“借り物競走”ではない合弁会社の価値--大手企業の合弁会社社長らが語る設立のリアル - (page 3)

親会社を超える時価総額企業への成長を目指す

 今後の方向性についてTOUCH TO GOの阿久津氏は「もともとの計画としてカーブアウトで外に出ようと思っている」と語った。

 「今後は外部資本と協業する方の資本比率も高めるし、最終的にはMonotaROやエムスリーのような、親会社から出ていって、それよりももうちょっと大きくなっていくような会社を目指している。3年後には100店舗ぐらいは最低でも作り、外に出ていく状況を目指す」(阿久津氏)

 spacemotionの石井氏は「上場という目標まではまだ掲げてはいないが、エレベーター広告市場はまだこれからなので、今このブルーオーシャンの間にいち早くマーケットを取りたい」と語る。

 「将来的には阿久津さんと同じで、このspacemotionとして子会社上場なども考えたい。まさにMonotaROは直近の時価総額1.5兆円とかあって、本家本元(住友商事)とほぼ同じ時価総額になっている。三菱地所が時価総額2.6兆円ぐらいなので、そのぐらい大きい会社に育てていきたいと思う」(石井氏)

 今後JR東日本からもっと投資額を増やしたい、投資比率を変えたいという話があっても、「基本的に後は外部の人と組もうと思っていて、われわれがシステムを導入するために一緒に組んでいただける事業パートナーの方と組んでいくという戦略を取りたい」と語った。

 spacemotionの石井氏も、「われわれの事業をブーストしていくためには、三菱地所の力を借り続けるのはあまり得策ではない」と語った。

 「三菱地所がお客さんになることもあるが、一番競合となるデベロッパーにも営業をかけており、実際にもう制約している事例もある。たとえばそういう会社から資本を注入してもらう可能性もあるし、エレベーター会社からお金を入れてもらう選択肢もあると考えている」(石井氏)

 オープンイノベーション実現にあたっての注意点として、TOUCH TO GOの阿久津氏は「オープンイノベーション自体を目的にしていると失敗すると思う」と語った。

 「何かをやりたい、何かを解決したいという目的があり、その手段がオープンイノベーションや合弁会社ということだと思う。そもそもそこを見誤ること自体が危ないと思う」(阿久津氏)

 spacemotionの石井氏も同様の意見だ。

 「会社としてどういう経営戦略を立てているのか、目指すべきゴールから逆算して、必要な手法がオープンイノベーションだとか、合弁会社設立だという流れが正解だと思う。最近は合弁会社やJVとかがキャッチーなワードになっているので私もよく相談を受けるが、それありきで考えるのはちょっと違うのではないかなと思う」(石井氏)

 大企業のオープンイノベーションは、大企業のブランド力やアセットをフル活用できるメリットがある一方で、スタートアップに草創期から参加して富を得るというメリットが得られにくいと阿久津氏は語った。

 「大企業の給与形態とか、中にいたらこんなことをやっても何の得にもならないので、多分ちょっと違った感覚を持っている人じゃないと、この楽しみというか意義を見いだせないと思う。大企業でもストックオプション制度を持つ会社はあるが、その辺がないと優秀な人材は取れないので、そこは僕らの弱いところかなと思っている」(阿久津氏)

 三菱地所も「新事業提案制度ではストックオプション枠ができるような建て付けになっているが、(新規に雇用した社員にまで付与できるような制度)まではなっていなかったと思う」と石井氏は語った。

 今後の展望についてTOUCH TO GOの阿久津氏は次のように語った。

 「今は2023年か24年ぐらいの上場を目指して頑張ろうと思っている。今はコロナ禍でそんなに人手不足じゃないという話になっているが、また結局同じ話になる。そういう時代が来たときに、僕らのサービスが圧倒的なソリューションとして世の中を変えられたらいいなと思っている」(阿久津氏)

 spacemotionの石井氏は次のように語った。

 「まずエレベーター広告を日本に浸透させるところに全力で注力していきたい。まだ設置台数は100台ちょっとなので、できれば来年度中に1000台近くまで数を持っていきたい」(石井氏)

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