孫正義氏「AI革命の投資会社になる」--MBOによる非上場化は「ノーコメント」

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 ソフトバンクグループは11月9日、2021年3月期第2四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比3.6%増の2兆6305億円、純利益は前年同期比346.7%増の1兆8832億円と、増収増益の決算となった。

 しかし、同社の代表取締役会長兼社長である孫正義氏は、同日の決算説明会で、売上高や利益などにはすでに大きな関心を持っていないと話す。孫氏はソフトバンクグループが「情報革命への投資会社、もっと言うとAI革命の投資会社になる。これ一本だ」とAI関連の投資事業に専念する旨を改めて示すとともに、これまで“株主価値”と説明してきた、保有株式から純負債を差し引いたNAV(Net Asset Value)だけが同社の業績を示す唯一の指標になると話す。

ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏
ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏

 孫氏によると、同社のNAVは9月末時点で27.3兆円であり、3月末時点と比べて5.6兆円増えたとのこと。さらに18年前と比較した場合、同社のNAVは157倍に増え、米ナスダックの総合指数の伸びをはるかに上回っていると説明する。その理由について孫氏は、金利や為替、政策などの変化に対する投資ではなく、「進化に対する投資だけをしてきた」からだと話す。

ソフトバンクグループのNAVは18年間で157倍に増えており、日経平均はおろかナスダックの総合指数をもはるかに上回っていると孫氏は説明
ソフトバンクグループのNAVは18年間で157倍に増えており、日経平均はおろかナスダックの総合指数をもはるかに上回っていると孫氏は説明

 実際、同社のNAVは、ソフトバンクなどの通信事業やアリババなどのインターネット事業で大きく伸びており、現在ではソフトバンク・ビジョン・ファンドを中心にAI企業への投資を進めている。それに加えて、英ARMの米NVIDIAへの売却が完了すれば、同社の筆頭株主になる予定であることから、AIによる一貫した投資でさらなる伸びが期待できると説明した。

通信やインターネットだけでなく、今後はAI関連企業への投資をより積極化することで一層NAVが伸びることが期待されるという
通信やインターネットだけでなく、今後はAI関連企業への投資をより積極化することで一層NAVが伸びることが期待されるという

 その一方で、孫氏は同社に3つの懸念の声が挙がっていると話す。1つ目は負債の多さ、2つ目は非上場株への投資が多く資金化の目途が不透明であること、そして3つ目は、運用投資子会社を設立して上場企業への投資を始めた際に、リスクの高いデリバティブ取引をしていることだという。

 だが孫氏は、純負債が保有株式の12%と小さいこと、保有株式のうち非上場株が占める割合は8%に過ぎないこと、そしてデリバティブ取引が占める割合は保有株式の1.2%程度であることなど、それらの懸念を払しょくする説明に力を入れる。同社が持つアリババ株式の株価が上下すればNAVが3〜5兆円は上下することを考慮すれば、「2、3兆は誤差のうち。それがソフトバンクグループのニューノーマールだ」とも孫氏は話す。

ARMを売却し筆頭株主となる予定のNVIDIAも含めると、同社の上場株式比率は9割を超えているとのこと
ARMを売却し筆頭株主となる予定のNVIDIAも含めると、同社の上場株式比率は9割を超えているとのこと

 その上で、孫氏はAIに投資する理由を改めて説明。CPUの演算能力が進化し、さらにGPUの高度化やデータ処理を高速化するDPUの登場などによって、コンピューターは計算やデータの蓄積・検索だけでなく、AIを活用した理解や推論、創造もできるようになったと話す。また、コンピューターパワーの進化でAIの学習時間や推論に係るコストは大幅に下がってきており、より賢く、より活用がしやすくなったことを示した。

コンピューターの進化によって、AIは理解や推論、創造もできるようになったとのこと
コンピューターの進化によって、AIは理解や推論、創造もできるようになったとのこと

 さらに孫氏は、AIを活用したソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先企業の事例をいくつか説明。AIによる認識や推論を交通ルールの認識や事故リスクの軽減につなげた配送ロボットを手掛けるNuroや、自動運転車の開発を手掛けるCruiseなどが実績を出してきていることから、それら企業がモビリティを進化させることで「Uber」「DiDi」などの投資先企業の事業のあり方も大きく変わり、世界のGDP11%を占めるモビリティ市場の常識が「根底から変わる」と孫氏は話す。

AIを活用した自動運転を手掛ける出資先企業の1つであるNuroは、既に米国の大手企業と実証実験を進めているという
AIを活用した自動運転を手掛ける出資先企業の1つであるNuroは、すでに米国の大手企業と実証実験を進めているという

 加えて孫氏は、AIの活用で心臓病疾患を予測するBiofourmisなどの例を挙げ、やはり世界GDPで10%を占めるメディカル分野もAIの群戦略で大きく変わると説明。従来のインターネット革命は世界GDP1%の広告事業を変えただけだったが、AIによって少なくともGDPの20%以上に革命が起きるとしている。

孫氏はAI革命によって、モビリティやメディカルなど世界GDP20%以上の事業に影響を与えるとしている
孫氏はAI革命によって、モビリティやメディカルなど世界GDP20%以上の事業に影響を与えるとしている

 だが「AI革命の先駆者は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資するユニコーン企業だけではないと思っている」と、孫氏はすでに上場している企業の中に、その本命があるとも説明。上場の有無を問わずAIで活躍する企業に投資するとして、いわゆる「GAFA」などインターネット大手などへの投資を開始した目的を明らかにした。その投資規模は「米国のルールに基づき、あと1週間くらいで開示される」とのことだ。

設立した新会社などによる投資で保有した上場企業の一覧。インターネット大手を中心に、AI関連に力を入れる企業に投資しているとのこと
設立した新会社などによる投資で保有した上場企業の一覧。インターネット大手を中心に、AI関連に力を入れる企業に投資しているとのこと

 孫氏は上場株への投資目的についてもう1つ、保有株式におけるアリババの比率が大きく、偏りがあることも挙げている。規模が小さい非上場株だけではその偏りが改善できないことから、アセットを多様化する狙いもあるようだ。

 そしてもう1つ、孫氏は経営体制の変更にも言及。世界的にガバナンスの強化が求められていることを受けて社外の人材を中心に取締役を増やす一方、執行役員は業務の執行に専念するよう役割を明確にした新体制を打ち出している。

 孫氏は企業買収に関して「事業会社のように(企業を)買収してコントロールする思いはない。現時点では少なくとも99%は考えていない」と話し、より投資会社の立場を重視する姿勢を取るが、それだけに注目されているのが、ソフトバンクグループがMBOで非上場化する可能性だ。

 MBOに関する記者からの問いに、孫氏は「ノーコメント」と明確な回答を控えたが、上場していることのメリットについて聞かれると「メリットはたくさんあるし、デメリットもいくつかある。両方あるので日々悩んでいる」とも話している。

 ちなみに新型コロナウイルスの影響で、現在孫氏は投資先との面談などに毎日Zoomを使っているとのことだが、「Zoomは顔をアップにして話ができるし、目の前にいるかのような感じで資料の共有もできる」と話し、世界中を飛び回っていた頃と比べ生産性が上がっているとのこと。孫氏自身はコロナ禍の影響について、「ワクチンができても十分に広まって効果が出るまで時間がかかる。来年の秋までくすぶるのではないか」と話した。

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