パナソニックがデザインを起点にした、新たな活動「D+IO(ドゥーイングアイオー)」を開始した。提供するのは身の回りにある素材を使って作れるプロダクトのレシピ。DIYから一歩進めたものづくりを提案する。
手掛けるのは、パナソニックのデザインセンターで事業部にとらわれない新領域の先行開発を手がける「FUTURE LIFE FACTORY」のメンバーである川島大地氏。現在、チーム内で唯一のデザインエンジニアとして、エンジニアの視点からものづくりを進めている。
D+IOは、プロダクトを作るためのソースコード、部品リスト、その購入先、配線図、組み立て手順、使い方などをソースコードの開発、共有サービス「GitHub(ギットハブ)」に公開していることが特徴。オープンにすることで、実際に作ってもらい、さらなる改善や機能の追加などを積み重ねていくことを目的にしている。
「新型コロナ感染拡大を受け、手に入りづらくなったものの1つがマスク。しかし、しばらくするとマスクを手作りする人が現れ、家族や友人に手作りマスクをプレゼントする動きが生まれた。その時にコロナの時代においてもものづくりの大事さは残るんだろうと思った。誰かのためにみんなで何かを作る。ものづくりの領域を広げるために発足した」とD+IOのきっかけを話す。
現在公開しているレシピは「CO2換気アラートデバイス」と「小動物ヘルスケアデバイス」の2つ。春頃に活動をスタートし、川島氏が「小動物は病気を隠す傾向があり、ハムスターなど夜行性のペットは動きのすべてを把握できない。体調管理を見える化したかった」という小動物ヘルスケアデバイスや、新型コロナ感染拡大を受け注目が高まっていたCO2換気アラートデバイスなどを作り出したという。
こだわっているのは、手に入りやすい部品を使い、誰でも簡単に作れるものであること。小動物ヘルスケアデバイスは、環境センサーやToF測距センサーなどのパーツで構成され、GitHub上にはパーツや組み立て手順、配線図などを公開。「センサーはオンラインでも購入できるほか、秋葉原などへ行けば買えるもの。電子工作は技術が必要だと思われがちだが、すごく簡単なので、これをきっかけに、作れるということを知ってほしい」と幅広い人をターゲットにする。
目指すのは、公開したレシピをもとに作り手がカスタマイズし、独自のアップデートを重ねていくこと。「発信者側の押し付けではなく、ユーザーの意見を反映しながらアップデートしていく。ユーザーのアイデアを形にするスキームにしたい」と川島氏はレシピの発展に期待する。
プロジェクトが発足した春頃は新型コロナの感染拡大を受け、FUTURE LIFE FACTORYでもリモートワークが余儀なくされ、それは現在でも続いているとのこと。そのためこれらのレシピは基本的に自宅で制作し、川島氏自らが撮影なども手掛けた。
今後は、よりレシピを増やし、多くの人に使ってもらうことで、カスタマイズやアップデートを強く望む。「作って使ってもらって、新しいアイデアが出てくる。その中にパナソニックが次に生み出す商品の種やヒントが隠されているはず」と、今までとは異なる視点からの商品作りを見据える。
川島氏は「D+IOの取り組みをムーブメントとして大きくしていきたい。パナソニックだけの取り組みではなく、オーダーを受けるなど新たな広がり見せていきたい」とした。
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