Voicy緒方氏が語る過熱する「音声SNS競争」の行く先--Clubhouse公開インタビュー - (page 4)

人間は「情報」にすごく弱い

——あと、緒方さんの以前の話で面白かったのが「人はそもそも自分の生活を豊かにするために情報を作り出してきたけれど、今はその情報を得るために生きているという逆転現象が起きていて、情報に生かされている。でも音声なら、寒いって言うだけでエアコンがつくような、人が普通に暮らしてるだけで、情報がそれに寄り添ってくる世界が作れる。人間らしい暮らしを取り戻せるんじゃないか」というものです。今Voicyをご存知の方って、結構「ボイスメディア」という認識が強いと思うんですけど、私としては、御社は音声インフラを作る会社になっていくと考えています。その辺のお考えや進捗っていかがですか。

 人間と情報の接点を「インターフェース」って呼ぶわけですけれど、インターフェースは時代とともに変化していて、これが変わるごとに事業もどんどん変化していくと思っています。新聞、テレビ、PC、スマホと時代を変遷していく中で、人はどんどん生活を犠牲にしなくても情報を得られるようになっているんですよね。これの極めつけが、おそらく音声になっていくのかなと。SFの世界のロボットも昔は画面がウィーンって出てきてそれを操作するっていうものでしたけれど、最近は声でオーダーするものが増えました。そもそもインターフェースがそっちに寄っているんです。

 人間って「情報」にすごく弱い。何か情報を得てないと不安になったり、情報を得てることで賢いと思いたくなったりします。根本的には、明日が雨だっていう情報を得ることで傘を取得する。これは何でかって言ったら、傘を得ることによって生活を豊かにするためだったはずなんですよね。

 でも、最近は自分の人生を全然生きてるかわからないけど、情報をとにかく得なきゃとか、それ自体に必死になっちゃっている世の中になってしまった。逆に情報を得るために画面の前にずっと居て、意識だけ高くなってるけど、体は全く動いていないっていう状況になっている人たちがめちゃめちゃ増えています。こんなこと言ってる僕も、画面の前にずっと座ってて今日もひたすら画面の前にいるので、体は弱まってるのに意識だけ上がってるみたいな状況なんですよ。

 だから、生活を止めずに情報を得るには、音声は適していると思うんです。Voicyを始めたときに、感動したツイートがあったんですよ、2018年くらいかな。「Facebook&Twitter通勤から、Voicy通勤に変えた」って。「車窓を見るようになって、富士山を初めて見られた」って。かっこいい!と思って、これ何かのキャッチフレーズにできないかなと思って。「目で見るものは目でみよう、それ以外のものはVoicyで」みたいなCM作りたいなって思いました(笑)。

 世の中情報って、目に入れなくても良いんですよね。目で見て幸せになることがたくさんある中で、耳だけで届けられるものは、できるだけ耳の方にシフトすれば、人間の生活はもっと豊かになるでしょう。

 世の中にIoTが出てきて、そしてそこにSiriとかのインターフェースが入ってきた。そのうち、人はずっと顔をあげて、肩も凝らない状態で、生活するようになるでしょう。「画面の前に座って情報を得るのって、写真とか動画見るときとか、そういう時だよね」っていう時代になるための、インフラを僕らは作っていると思っていますね。

 いろんなところに音声が出てくるのが当たり前になってくる中で、発信・受信にここまで音声が使われるようになったのだから、あと一歩じゃないですかね。あと3〜5年くらいで、「1日の中で音声聴いてる時間と画面見ている時間、どっちが長かったですか?」って聞いたら、音声を聴いてる時間が長い人が本当に出てくると思いますよ。Clubhouseですでにそうなった人もいるかもしれませんね。

——2年前に「目から耳へのインターフェースのチェンジはいつ来ると思いますか?」という質問をした時は「いつ来るかはわからない」っておっしゃってましたよね。今日は「3〜5年後」と具体的になりましたね。

 多分5年もかからないですよ。もうね、だいぶ僕らも見えてきましたね。

——日本の音声市場はまだブルーオーシャンなのかなと思いますが、どう思いますか。

 ブルーオーシャンどころじゃないと思いますよ。おそらく、音声市場が盛り上がったら、スマホが生まれた時の変化と同じか、それ以上の変化が起こるのではないかと思いますね。まだ1%も開けてないんじゃないでしょうか。

