アップルの「M1」登場で浮き彫りになるインテルのプロセッサー問題 - (page 2)

Stephen Shankland (CNET News) 翻訳校正: 編集部2020年12月02日 07時30分

AMDの脅威

 Intelは、一般的なノートPCに搭載されているプロセッサー「x86」シリーズの主要なメーカーだ。だが、x86のメーカーはIntelだけではない。

 Tirias ResearchのKevin Krewel氏は「短期的にはAMDはより大きな脅威だ」と語った。同氏は、PCメーカーがただちに業界標準のx86プロセッサーを捨てることはないとしている。

 AMDは特にゲーマー向けのハイエンドPCのプロセッサーで成功しており、サーバー市場にも進出している。AMDのプロセッサーの製造は台湾積体電路製造(TSMC)が請け負っており、AMDは同社の小型化技術を利用して、プロセッサーにより多くの回路を詰め込んでいる。AMDの新プロセッサー「Zen 3」の設計は、大幅な高速化を実現した。

 対照的に、自社でプロセッサーを製造しているIntelは苦戦している。製造プロセスは数年遅れてようやく14nmから10nmに移行中だ。2021年のデスクトップPC向けの「Rocket Lake」チップでさえ、14nmプロセスで構築する(nmは10億分の1メートル。値が小さいほど、より多くのトランジスタを詰め込める)。

AMDの「Ryzen 5000」
AMDの「Ryzen 5000」シリーズは最大16コアで、IntelのゲームPC向けプロセッサーに挑戦する。
提供:AMD

新たな製造オプション

 Intelには、TSMCにチップの生産を委託することを含む新たな選択肢がある。だが、そうした選択肢はリスクも伴うと、Gwennap氏は語った。

 Gwennap氏によると、チップの製造をパートナーに委託することは、Intelが最先端の製造技術を開発するための投資を正当化しにくくするという。また、Intelが問題解決後に製造委託をやめる可能性があり、TSMCはそれを恐れてIntelの需要を満たすのに十分な投資を躊躇するかもしれない。

 Intelは生産計画の詳細についてコメントしなかった。同社は、設計と製造を統合するアプローチは競争力を高め、顧客が必要とするチップを供給できるようにすると述べた。「われわれは最先端のプロセス技術開発への投資を継続することも明確にしている」とIntelは語った。

 Appleは、Intelとは対照的に、TSMCの着実に改善された製造の恩恵を受けている。M1に160億個という驚異的な数のトランジスターを搭載できる理由の1つだ。これにより、メインプロセッサーエンジンに電力を供給するのに十分な回路と多数の機能を備える。

AppleのM1はスモールスタートだ

 AppleはMacの新モデル発表イベントで、何度も繰り返しM1のワット当たりの性能の高さを強調した。つまり、ノートPCのバッテリーをすぐに消耗することなく、仕事ができるということだ。

 M1のこの長所は、iPhoneシリーズのプロセッサー「A」シリーズから受け継いだものだ。スマートフォン向けチップに求められるバッテリーの制約は、ノートPC向けよりも厳しい。iPhone 12の「A14」の近親者であるM1で、Appleはより高い処理能力を得るためにより多くのトランジスタ回路を追加し、スマートフォンより速いクロックスピードでチップを稼働させることもできる。

 Appleはここ数年の間、チップの設計を進化させ、生産委託先のTSMCの優れた能力を活用することで、着実にAシリーズの性能を上げてきた。テックメディアAnandtechが公開した「SPECint2006」ベンチマークによるスピードテストによると、A14はIntelのノートPC向け3GHzの4コアチップ「Core i7 1185G7」より高速だ。Core i7はIntelの新しいTiger Lakeシリーズの1つだ。

 だが現実では、Appleはまだハイエンド製品にM1を採用する準備はできていない。MacBook AirはM1搭載モデルだけだが、より高性能な13インチのMacBook ProではIntelチップモデルを存続させる。16インチのMacBook Pro、iMac、iMac Pro、Mac Proは、Appleが独自チップへの2年の移行期間中、Intelチップを搭載し続ける見込みだ。

 Techsponentialのアナリスト、Avi Greengart氏は「本当に面白くなるのは、Appleがデスクトップのより大きな熱設計枠と定電力に向けてM1のアーキテクチャをより高性能に最適化し始めてからだ」と述べた。

 そう。Intelは複数の課題に直面している。AppleのM1は、その中で最も明白な1つであるにすぎない。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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