NTTドコモは10月29日、2021年3月期第2四半期の決算説明会において、政府に要請されている携帯電話料金の引き下げについて同社の考えを説明した。総務省は10月27日に「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を公表し、手数料を主体とした番号ポータビリティ(MNP)の環境整備や、キャリアメールの持ち運びの実現など、いくつかの取り組み指針を打ち出している。
このアクションプランに関して、同社代表取締役社長の吉澤和弘氏は「ドコモ自身が十分対応できているものもあるし、今から議論して意見を言わないといけないものもあると思っている」と回答。MNPの手数料についてはすでにソフトバンクが全面的な撤廃を打ち出しているが、吉澤氏は「ウェブでの手数料を無料化する動きは賛同するが、窓口でのMNP処理にはコストがかかっており、すぐ無料にするとは今言えない」と答えた。
そのアクションプランの取り組み状況を、今後の電波免許割り当て審査に考慮するという総務省の姿勢について、吉澤氏は「割り当てられた帯域にどれくらい顧客が入っており、いかに有効利用しているかも重要な項目」と回答。アクションプランへの対応も進めるとしながらも、それだけではなく電波の有効利用の重要性も訴えていきたいとした。
また政府の値下げ要請を受ける形で、KDDIとソフトバンクが、サブブランドを通じて20GBのプランを発表したことについて、吉澤氏は「我々も対抗していかなければいけないが、具体的にどれくらいの水準でいつからというのは、さまざまな選択肢の中から対抗策を継続的に検討するというのが今のスタンス」とコメント。NTTによる株式公開買い付けの最中ということもあって、サブブランド展開の有無を含め具体的な施策の明言は避けた。
ドコモの2021年3月期第2四半期の業績は、売上高が前年同期比2.0%減の2兆2825億円、営業利益が前年同期比4.3%増の5636億円と、減収増益の決算となった。
吉澤氏によると、主力の通信事業は「ギガホ」「ギガライト」の導入による顧客還元の影響に加え、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で端末販売や国際ローミングの収入が減少したことなどで減収減益になった。ただ、端末販売減少による販売関連費用の減少、そしてスマートライフ領域の拡大が好調に推移したことでトータルでは減収増益となり、年間予想に対しては順調に進捗しているとのことだ。
同社が会員基盤としている「dポイントクラブ」の会員数は7800万を突破したほか、携帯電話の契約数も前年同期比2%増の8099万契約に達し、解約率も0.46%、ハンドセット解約率は0.38%と一層低下するなど、契約数自体は順調に推移。ARPUもドコモ光の伸びや「月々サポート」などの割引が減少したことで、4820円と前年同期の4740円から上昇している。
またスマートライフ領域は、金融決済関連事業の好調などによって営業利益が38%増の1300億円に到達。9月に判明した「ドコモ口座」の不正出金問題を受け、金融系サービスのPRを控えていたことから一時「d払い」「dカード」などの利用・契約の伸びが止まるなど若干の影響は発生したというが、d払いの取扱高は前年同期比2.4倍の3320億円に達するなど、決済サービスの利用は引き続き伸びており「影響は少なかった」と吉澤氏は話す。
ただ、この問題は社会的影響が大きかったことから、今後は「資金をシフトするプレーヤー全体が、エンド・ツー・エンドでセキュリティを保てるようしっかり対策をし、皆さんに説明した上で拡大させることが役割」と吉澤氏はコメント。すでにドコモ口座利用者に向けてはeKYCによる本人確認を導入したというが、現在停止している銀行からのドコモ口座へのチャージに関しては、銀行や金融庁などと連携して対応を進めた上で再開するため、もう少し時間がかかるとしている。
3月にサービスを開始した5Gに関しては、契約者が9月末時点で39万だが、決算発表当日時点で50万契約に達したとのこと。吉澤氏によると、この数字は「計画の上を行っている」とのことで、5Gに対応した「iPhone 12」シリーズや、従来より低価格の5Gスマートフォンの投入などによって、2020年度末までに250万契約という目標は達成できる見通しだという。
また5Gのエリアに関しては、9月末時点で全国144都市に5G基地局を設置したほか、9月23日にはミリ波によるサービスも提供開始。2020年度末までに全国500都市という計画に向け順調に推移しているという。
一方で、KDDIやソフトバンクは4Gの周波数帯を一部5G向けに転用することで、エリアを急拡大しようとしている。ドコモも2021年度の後半ごろには「LTEの周波数を使うことになると思う」と吉澤氏は話す。一方で4Gの帯域では通信速度が出ず、5Gで期待されている高速通信のニーズに応えられないことから、それまではあくまで5G用に割り当てられた周波数帯でエリアを広げることを優先するとしている。
また新型コロナウイルスの影響を踏まえ、同社は今回の決算に合わせる形でいくつかの料金施策も打ち出している。1つはひとり親世帯を対象に、月額料金を毎月1000円割り引くほか、「5分間通話無料オプション」を無料で提供する「子育てサポート割」を12月9日から提供すること。これに合わせる形で、障害者向けの「ハーティ割引」も12月1日より、子育てサポート割と同様の内容にリニューアルするとしている。
そしてもう1つは、10月30日から提供される「ドコモのロング学割」で、最大1000円を22歳まで毎月値引きをするのに加え、最大6ヵ月は料金プランによって月額500〜2500円の割引が受けられる。このドコモのロング学割の開始にともない、「U15 はじめてスマホ割」の新規受付は終了するとのことだ。
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