2020年のアップル製品を振り返るホリデーガイド。Mac編、AppleWatch編に続き、今回はiPad編をお届けする。2020年、iPadのアップデートは広範にわたり、iPad miniを除くすべてのモデルに最新版が登場したことが印象的だった。特にiPad Airの守備範囲は広く、多くの人にとってぴったりな製品と言える。
2020年末現在のiPadのラインアップをおさらいしておこう。モデルはいずれもWi-Fiモデルだ。
AppleはiPadに限らず、ミドルレンジの製品の強化に取り組んできた。そもそものハイエンド志向の終焉に加え、経済状況、さらにはわれわれの生活を一変させる新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態が押し寄せた。結果としてAppleは、そうした周辺環境の変化に最適な選択をしたと振り返ることができる。
iPadは、世界各国でロックダウンとなってからオンライン授業やリモートワークの需要を捉え、前年比46%増(2020年第4四半期)を記録するなど、売上高を躍進させてきた。iPadを通じて家庭での学習環境を整えることによって、自律学習やオンライン授業に手軽に対応できる点が支持された。
日本でもGIGAスクールによる「1人1台」の導入が前倒しで実施された。熊本県が先行したセルラーモデルのiPad導入によって、災害に強いデジタル教育環境の事例ができ、「熊本モデル」として神奈川県鎌倉市や大阪府枚方市などへと同様の拡がりを見せた。
学校の外の人に気軽に話をしてもらう、同世代の他の地域の生徒と議論をする、文章では表現が難しい学習のまとめをビデオ作成で取り組んでもらうなど、教員は「やりたかった授業」をiPadを活用して制限なく取り組むことができるようになり、かつロックダウン時にもつながり続け、学びを止めない仕組みを作り上げることができた。
iPadを用いた教育を実現するアプリも注目された。Appleが表彰する「今年のアプリ」(Best of 2020)でトレンドアプリとして紹介された「Explain Everything Whiteboard」は、先生はホワイトボードを用いた授業をライブ配信もしくは収録することができ、生徒もiPadだけでそれを受講することができる仕組みだった。
iPadがオンラインを介した教育・学習のツールとして非常に注目されたことを物語る。
Appleは2020年、iPad miniを除くすべてのiPadモデルを刷新した。5月にiPad Pro(11インチ、12.9インチ)を刷新し、カメラモジュールには超広角カメラとLiDARスキャナを追加。ポートレートモードへの対応やARコンテンツの作成・消費の体験を大きく向上させた。プロセッサはA12Z Bionicとなり、A12Xで無効化されていたGPU1コアを有効化した8コア構成とする小幅な変更となった。
2020年9月にApple Watchとともに発表されたのが、iPad(第8世代)とiPad Airだった。iPadはA12 Bionicチップが採用され、廉価版iPadとして初めてニューラルエンジンが採用された。今後、教育アプリでも機械学習処理を生かしたアプリが登場することが期待される。
一方でiPad AirはiPhone 12に先駆けA14 Bionicを搭載しており、バッテリー容量が大きいこともあって、ベンチマークではiPhone 12シリーズよりも高速に動作する。iPad Pro 11インチの筐体をそのまま使う縁なしディスプレイのデザインを採用。TureDepthカメラや超広角カメラ、LiDARスキャナを非搭載とし、ディスプレイは0.1インチ小さく、可変リフレッシュレートのProMotionも省かれコストダウンが図られている。
そのかわり、省かれたホームボタンに内蔵されていたTouch IDをトップボタンに搭載し、指先で触れれば指紋認証でロック解除できるようになった。試してみると、コロナ禍において、マスクのせいでFace IDが不便になっていることから、トップボタンのTouch IDの方が便利だと感じる場面も多々あった。
iPad Airにはシルバー・スペースグレーに加え、ローズゴールド、グリーン、スカイブルーの各色が用意された。前述のようにiPad Pro 11インチと同じボディであるため、Magic KeyboardやSmartKeyboard Folio、Apple Pencil(第2世代)といったアクセサリをそのまま利用できる。
ラインアップの中で最も魅力的な製品は、やはりiPad Airだ。
オリジナルのiPadのサイズを踏襲しながら、縁なし液晶で画面サイズを拡げ、Touch IDの新しい実装も現在の状況に非常にフィットする。カメラはシンプルなものが搭載されるに留まっているが、11インチiPad Proとの価格差は、ストレージの違いはあるものの、売り出しの価格で2万2000〜2万4000円あり、iPad Airの手頃感が強調される形となる。
画面サイズは大きいものの、iPad(第8世代)よりも薄くて軽く、スタイリッシュ。確かにカメラとディスプレイはiPad Proに負けるが、プロセッサは最新でパフォーマンスもiPad差異化用レベルとなっており、利用できるアクセサリがすでにそろっていること、選べるカラーバリエーションが多いことを考えると、iPad Airは個人ユーザーからすると選びやすい製品だ。
iPhoneのように2〜3年ではなく、おさがりを家族に使ってもらう前提で5〜6年程度は使っていくことを想定して選ぶと良いのではないだろうか。ただ、iPadがそれだけ長い目線で選べるのは、PCと違い、同じことをやるならいつまででも同じパフォーマンスを発揮できる、という点だ。それが4Kビデオの編集だろうが、3Dゲームだろうが、機械学習処理であろうが、同じことだ。
近年Appleは、iPadOSに限らないが、OSのアップデートでデバイスのパフォーマンスを落とさないように心がけている。これは技術力の見せ所でもあるし、デバイスが長持ちするという環境対策における価値も重要視されることになる。
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