撮ったら「翌朝」までお楽しみ--招待制の使い捨てカメラ風SNS「Dispo」を使ってみた

 音声SNS「Clubhouse」の人気が過熱するなか、同じく“招待制”で注目を集めているサービスがある。写真SNSアプリ「Dispo(ディスポ)」だ。インスタントカメラ風の写真を撮ることができ、翌朝までその写真を見られないことが特徴だ。

使い捨てカメラ風写真SNSアプリ「Dispo」
使い捨てカメラ風写真SNSアプリ「Dispo」

 2月半ばにベータ版が登場すると、あっという間にTestFlightの上限である1万人を超える注目を集めた。現在は正式版がリリースされているが、対応しているのはClubhouseと同様にまだiOSのみ。招待制は変わらず、1アカウントにつき20の招待枠が付与される。

 Dispoとはどのようなサービスなのか、なぜこれほどまでに注目を集めるのか。実際に使ってみた感想も交えながら解説したい。

撮影した写真は「翌朝の9時」までお楽しみ

 Dispoの最大の特徴はなんといっても、撮影した写真が翌朝9時まで見られないこと。その理由については少し長い説明が必要だ。

 著名なYouTuberであり、Dispoの創業者であるDavid Dobrik氏は、Instagramに「@davidsdisposable」というアカウントを作り、そこにひたすら使い捨てカメラ(インスタントカメラ)で撮影した写真をアップしていた。月に数回程度の投稿をするに留まっているが、326万フォロワーを抱える人気アカウントだ。

David Dobrik氏の「@davidsdisposable」は326万フォロワーを抱えるInstagramの人気アカウントだ
David Dobrik氏の「@davidsdisposable」は326万フォロワーを抱えるInstagramの人気アカウントだ

 Doblick氏は使い捨てカメラの魅力について、Dispoのウェブサイトにコメントを出している。「Live in the moment.(一瞬に生きる)」と題された文章には、「使い捨てカメラにより、私たちはスマホから私たちの生活を取り戻すことができる」と書かれている。Dispoはdisposable(使い捨て)を意味している。

 スマホのカメラで写真を撮るとき、多くの人は撮影してはチェックし、納得するまで撮り直す。必要であればフィルターをかけることもある。しかし、使い捨てカメラは撮影した写真をすぐには見られない。つまり、撮影が終わったらカメラを置いて、その場を楽しむしかない。作品は翌朝までお楽しみだ。

 Dispoはこの世界観から作られたアプリだ。その瞬間を撮影することがコンセプトなので、スマホに保存した画像を共有することもできない。Dispoで撮影した一瞬こそがかけがえのない時を写しているのだ。

「エモい写真」は世界中で若者を中心に人気

 Dispoはアプリのカメラで撮影するだけ。ズームは少しできるが、フィルターを選ぶことはできない。フラッシュを強めに、画像は少し粗く仕上がる。使い捨てカメラや古いフィルムカメラの味わいだ。

 使い捨てカメラといえば、日本では「写ルンです」が有名だ。数年前から若い女性を中心に写ルンですが人気となっている。Instagramには「#写ルンです」「#写ルンですのある生活」といったハッシュタグ付き投稿が合わせて100万件以上投稿されている。フィルムカメラならではの味わいがエモいからだ。

「写ルンです」と「Dispo」、なんとなくデザインが似ている
「写ルンです」と「Dispo」、なんとなくデザインが似ている

 国内で若者に"エモい(感情が揺さぶられる)"という言葉が流行ったのは数年前から。マイナビティーンズが2018年に発表した10代女子が選ぶトレンドランキング」の「流行ったコトバ」一位が「エモい」だった。その頃から若者はエモい写真を求め、写真アプリもエモい加工ができるものが人気となっている。

 2020年、女子高生の流行ランキングに入ったアプリに「Dazz-フィルムカメラ」がある。このアプリでシャボン玉を飛ばしながら自撮りをすることが流行した。古くからあるカメラに似た加工を施す点はDispoと似ている。しかし、Dazzはフィルムカメラのエフェクトを再現するアプリで、それ以上の仕掛けはない。若者のニーズを捉えた上でスマホのカメラとの向き合い方まで踏み込んだ設計が、Dispoの面白さと言える。

Dispoを使ってみた--Rollsでフラットに交流できる魅力

 では、実際の使い勝手を見ていこう。Dispoを始めるには、電話番号をベースにした招待が必要だ。招待を受け、アカウントを作成するとホーム画面が表示される。びっくりするほどファインダー部分が小さい。アプリのシャッターボタンを押して撮影する。撮影した写真は、翌朝9時まで見ることができない。9時になると、自分の「Library」タブに入る。

(左)Dispoの撮影は小さなファインダーに写す、(右)Libraryの上部に現像待ちの写真が表示される
(左)Dispoの撮影は小さなファインダーに写す、(右)Libraryの上部に現像待ちの写真が表示される

 Dispoには「Rolls」という、アルバムに似た機能がある。Rollsは誰でも作ることができ、「Public」と「Private」を選択できる。自分で作成したRollsに振り分ける、もしくは人のRollsに写真を追加することができる。Rollsを先に指定して撮影してもよい。Rollsを探す方法だが、まだ日本語に対応していないからか、検索欄からは検索できなかった。そのため、Rollsを作成した人か参加している人に招待されるか、ユーザーのプロフィールから発見して参加する方法になる。

 PublicのRollsは、作成した人がモデレーターとなり、メンバーや投稿された写真を管理できる。Rollsには同じテーマで投稿されている写真が並んでいるので、左右フリックで閲覧できる。写真の下には、撮影したユーザー名が表示される。いいねやコメントで交流することも可能だ。RollsにはScoreboardがあり、メンバーの投稿数やいいね、コメントなどがランキングされる。

(左)Dispoで撮影した写真を自分で作成したRollsで公開した、(中央)「Rolls」ではいいねやコメントの数でランキングされる、(右)プロフィール画面には参加しているRollsが表示される
(左)Dispoで撮影した写真を自分で作成したRollsで公開した、(中央)「Rolls」ではいいねやコメントの数でランキングされる、(右)プロフィール画面には参加しているRollsが表示される

 いいね数といえば、Instagramはいいねされることに振り回されないようにと、数を非表示にするテストをしている。Scoreboardは真逆のコンセプトだ。しかし、Scoreboardはいいねをした人、コメントをした人もランキングされるため、交流の活性化に繋がる。全員が機能を絞られた同じアプリで撮影していることも、争いを生みにくい。

 筆者がDispoを初めて知ったとき、若者に流行している"エモい"写真が撮れるカメラアプリが、翌朝9時まで待たせることで使い捨てカメラらしく感じる演出をしたのだと推測していた。

 しかし、実際には写真の出来に惑わされず、その瞬間を楽しんでほしいという深いコンセプトがあった。私たちは写真を撮ったらその場で確認、家に帰ってから入念に加工をして、完璧な作品をSNSにアップすることが当たり前になっている。

 はたして、そこまで自分を演出する必要はあるのだろうか。瞬間を残したらその場を楽しみ、翌日現像された写真を共有して仲間と感動を分かち合う。Dispoは、スマホが登場する以前の時間の使い方を思い出させる。招待枠を得るチャンスがあるのなら、このノスタルジックな感覚をぜひ体験してもらいたい。

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