2020年夏、Facebookはオーストラリア政府に対して容赦ない警告を発していた。ニュース使用料をパブリッシャーに支払うことを同社に義務づける法律の草案をめぐってのことだ。この法案を可決するなら、当社は同国でニュースの配信・共有を制限することになる、という警告だった。
「この草案が可決に至れば、われわれは、オーストラリアのパブリッシャーとユーザーに対して、FacebookとInstagramで国内および国際ニュースを共有することを禁止せざるを得なくなる。われわれがそう望んでいるわけではない、あくまでも最終手段だ」。Facebookのオーストラリアおよびニュージーランドの業務を統括するWill Easton氏は、2020年8月のブログ記事でそう述べた。
「News Media Bargaining Code」というこの法案はGoogleにも影響するが、米国時間2月17日、その法制化に先んじてFacebookが行動に出た。新型コロナウイルスから政治まで、人々が各種の情報をますますソーシャルネットワークに頼るようになっている現状を考えると、同社の決定は重大であり、紛糾は避けられない。
Facebookの報復的な措置は、すぐに政治家や人権団体、報道機関の激しい反発を引き起こした。これらの関係者は、テクノロジー業界大手の権力を監視すべきだという根拠がまたひとつ証明されたと考えている。Facebookはオーストラリア政府との数日にわたる交渉を経て、ニュース禁止措置を撤回すると22日に発表した。
今オーストラリアで起こっていることと同様の事態が、これから世界各地でも起こる可能性がある。欧州連合(EU)とカナダの政治家は、この事態の推移を慎重に追跡していると述べている。フランスはすでに、パブリッシャーにニュース使用料を支払うようGoogleを動かした。
オーストラリアのこの法案と、FacebookおよびGoogleの動向について、知っておきたい点を以下にまとめた。
直ちにというわけではないが、数日中にFacebook上でニュースが閲覧できるようになる。
Facebookは5日間にわたりオーストラリア政府とにらみ合いを続けた後、同国でのニュース禁止措置を解除すると22日に発表した。同国のJosh Frydenberg財務相とPaul Fletcher通信担当相は連名で共同リリースを発表し、論争の的となっている法案に対し、政府が変更を加えることを発表した。
修正事項の中で重要なのは、オーストラリア当局はある企業を法案中の「デジタルプラットフォーム」として指定する前に、その企業が報道機関との契約を通して国内の報道業界に貢献していることを考慮しなければならないというものだ。簡単に言い換えれば、これはFacebookが同国の報道機関との間で十分なライセンス契約を結べば、今回の法令の定めに従う義務を免除されるという事態を望んでいるということだ。
しかし、この騒動はこれで終わったわけではない。Facebookはオーストラリアのニュースに関する方針を転換したからといって、また変節しないとは限らないからだ。
Facebookのグローバルニュースパートナーシップの責任者であるCampbell Brown氏は22日に発表した声明の中で次のように述べた。「(オーストラリア)政府は、Facebook上でニュースが表示されるかどうかを決定する権限が当社にあることを明言した。これにより、Facebookが強制的に交渉の場に引きずり出されることは無くなる」
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