格安料金プランによる減収を「非通信分野」でカバーできるか--携帯4社の決算を読み解く - (page 2)

非通信で優位のソフトバンク、社長交代は吉と出るか

 そうした非通信の事業開拓の進展度合いは、来期以降の業績の見方にも影響しているようだ。実際、KDDIの代表取締役社長である高橋誠氏は「持続的成長が私の方針なので、当然来期も増益を狙ってプランを作っていきたい」と話す一方、ドコモの井伊氏は「トータルで減収は出ると思う」と話し、非通信事業拡大やコスト削減などで「早期に増収に転じたい」としている。

KDDIの高橋氏は来期の業績について、料金引き下げの影響がありながらも「増益を狙う」と話していた
KDDIの高橋氏は来期の業績について、料金引き下げの影響がありながらも「増益を狙う」と話していた

 中でもやはり、今後の非通信分野の拡大を考えると優位性があるのがソフトバンクだ。Zホールディングスは3月にはLINEとの経営統合を予定しておりオンラインでの大きな顧客基盤を持つこととなるが、他の2社がそうしたサービスを持たないというのも同社の優位性が際立つ部分でもある。

ソフトバンクは2021年3月に、傘下のZホールディングスとLINEが経営統合予定。大きな顧客基盤を持つLINEを実質的な傘下に収めることで、コンシューマー向けサービスでは大きな優位性を持つこととなる
ソフトバンクは2021年3月に、傘下のZホールディングスとLINEが経営統合予定。大きな顧客基盤を持つLINEを実質的な傘下に収めることで、コンシューマー向けサービスでは大きな優位性を持つこととなる

 またスマートフォン決済の「PayPay」で、すでに3500万の登録ユーザーを持つなど短期間で大きな顧客基盤を持ったことも、大きな強みになるだろう。現在はまだ投資フェーズが続くが、同社代表取締役社長執行役員兼CEOの宮内兼氏は「ある証券会社から、上場すると“でかい”という話を持ってきてもらっている」と話すなど、収益化した時の規模感の大きさをアピールしている。

 ただ同社は4月1日付で、代表取締役社長執行役員兼CEOが、現在の代表取締役副社長執行役員兼CTOである宮川潤一氏に交代する人事を発表している。これまでソフトバンクは、宮内氏が主導する強力な営業体制を武器に業績を伸ばしてきたが、宮川氏は技術畑の出身であるため事業の方向性が変わる可能性も高く、それが非通信を含めた業績全体にどう影響するかが注目されるだろう。

ソフトバンクは営業畑の宮内氏から、技術畑の宮川氏へとトップが交代する予定。その影響が今後どう出てくるかが注目される
ソフトバンクは営業畑の宮内氏から、技術畑の宮川氏へとトップが交代する予定。その影響が今後どう出てくるかが注目される

楽天モバイルは基地局整備コスト上積み、黒字化の見通しは

 一方で、非通信分野で十分な強みを持ち、非通信以外の事業が非常に好調な楽天は、楽天モバイルの事業がやはり業績を大きく左右することになるだろう。楽天モバイルはデータ通信量1GB以下なら月額0円になる「Rakuten UN-LIMIT VI」を打ち出して以降、顧客拡大が急拡大し10日で30万近く契約数を伸ばしている。しかし、使われなければ楽天モバイルにお金が入らないことにもなるため、楽天経済圏での消費に結びつける施策が一層重要になってくるだろう。

 また以前より懸念されているエリア整備に関しても、契約数が増加したことで基地局数を増やし、その分設備投資が当初予定の6000万円から30〜40%増えることを明らかにした。楽天モバイルは2021年夏頃に人口カバー率96%を達成するとしているが、ソフトバンクの宮内氏からは「96%から99%にいく3%で、兆単位のお金がかかる」と、郊外や山林、スポット的な圏外エリアをカバーするのに相当のコストと時間がかかるとの声も聞こえてくる。

楽天モバイルの基地局整備コストはエリア拡大を前倒ししたのに加え、顧客増加による通信品質向上のため、当初予定の6000億円から30〜40%程度増加することとなった
楽天モバイルの基地局整備コストはエリア拡大を前倒ししたのに加え、顧客増加による通信品質向上のため、当初予定の6000億円から30〜40%程度増加することとなった

 楽天モバイルはその対処策として、中軌道衛星を活用して上空からエリア整備を進める考えを示しているが、こちらは技術的に可能であっても、国際的なルール整備が途上であるためすぐ実現できるものではない。そのため楽天モバイルはエリア拡大に向けて今後一層の投資コストが求められる可能性が高く、2023年の黒字化に向けては課題が少なからずあるといえそうだ。

楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏。楽天モバイルの新料金プランや基地局投資増の影響があってもなお、2023年の黒字化の見方は変えていない
楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏。楽天モバイルの新料金プランや基地局投資増の影響があってもなお、2023年の黒字化の見方は変えていない

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