1月6日、トランプ大統領の支持者らが乱入して起きた暴動事件は、5人の犠牲者が出た。当日は議員が集まり、選挙人団の投票を開票し、バイデン次期大統領の勝利を認定する予定であり、これにあわせた事件だった。
アメリカの民主主義の象徴とも言える議会での事件に対して、Appleのティム・クックCEOは次のようにツイートした。
「この暴動に関与した人々はその責任を負うべきであり、われわれはBiden次期大統領政権への移行を完了する必要がある。最も重要であるわれわれの理想が危機に瀕している今、特にそれが必要だ」
Today marks a sad and shameful chapter in our nation’s history. Those responsible for this insurrection should be held to account, and we must complete the transition to President-elect Biden’s administration. It’s especially when they are challenged that our ideals matter most.
— Tim Cook (@tim_cook) January 7, 2021
Google親会社、Alphabetのサンダー・ピチャイCEOは、議会における無法と暴力、民主主義に対するアンチテーゼだと、従業員向けのメモでコメントしている。
また、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、「平和的な政権移行は、われわれの民主主義が機能するために不可欠であり、政治指導者が模範を示して国家を第一に考えることが、われわれにとって必要だ」とのメモを残した。その他、Intel、IBM、Microsoft各社のトップらも、議会での暴力を批判している。
一方、Twitter、Facebook、Google(YouTube)は、トランプ大統領もしくはその支持者のアカウントを「暴力を助長する」として凍結しており、特に現職大統領のSNSアカウントを永久凍結し、作成された副アカウントも追跡して凍結する異例の事態となった。
そのため、代替するSNSとしてParlerへのトランプ大統領支持者のユーザー流入が顕著となった。もともと巨大プラットホーム企業が言論をコントロールすることに異を唱えて作られたSNSで、議会乱入事件以前から、暴力的なコメントであふれていた。
Appleはそうしたコメントを規制する「モデレーション」を要求したが、満足が得られる結果がなかったため、App StoreからParlerアプリを削除した。GoogleもGoogle Pay Storeからアプリを削除している。App StoreはiPhoneやiPadで利用するアプリをダウンロードする唯一の手段となっているが、多くの場合ウェブブラウザからのアクセスも可能なはずだった。
ところが、ParlerのサービスをホストしているAmazon Web Serviceから、1月9日、Parlerへのクラウドサービス提供を停止する通告があり、1月12日に予告通りサービスを停止した。
結果として、GAFAの各企業がそれぞれの理由で、Parlorを閉め出す形となり、Twitterのトランプ大統領アカウント凍結も含めて、プラットホーマーによる言論封殺だとの批判もある。ドイツのメルケル首相は、1月11日、Twitterの判断に対して「意見表明を自由に制限する行為は法に基づくべきだ、と批判した。
一方、米国の法の前提からすると、1996年に制定された通信品位法230条で、プラットホーム事業者が、ユーザーの投稿を編集・削除する権利を認めており、その判断がプラットホーム側に委ねられている。法を逸脱した行為とは言えず、放置することで社会的なリスクがあると判断すれば、私企業としての措置を執ることはあり得る。また表現の自由の侵害との批判は、そもそも私企業に対して向けられるものではないだろう。
しかしながら法の原則論で語りきれない部分もある。2020年の大統領選挙では、投票者の半数近くがトランプ大統領を支持していたこと、シリコンバレーが歴史的に民主党優勢なカリフォルニア州にあることから、米国における保守派とリベラル派の争いに、公平であって欲しかったプラットフォーマーが、リベラル側に加担していると映るかもしれない。
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