り扱いも、内装にこだわった一点ものやリノベーションにより、独自の間取りに変更したものなど、デザイン性の高い物件に重きを置く。
ツクルバ 執行役員の春田亮一氏によると「2016年以降、中古マンションの成約戸数が新築マンションの販売戸数を上回り、現在まで拡大している。日本は長く新築至上主義と言われていたが、今や中古を買うのが当たり前になった。コロナ以降もこの動きは失速しておらず、中古マンション市場は活況を維持している。それに対し、在庫は少なくなっており、需給のバランスが崩れている」と現状について説明した。
「流通物件が減っているため、価格は上昇傾向にある。この流れはさらに加速しており、売りどきは今と考える」(春田氏)とし、カウカモでの売却相談数も、2020年1~2月に比べ、2021年の1~2月は154%に増加したという。
市場が活況な一方で、内装にこだわったり、リノベーションをしている物件は、価格や立地、間取りなど、スペックの紹介が中心になってしまい、その良さが伝わらないことも多いという。「リノベーション物件の売却において、こだわりが評価されていないという市場の課題がある。そうしたこだわった物件は売り方を間違えると損してしまうこともある。カウカモでは、個性を見立てる査定を行い、リノベ物件を探している150万人超のユーザーが集まるマーケットプレイスで集客し、売り手と買い手の趣向性が近く、住まいのストーリーのバトンパスのような人間味ある取引ができる」(春田氏)と、リノベーション物件に特化した、不動産流通サービスを構築。「作って壊すのではなく、作ったものを残しながら自分なりの更新を加えていく。こうした自分らしい住まいが日本の当たり前になるようにしたい」(春田氏)とした。
オンラインプレスセミナーでは、建築設計などを手掛けるデリシャスカンパニー 代表取締役の半田悠人氏とカウカモ 編集長の伊勢谷亜耶子氏による、トークセッションも実施された。
まず、中古リノベーション物件の流通トレンドについて聞かれると半田氏は「『おうち時間』が増えたことによって、住まいに対する考え方が変わった。家でも仕事をできるようにしようとか、キッチンを充実させたいなど、内装の変化を求める人が増えたと思っている。近年のデザイン的なトレンドとしては、広い空間を求める人が増え、部屋数よりも開放的なリビングなど、広さにこだわる人が増えた」とトレンドを解説。
伊勢谷氏は、おうち時間が重視されている現状から「リモートワークが増えて、自宅にワークスペースを設けたい人が増えている。またオンライン会議の増加により、背景にこだわる家、インスタ映えする住まいを求める人も増加している。リノベーション済み物件はこだわった内装が多く、住むと自然とおうち時間が楽しくなることがポイント」とした。
急増しつつある中古物件におけるリノベーションへの興味については、「今までは素敵な空間に住んだり、所有したりすることはお金持ちしかできないと考えている人が多かった。しかしリノベーションであれば個性あふれる空間を普通に作れる」(半田氏)とリノベーションに興味を示す層が増えてきているとコメント。
伊勢谷氏は「日本におけるリノベーションは10~15年ほど前からブームになり、その手法そのものも浸透している。ここにきて、ライフステージが変化した売主の方が増えている」と分析した。またカウカモについては「不動産市場は建物をスペックで評価することが当たり前になっているが、そこに付随する価値にも目を向けて評価することを大事にしている。売主がこだわったポイントを次にお住まいになる方にも伝えている」とスペックだけでははかれない価値の重要性を説いた。
スペック以外の価値について、半田氏は「バブル期の建物によく見られるが、かなり特殊なことをしている。壊されてしまうものもあるが、タイルなど、現在では手に入らないものも多い。そこに価値を感じる」と建築家の視点から希少性について解説した。
また、売主から買主へと家自体が住み継がれることについて伊勢谷氏は「スクラップアンドビルドではなく、今あるものをアップデートしながら使い続けることはエコにもつながる。住み継ぎを促進していきたい」と家の新たな可能性に触れた。
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