パナソニックが同社初となるクラウドファンディングを開始した。対象製品は、ノイズキャンセリングヘッドホンとパーティションを組み合わせた「WEAR SPACE」(ウェアスペース)。頭部に装着することで集中力を高められる新プロダクトだ。
開発したのは、パナソニックで家電などのデザインを手がけているパナソニックアプライアンス社 デザインセンター。その中で事業部にとらわれない新領域の先行開発を担う新組織「FUTURE LIFE FACTORY」(FLF)が生み出した。
WEAR SPACEは、ファブリック素材のパーティションをつけることで、水平視野角を80~90度程度に抑え、目から入ってくる情報量を低減。周囲のノイズを抑えるノイズキャンセリングヘッドホンと組み合わせることで、オフィスやカフェなど、周りに人がいる場所でもパーソナルな空間を作り出せる。ヘッドホンはBluetoothを備え、通常のワイヤレスヘッドホンとしても使用が可能。お気に入りの曲を聴きながら作業に没頭することも可能だ。
元々FLFのメンバーが新プロダクトとして企画したが、製造開発を受け持つ事業部では、すでに今ある製品の開発でスケジュールが埋まっており、製品化が難しかったとのこと。そこで、Cerevoを立ち上げ、現在はパナソニックの子会社であるShiftall(シフトール)の代表取締役CEOである岩佐琢磨氏に相談し、今回のクラウドファンディング実施に至った。
企画・開発はFLFが担い、設計、製造、販売はShiftallが受け持つ。製品化に必要な資金は、CCC(TSUTAYA)グループのワンモアが運営するクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」を通じて集める計画だ。
同日からクラウドファンディングを開始しており、調達期間は12月11日まで。目標額は1500万円で、2万8000円~から支援を受け付けている。期間内に目標金額に達しなければ、全額を支援者に返還する「All or Nothing」方式を採用する。クラウドファンディングでは、プロジェクト名を「WEAR SPACE project」としており、パナソニックブランドは使用しない。FUTURE LIFE FACTORYの姜花瑛氏は「パナソニックブランドを使うと時間コストがかかる。今回は実現性とスピードを優先している」とプロジェクト名の理由を話した。
「アプライアンス社 デザインセンターでは、京都に機能を集約する一方、上海、ロンドン、クアラルンプールにも拠点を持つ。東京にある拠点の役割は、事業にひも付かない先行開発を手がけること。30代前後の若手に託して取り組んでいる」と、パナソニック アプライアンス社 デザインセンター所長の臼井重雄氏はFLFの役割を説明する。
すでに「Red Dot Design Award 2017」で「best of the best」を受賞したほか、ファッションブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」の展覧会「A LIGHT UN LIGHT」に特別出品するなど、製品は披露されており、「サウス・バイ・サウスウエスト 2018(SXSW)」でも高い注目を集めたという。
岩佐氏は「Shiftallの役割は『輸血係』。ただ単に同じ血液型を入れるのではなく、パナソニックの中にスタートアップの血を入れていく。大企業になるとエッジの効いた商品がなかなか出てこなくなる。短期間に少ないロットで商品を生産し、市場に迅速に投入する。大企業ができなくなっているこの部分を、私たちが入ることで取り入れていきたい。WEAR SPACEは、Shiftallがパナソニックの中に入って取り組む第1弾商品。パナソニックの中にスタートアップマインドを育成していく」とコメントした。
体験できる場として東京ミッドタウンにあるシェアリングオフィス「WORKSTYLING」のほか、「二子玉川蔦屋家電」2階にあるパナソニックのショールーム「RELIFE STUDIO FUTAKO」、「代官山ティーンズ・クリエイティブ」を用意。クラウドファンディングでは500台の販売を目標に据えている。
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