——Clubhouseがいきなり登場した2021年にVoicyはどう戦っていくんですか。

 勝負の年ですよね。Voicyがやらないといけないのは、「音声をビジネスにする」ことだと思ってます。間違いなく日本では一番大きいサービスの1つだとは思っているので、その中で発信するプレイヤーや企業がちゃんと稼げたり、音声でやってよかったっていうところまで持っていく。

 声って、一歩間違えたら寂しい人のケアサービスになっちゃうんですよね。お互い寂しいの毛繕いになっちゃう。でも、それでは決して文化は生まれないし、お金が回らないし、産業にならない。文化と産業を作るためには、もうマネタイズだと思っています。僕らはいま、広告だったり、ユーザー課金だったり、いろんな仕組みによって形になってきていて、パーソナリティさんにも年収1000万円クラスの人が結構出てきたんですよ。

 ここからは、もっとそういうプレイヤーを増やしたり、いろいろな企業さんにも参入してもらって、音声サービスに意味があるんだって思わせなきゃいけない。日本の大企業って、成功事例が出たらやっと次の年くらいに出資しようかって感じで、超遅い。アメリカだと新しいものにはどんどん出資されますからね。

 2020年まで、僕らは“文化づくり”は結構できたのかなって思います。Voicyのおかげで音声を聴く文化ができた、喋る文化ができたっていう人が生まれたと思っているので。次は、僕らのリスナーさんとパーソナリティさんとで力を合わせて“産業”にしていきたいですね。

——今聴いてらっしゃる方に向けて、何かメッセージはありますか。

 Voicyをすごい応援してもらいたいなと思っています。ぜひ聴いてみてください。まずは、使ってもらうことが一番嬉しいです。僕らは社会の中でユーザーさんに喜んでもらえることをやっていると思っています。あとはぜひ、Voicyのツイートを応援のつもりでリツイートしてくれたら嬉しいですね(笑)。

 本当に、ONE PIECEのルフィたちみたいな会社なんですけど、働くことと世の中のことに関心を持つことに気概を感じる人はめちゃめちゃ楽しめると思います。いい環境と、ちゃんとしたポジションを望む人には全然向いてないんですけど、ちょっとくらい人生冒険してみたいとか、人生の中で10年くらいは何かをやりきってみたいという人たちは、ぜひVoicyの扉を叩いてくれたらと思います。

 あとは、我こそはっていう人気者の人は、ぜひ声の発信にもチャレンジしてみてください。聴きたい人って絶対いますし、声の時代は100%来るので、今このタイミングで自分の自己表現をしてください。個人の活躍する時代に、自己表現をするなら声が一番です。それも早めにできれば、絶対に損がない。僕に声をかけてくれても良いですし、Voicyのサイトでもパーソナリティを募集しているので、応募してもらえたら嬉しいです。

——ただ、パーソナリティは100人に1人ぐらいしか通らない狭き門なんですよね(笑)。

 カウンセラーって仕事があるくらい、声は聴く方がお金をもらうものなんですよ。だから、聴きたいっていう人に声を届けてる人って、そんなに多くはない。「目立ちたい」「インフルエンサーになりたい」「SNSのフォロワー欲しい」「私の話聴いて欲しい」っていう人は、なかなかその人の話を聴いてくれるリスナーさんを探してあげることができないんですよね。

 やっぱりまだリスナーさんがそんなに多いわけではありません。YouTubeの方が面白いし、みんなNetflix見てるし。その中で、僕らの限られた大事なリスナーさんをパーソナリティさんにマッチングして届けるって考えた時に、確実に聴きたい人がいて、コンスタントに頑張れて、面白い構想でちゃんと一緒にリスナーさんを喜ばせられる人っていうのを、ある程度絞らないといけない。

 その人たちが、一緒にリスナーさんを喜ばせてくれて、それでリスナーさんが増えたら、同じようにどんどんパーソナリティさんも増やしていきたいなと思っています。

——皆さんぜひ、緒方さんにまずはTwitterで気軽にご連絡していただければと思います。

 フォローしたり応援したりしてくれたら嬉しいです。大変やで。もう音声産業とか、こんなClubhouseみたいなの出てきて話題取られるしね(笑)。

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