パンデミックのさなかに仕事を探すのは難しい。ここ数カ月で多くの人が職を失ったことを考えればなおさらだ。しかも、失明や弱視などの視覚障害がある場合、求職活動はますます困難になりかねない。だが、米国視覚障害者協会(AFB)のチームは、求人情報の検索から、面接や採用、そして仕事の開始までを含めたオンラインでの求職活動を、誰もがより利用しやすいものにする取り組みを続けている。
「雇用のライフサイクル全体で、視力を失っている人はもちろん、障害があるほぼすべての人にとっては、潜在的な障壁や摩擦が存在している」と、AFBで最高プログラム責任者を務めるMegan Aragon氏は話す。「テクノロジーの活用、求人情報へのアクセスのしやすさ、インクルーシブな採用活動、自己アピール機会の獲得の間には、直接的な関係がある」と同氏は語った。
AFBによると、2017年の時点で、視覚障害がある16~64歳の米国人200万人のうち、労働力に含められている人は全体の39%にすぎず、10%は失業中だった。そして、就職活動のプロセスを細かく分析すると、この件に関わるすべての問題点が見えてくる。
視覚障害者がネット上で仕事を探すには、インターネットにアクセス可能なコンピューターやスマートフォンに加えて、インターネット利用を支援するツールが必要だ。
その上で、求人情報の検索エンジンや企業のウェブサイトを通じ、履歴書とカバーレターを提出する必要がある。そのため、視覚障害者でもサイト内を見て回ることが可能な機能が用意されていない求人サイトは、使い物にならない。
しかも、今回のパンデミックが、視覚障害のある労働者や求職者に新たな課題を突き付けていることが、視覚障害がある米国の成人を対象にAFBが4月に行った調査から見て取れる。現在雇用されていると回答した253人の調査参加者のうち、38%が仕事に必要なテクノロジー系ツールの少なくとも1つで、アクセシビリティーの問題を経験したと報告した。さらに22%が、自分の仕事に欠かせないテクノロジーに、家からアクセスできないと報告している。
こうした状況を改善するため、AFBでは専門家とアクセシビリティー関連のエンジニア(その多くが自身にも視覚障害がある)によるチーム、AFB Consultingによるコンサルティングサービスを提供し、自社のウェブサイトやツール、さらには慣行のアクセシビリティーと使いやすさを向上させる企業の取り組みを支援している。Aragon氏はこれを、テレビのリモコンにたとえて説明してくれた。家のテレビを操作するのに、4種類のリモコンが必要だとすれば、それぞれのリモコンの動作にまったく問題がなくても、1つのリモコンで全ての操作ができる状況と比べて使いにくいというわけだ。
AFB Consultingは、求人情報、採用活動、入社時の研修のほか、自社のウェブサイトや製品にアクセシビリティーを取り入れようとする企業を支援している。また、従業員の誰もが業務を効率よく実施できるようにするデジタル作業環境のテストや、障害者を考慮した人事戦略の策定や緊急時対応(消防訓練など)の改訂などの支援も行っている。
AFB ConsultingはGoogleと協力し、アクセシビリティーの研修や、「G-Suite」アプリケーションや「Chromebook」といったGoogleのソフトウェアおよびハードウェア製品のアクセシビリティー拡充に取り組んでいる。ほかにAdobeと協力し、同社PDFソフトウェアの使いやすさと読みやすさの改善に貢献したほか、AT&T、Verizon、Sony Ericssonの携帯端末を障害者にとってより使いやすいものにする取り組みにも協力している。
「テクノロジーは生活を向上させ、働くために必要なハードルを緩和するものであるべきだ」とAragon氏は語った。「良いものとされる目的に役立つべきであり、乗り越えなければならない障害になるべきではない。誰もが情報にアクセスできるよう、当初からこうしたアクセシビリティーとユニバーサルデザインを構築しておくことが極めて重要だ」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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