KDDIは10月30日、2021年3月期第2四半期決算を発表した。売上高は前年同期比1.1%減の2兆5372億円、営業利益は前年同期比6.4%増の5888億円と、減収増益の決算となった。通信料収入の減少や、auブランドの端末販売が減少した一方で、端末販売コストが減少したほか、ライフデザイン領域やビジネスセグメントといった成長分野が順調に伸びたことが、決算には影響したという。
同日に実施された決算発表会でKDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、「UQ mobile」の事業承継で注目されるマルチブランド戦略に言及。auブランドでは「徹底的に5Gにこだわりたい」とする一方、UQ mobileはシンプルでお手頃なサービスという位置付けになると、改めてその位置付けを説明した。5Gに関しては「基本的にau中心にやっていく」と話しており、当面5Gはauでのみ利用できる形となるようだ。
さらに高橋氏は、総務省が10月27日に「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を公表したことを受け、UQ mobileでの提供を発表した通信量20GBの料金プラン「スマホプランV」の詳細を改めて説明。武田良太総務大臣が決算発表当日に実施した会見で、この料金プランが国際水準のプランであり、多様性ある料金を揃えたと一定の評価をしたことから、「良い感じに動き始めたのかなと思っている」(高橋氏)と話した。
そのアクションプランに関連して、高橋氏は番号ポータビリティの手数料についても言及。NTTドコモが前日の決算会見でウェブでの手続きを無料にする方針を打ち出したことから、「我々もその方向で考える」との見解を示した。ちなみにこれらアクションプランへの対応が業績に与える影響について、2021年度以降に出る可能性はあるものの、「今期の業績に大きな影響が出るとは思っていない」と答えた。
そしてKDDIは、auやUQ mobileなどによるマルチブランド戦略によって、グループ外への顧客流出を阻止するとともに新規獲得も強化し、顧客に5Gの魅力を伝えることでauへのアップセルも進めていきたいとしている。すでにUQ mobileからauへのアップセルは、前年同期比3.5倍超と伸びているとのことだ。
ただ今後は、スマホプランVの提供でauからのダウンセルが増えることも考えられる。高橋氏はこの点について「料金にこだわるauの顧客が、UQ mobileに移るというのは一定数あると思う」と話す。一方で、UQ mobileでより下位のプランを契約している人が、スマホプランVに移行する可能性も高まるとし、当面の推移を見守りながら判断していきたいとしている。
もう1つ、高橋氏はマルチブランド戦略に新たなブランドを追加することも発表。シンガポールのCircles Asiaと提携して「KDDI Digital Life」を11月に新たに設立し、MVNOとしてeSIMを活用した新しい通信サービスを展開するとしている。
これは、Circles AsiaがシンガポールでMVNOとして展開している「Circles Life」の基盤を活用し、eSIMを用いて契約やサービス変更などをオンラインでシンプルかつスピーディーにできるサービスになるとのこと。料金のカスタマイズも自在にできるサービスにするとのことで、主にデジタルネイティブの若年層を狙ったサービスになるという。
KDDIではなく別会社を立ち上げ、MVNOとして展開する理由について、高橋氏はeSIMを活用したサービスがトライアルに近いもので、新しいチャレンジをする上では事業展開スピードの早さが必要だと説明。Circles Lifeのシステムをカスタマイズして使うこともあって、早期にサービスを立ち上げられるため、2021年春ごろの提供を検討しているようだ。
具体的なサービス内容はまだ明らかにされていないが、Circles Lifeは顧客が使い方に応じて料金をカスタマイズする仕組みであるため、「MVNOだから安いというのではなく、キャリアよりARPUがより高くなるケースもある」と話す。低価格よりも利便性を追求したサービスになることが想定されるようだ。
一方で、eSIMに関しては総務省のアクションプランでも利用促進が言及されているが、高橋氏は「デジタルネイティブな人が今後使いやすい形を想定した場合、端末に関係なく通信をスマホアプリで変えられる世界観が広がる」とコメント。総務省が強く求めている、MVNOがeSIMを実現するための機能開放には応じる考えを示しているが、今回の取り組みはあくまで多様なターゲットに対応する狙いが大きいとのことだ。
高橋氏はマルチブランド以外の取り組みについても説明。5Gに関しては、「iPhone 12」シリーズの投入で端末ラインアップの充実が図られたのに加え、4G向け周波数をいち早く5Gに転用することでエリア拡大も積極化。2020年末までに全47都道府県に5G基地局を設置し、2022年3月までに約5万局を整備予定であることを改めて訴えた。
また、KDDIが新たに打ち出した次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」に関しては、多様なパートナー企業と5Gを活用したデジタルトランスフォーメーションを推進する「KDDI 5G ビジネス共創アライアンス」や、虎ノ門にビジネス事業の3拠点を設けていることなどを改めて説明。あわせて、海外の著名な大学などとAIや無線通信分野での共同研究プロジェクトを立ち上げたことなども明らかにしている。
その上で、新たな取り組みとして打ち出されたのがトヨタ自動車との資本業務提携だ。トヨタ自動車はKDDIの12.95%の株式を持つ大株主だが、約522億円を追加出資して出資比率を13.74%に引き上げるとのことだ。
トヨタ自動車とKDDIはこれまで、コネクテッドカーのグローバル通信プラットフォームを共同で構築するなどして連携してきた。高橋氏によると、今回の提携によってその取り組みをより発展させ、移動と通信の枠組みを超えた新しい取り組みを進めていくとのこと。自動車向けだけでなく、人々や社会全体の安心安全、社会課題解決に向けた取り組みを共同で進めていくとしている。
そして高橋氏は「これらのビジネスを進めていくと投資が必要になる」と話し、そのためのコストを検討した結果、500億超の資本を受け入れるに至ったとのこと。共同での取り組みに力を入れることで企業価値を高めたいと、提携への意欲も示した。
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