Apple Watchは、Appleの中で現在最も高成長を続けているウェアラブル部門の中核製品だ。スマートウォッチ市場をリードしているだけでなく、腕時計市場そのものを変化させてしまった存在だ。
iPhoneと違い、Apple Watchは2020年も例年どおり9月に新製品を発表した。正統進化したApple Watch Series 6だけでなく、手頃な価格と十分な機能、最新のデザインをうまく統合したApple Watch SEを新たに投入した。Apple Watchを若い世代により身近に訴求することになりそうだ。
2020年末の段階でのラインアップは以下の通り。いずれもGPSモデル、40mmまたは38mmの税抜価格。
Appleは製品全体を通じて、ミドルレンジの強化をテーマに2020年の製品リリースを行っている。最も顕著に映ったのがApple Watchだ。
これまで、旧デザインのApple Watch Series 3を残しつつ、毎年最新モデルをリリースする、という戦略で、ハイエンドと廉価版の2モデル展開を行ってきた。その中間的な存在として投入したのがApple Watch SEだ。
基本的にはデザインやS5プロセッサなどSeries 5を踏襲するが、心電図機能を省き、2万9800円という低価格を実現した。SEと2020年の上位モデルであるSeries 6を比べると、
といった優位性がある。機能面では、日本では心電図アプリがまだ使えないため、血中酸素ウェルネスアプリの有無に限られる。
NikeモデルがSEにも用意されることを考えると、まだ健康にそこまで神経質に悩んでいない若者世代が最新デザインのApple Watchをより身近に手に入れ、アクティブに活用する、というターゲット像が浮かび上がる。
40代以下の人にとっては、価格が安いApple Watch SEが非常に魅力的に映る。しかしそれでも、筆者はApple Watch Series 6を強くおすすめしたい。その理由は、Series 5やSEといったS5搭載モデルに比べて、大幅にバッテリー持続時間が延びたからだ。
筆者はApple Watch Series 6を使い始めて、完全に充電パターンが変化した。ほぼ1日半、出かけない週末は2日目の終わり頃になってやっと充電するというほど、充電タイミングが延びた。常時点灯ディスプレイ機能をオフにしていることもあるが、それでもSeries 5で同じことをしても、毎日の充電はやむを得なかった。
こうした充電タイミングの長期化に加え、高速充電への対応もメリットが大きい。1時間半でフル充電に持って行くことができるため、watchOS 7に採用された睡眠計測を使うべく、装着しながら寝ても、朝起きてからの充電で十分間に合う。
例えば朝起きて1時間弱しか充電するチャンスがなくても、前述の通りバッテリー持続時間が極めて長くなったため、75%程度充電できていれば、そのまま出かけてしまっても問題ない。Suicaで電車に乗り、途中歩きながら15分のウォーキング記録を2回し、帰りも電車に乗って帰ってきて、まだ30%程度はバッテリーが残っている、という感覚だ。そのまま睡眠計測で寝て、朝充電すれば、また1日半使っていくことができる。
Apple Watchは他のスポーツトラッカーやスマートウォッチに比べて、やはりバッテリー持続時間が18時間(1日)しかないのが弱点だった。公式には引き続き18時間ということになっているが、前述のように、Series 6で常時点灯ディスプレイをオフにすれば、大幅にバッテリーライフを伸ばすことができ、睡眠計測を行ってなお、そのまま出かけられるほどのスタミナを備える。
個人的にApple Watchへの不満はバッテリーだったため、Series 6は十分納得できる進化を遂げたと感じた。
Apple Watchに限らず、Apple製品はハードウェアとソフトウェア(OS)の両輪で進化する。これにアプリのエコシステムを加えて、われわれの生活を構成する重要な役割を果たしてくれる。
Appleが12月15日にリリースしたwatchOS 7.2では、最大酸素摂取量(VO2Max)を推計することができるアルゴリズムを備え、心肺機能が低下している状況が四カ月続くと、ユーザーに通知し、機能強化や病院での受診をすすめることができるようになった。
ちなみにApple Watchは、心拍、心電図、心肺機能と、心臓にまつわる計測に力を入れている理由は、米国では、心臓疾患による病死が、ガンを上回る死因となっているから。心臓疾患の早期発見やその改善に役立てる事で、Apple Watchがより多くの人々の健康に役立ち、命を救うデバイスとしての認知を高められるからだ。
Appleは内蔵するセンサーとアルゴリズムの開発によって、人の体の動きや、そこで起きていることを常時記録する手段として、Apple Watchを今後も進化させていくことになるだろう。そうした発展性と、Series 6で獲得した納得いくバッテリーライフは、大きな武器になっていくだろう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス