オーストラリア政府によると、従来の報道機関はGoogleやFacebookをはじめとするテクノロジー企業の影響で、広告収入をめぐって苦戦しているという。全面的にではなくとも、広く支持されている意見だ。報道という仕事は、市民に情報をもたらし権力者に歯止めをかけるという点で、民主主義社会において重要な役割を担うと考えられているが、それが脅かされているのだ。オーストラリア政府は公平な競争を望んでおり、他の国でも同じような法律や規制を検討する動きが出てきている。
この法案は、2020年12月にオーストラリア議会に提出された。それによると、報道機関はFacebookおよびGoogleと個別に、または集団的に、コンテンツの代価を求めて交渉できるとされる。「交渉力の不均衡」が十分に立証されれば、政府は今後この法律の範囲を拡大し、他のプラットフォームも対象にすることができる。報道機関とデジタルプラットフォーム側が合意に達しない場合には、独立の仲介者が最終決定を下す。また同法は、「デジタルプラットフォームでユーザーがニュースを扱うときに、そこから収集されているデータについての明確な情報」を報道機関に提示することもFacebookとGoogleに義務づけている。
両社が懸念しているのは、オーストラリアが前例を作ってしまうことだ。その懸念にはもっともな理由がある。カナダでは、閣僚のひとりが国内のパブリッシャーに対する支払いをGoogleとFacebookに要求する際、オーストラリアの例を引き合いに出した。欧州議会でも、議員のひとりが、今後のEUでの立法でも同様の措置を取り入れたいという意向を、米CNETに語っていた。オーストラリアのScott Morrison首相は強硬な姿勢を続けており、2月18日には、インドのNarendra Modi首相に対して支援の強化を呼びかけている。インドは、世界でもFacebookユーザーが多い国のひとつだ。各国首脳への呼びかけは、さらに広がる可能性がある。
FacebookとGoogleは、ともにこの法案に難色を示しているが、その反応は異なっている。Googleは当初、オーストラリアから同社の検索サービスをすべて引き上げると強圧的な姿勢に出ていたが、最終的には主要なパブリッシャーとの合意に落ち着いた。Rupert Murdoch氏が所有するNews Corpとの3年契約もその一環だ。この契約にはGoogleの「News Showcase」も関係してくる。News Showcaseは、パブリッシャーが制作したニュース記事をハイライトする機能で、このサービスを通じてGoogleは全世界の報道機関に10億ドル支払うことを保証した。契約に至ったパターンはフランスの場合と似ており、フランスでは政府との長期間にわたる確執の末にGoogleがパブリッシャーに多額のユーロを支払うことに合意している。
Facebookは、オーストラリアの法案が同社と報道機関の関係を「誤解」しており、パブリッシャーに読者を誘導するという同社の役割を無視していると述べている。パブリッシャーはソーシャルネットワークによって「購読収入を伸ばしており、読者と広告収入を増やしている」のだから、そこから利益を得ている、というのがFacebookの主張だ。ニュースコンテンツは、Facebookのニュースフィードでユーザーが目にする内容の4%にも満たず、それでいてオーストラリア国内のパブリッシャーに対する51億件もの参照を無料で発生させていると同社は述べる。そのうえで、その参照の価値は4億700万豪ドル(約340億円)に相当すると推計している。
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