ソニーの「Xperia PRO」は間違いなく、筆者が長年テストしてきたなかでも、とりわけ興味を引かれるスマートフォンだ。だが、これは万人向けではない。2500ドル(日本では税別22万7091円)という価格は、一般消費者向けのスマートフォンとは一線を画した、写真と動画のエキスパート向け機器というソニーの強気の方向性を引き継いでいる。2020年には、近年のソニー製スマートフォンとしては最高クラスの名機、「Xperia 1 II」「Xperia 5 II」が発売された。Xperia PROは、こうした玄人好みの姿勢をさらに一段引き上げたものだ。「iPhone 12 Pro Max」や「Galaxy S21 Ultra」などと競合することは想定されていない。というより、同等の機能を備えたデバイスはほかにないと言えるだろう。
6.5インチの4Kディスプレイ、5G対応、HDMI入力という仕様で、Xperia PROは写真家、動画撮影者、コンテンツクリエイターに向けた数少ないプロ向けツールのひとつとなっている。ただし、たとえそういった職種だったしても、全員にぴったりだとは言えないかもしれない。
Xperia PROは基本的に、Xperia 1 IIを、若干大きくなってmicro HDMIポートを備えた新しい本体に詰め直したような端末だ。はばかりなく質素で実用的な外見は、実質重視の真面目な機器にふさわしい。本体脇に、専用のシャッターボタン、指紋認証センサーを兼ねる電源ボタンがあり、新たにハードウェアショートカットボタンも追加された。
開けやすいデュアルSIMカードトレイを採用し、外部ストレージ用のmicroSDに使える点も変わらない。カメラも同じで、Xperia 1 II並みの素晴らしい写真と動画を撮影できそうだ。2020年に登場した「Snapdragon 865」チップを採用し「Android 10」を搭載する点も同じだが、RAMは12GBに増強された。このように、Xperia PROの大部分はXperia 1 IIと共通だ。なお、筆者が今回使ったのはXperia PROの生産開始前のモデルである点に注意してほしい。評価付きの詳細なレビューになっていないのも、そのためだ。
そこまでXperia 1 IIと似ているのなら、Xperia PROはなぜ1400ドルも高くなっているのかと不思議に思うかもしれない。その価格差にこそ、Xperia PROの注目すべき点とニッチな存在理由がある。Xperia PROは、スマートフォンであると同時に、カメラモニターにも、また画像ファイルを高速転送できるデバイスにも、そして5G対応のブロードキャスト/ライブストリーミング機器にもなるのだ。写真家や映像作家、動画配信者のクリエイティブな作業を効率化できるその機能性には確かに驚愕した。だが、1週間使ってみると、写真家、映像作家、動画配信者といっても、そのすべての人に向いているわけではないことも見えてきた。
その機能が通常をはるかに超えているという事実はあるとしても、2500ドルという値段には確かにほとんどの人が二の足を踏んでしまうだろう。Xperia PROの機能(スマートフォン、4Kモニター、5Gセルラーモデム)をすべて合わせてみれば、その価格にも少しは納得できるものの、やはり疑問は残る。果たしてこれは、自分に合った端末と言えるのだろうか。
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