SalesforceによるSlack Technologiesの買収に向けた協議が大詰めを迎えていると報じられている。これは、Salesforceのセールスおよびサービス向けクラウド製品とSlackを連携させ、リーチを拡大することが目的だという。だが、この買収には攻めだけでなく守りの意味もありそうだ。
SalesforceによるSlackの買収は、米国時間12月2日にも発表される可能性があるとCNBCが報じているが、これを単なる個別の案件とみなすことは難しい。この買収は製品ロードマップや事業の拡大に関する話というより、競争環境への対応に関するものだ。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが続く中で、営業やサービスはバーチャルに移行しており、今後も大方はその状況が続くだろう。
顧客関係管理(CRM)市場でSalesforceと競合する大手企業は、コラボレーションプラットフォームを所有している。Microsoftは「Microsoft Teams」を「Office 365」と連携させ、プラットフォーム戦略を展開中だ。Adobeも先ごろWorkfront買収を発表し、Workfrontのプロジェクト管理プラットフォームを自社のクラウド製品と連携できるようにする。コミュニケーション機能と顧客体験の統合が進んでおり、TwilioによるSegmentの買収も、こうしたトレンドを示す出来事だ。
CRM市場における競争は、AdobeやC3.aiなどのパートナーを抱えるMicrosoftと、Salesforceを軸として展開している。
Salesforceのコラボレーション戦略はまだうまくいっていない。同社は2009年に「Chatter」をリリースし、2016年にQuipを買収した後、最近になって「Salesforce Anywhere」を発表したが、Slackほどのリーチは得られていない。
とはいえ、Salesforceの最高経営責任者(CEO)であるMarc Benioff氏は、長年にわたってコミュニケーションとコラボレーションを熱心に手がけてきた人物だ。一時はTwitterの買収にまで乗り出したが、株主の反対によってこの取り引きは頓挫した。また、LinkedInを手にする機会も逸し、Microsoftに持っていかれた。
一方のSlackも、リモートワークへの移行が進む中でシェアを獲得できていない。ビデオ会議が前面に躍り出たことで、Zoomが時代の寵児となった。Microsoft TeamsはSlack的な機能を提供している上に、そのビデオコミュニケーション機能はSlackより優れている。
企業とパートナーの橋渡しを実現する「Slackコネクト」の機能は、Salesforceにとって極めて重要なものになるだろう。Salesforceには「Customer 360」という製品があるが、その利用はそれほど広まっていないようだ。
簡単に言えば、Teams、「Dynamics 365」、Office 365を擁するMicrosoftは、顧客、ベンダー、およびパートナーを結びつけることができる。Salesforceも同じ能力を必要としており、Slackコネクトが手に入れば、セールスプロセスの連携ツールとして利用できるようになるだろう。Slackは将来的に「Work.com」や従業員との関係構築にも役立つかもしれない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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