パナソニックは、持株会社制による新体制への移行の狙いや、中期戦略の進捗状況などについて説明した。パナソニック 代表取締役社長兼CEOの津賀一宏氏は、「事業の競争力の強化には『専鋭化』が不可欠である」とし、「事業領域を絞り込み、高い専門性を持ち、社会やお客様に対して、他社には真似ができない、より深いお役立ちを果たす。これを私は『専鋭化』と呼んでいる。スピード感のある環境変化への対応、さらなる事業競争力の強化に向けて、グループの基本構造を大きく変革する。今回の体制変更により、各事業には大胆な権限委譲を行い、自主責任経営を徹底することで、事業の『専鋭化』を加速する。また、持株会社は『先鋭化』する事業を積極的に支援し、成長領域の確立や創出に向けて、全社視点での成長戦略を、迅速かつ的確に実行することで、グループ全体の企業価値を高め行くこができる姿を構築する」と述べた。
また、「パナソニックの存在意義は、事業を通じて、人々の暮らし、社会の発展に貢献し続けることである。これは今後も変わらない。今回の再編は、変化の激しい時代において、存在意義を全うするために不可欠なプロセスであると考えている。自主責任経営のもと、それぞれの領域で専門性を徹底的に磨くとともに、人の暮らしや社会に絶えず寄り添い、より深いお役立ちを果たすことで、パナソニックグループを、社会の発展に不可欠な価値ある事業の集合体として発展させたい」と語った。
パナソニックの発表によると、2022年4月から持株会社制へと移行し、社名をパナソニックホールディングスに変更。各事業会社を分社化して完全子会社化することになる。
具体的には、中国・北東アジア事業、ホームアプライアンス事業、空調・空質事業、食品流通事業、電気設備事業の5つの事業を1社に集約し、同事業会社が、パナソニックの商号を承継。「基幹事業の空間ソリューション事業を中心に、白物家電や中国での家電、住空間における挑戦を含めて、大胆なシナジーや統合力の発揮を目指す。幅広く人に向き合い、心と身体に健やかさを提供するパナソニックらしい価値の創出を追求していく」とした。
また、「オートモーティブ事業」、「スマートライフネットワーク(AVC)事業」、「ハウジング事業」、「現場プロセス事業」、「デバイス事業」、「エナジー事業」といった事業部門を、複数の事業会社に承継させる。
「中期戦略で基幹事業と位置づけた現場プロセス事業、インダストリアルソリューション事業を事業会社として法人化する。車載電池事業については、角形電池ではトヨタ自動車と新会社を設立し、円筒形電池ではテスラ向け事業の収益が改善しており、次なる挑戦の方向性が明確になってきた。ここは、車載事業とあわせて、エネルギー事業として法人化し、新たな基幹事業として着実に成長させる」とした。
新たなパナソニック株式会社と、現場プロセス事業、デバイス事業、エナジー事業の4つの事業会社が、「今後のパナソニックグループの発展の中核を担う」と位置づけた。
また、オートモーティブ事業やハウジング事業については、「個々の事業会社としての競争力を着実に磨き、現在抱えている課題を解決するとともに、自らの成長の道筋を明確にすることで、グループ全体の企業価値向上に貢献することになる」とした上で、「オートモーティブ事業は車室内という観点であったり、ハウジング事業も空間ソリューションという意味で、新たなパナソニックとの親和性が高かったりするが、専鋭化することを優先した」と説明。「まずは専鋭化しないと、グループとしてのシナジーも発揮できない。シナジーだけを取るという選択肢はない。競合相手は誰なのか、その競合相手が利益を出しているのならば、なぜ自分たちは利益が出ないのか。足元をきっちりと見て、やるべきことをしっかりとやる。専鋭化した結果、シナジーを活かしたい」と語り、「目的は各事業会社の事業競争力を強化することであり、それは明確である。事業競争力を強化するにはどうするべきかという点である」と強調した。
また、「オートモーティブ事業では、新たな挑戦をしながらも、地に足がつかず、オペレーション力が足りないため、利益を落とした。こういうことがないように、5年後、10年後には、しっかりとした成長ができているといったことを、次の世代には実現してほしい」と述べた。
一方、持株会社は、分社化した各社の株式を保有し、引き続き上場を維持。各事業会社の事業成長の支援と、グループ全体最適の視点からの成長領域の確立に特化し、グループとしての企業価値向上に努めるという。
「パナソニックホールディングスは、専鋭化に向けた各事業会社の成長戦略や競争力の強化を機能面から支援するとともに、グループ全体としての成長戦略を策定、実行し、全社的視点で企業価値の向上を実現する」と位置づけた。
ここでは、プロフェッショナルビジネスサポート部門などの「間接部門」も分社化することにも触れ、「間接機能の提供価値を見える化し、磨き続けることで、高効率で、高付加価値の専門家集団となることを目指す」とした。
さらに、制度面に関する改革として、さらなる権限委譲と信賞必罰による「意思決定の専門性とスピードの強化」、業界に適した人事制度などの適用による「向き合う業界での競争力を徹底強化」、重層解消と効率化を行う「グループとして競争力のある間接機能の実現」という3点をあげ、「各事業の専鋭化を強力に進め、事業会社に大胆な権限委譲を行い、迅速な意思決定ができるようにし、事業責任者の結果責任を明確化し、意思決定の質を高める信賞必罰を徹底する。また、業界環境に適した人事制度を柔軟に導入し、コスト構造に最適化。間接機能を軽量化すること、プロフェッショナルサービスの別法人化で経営の効率化を実現し、事業会社の競争力強化に貢献する」と述べた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」