パナソニックがデザインの力で新たなプロダクトを生み出そうとしている。4月にイノベーション推進部門の中にデザイン本部を設置。事業部にとらわれない新領域の先行開発を手がける「FUTURE LIFE FACTORY」など、新しい取り組みも始めている。
今回、リニューアルしたFUTURE LIFE FACTORYのオフィスと知育玩具「pago」のコンセプトモデルを披露したほか、「デザインの挑戦」をテーマに、パナソニック デザイン本部本部長の臼井重雄氏がパナソニックデザインの現在について話した。
パナソニックは、1951年に社内デザイン部門を設立。創業者である松下幸之助氏が、米国出張から帰国後すぐに立ち上げた、「日本で一番古いインハウスデザイン部門になる」(臼井氏)という。
臼井氏は「テレビや冷蔵庫といった家電のデザインをしていた時代から、コンピューター、スマートフォン、コネクテッドと、デザインを取り巻く環境は変化している。また、GAFAに代表される企業の台頭など、ベンチマークすべき競合メーカーも変わってきた」と現状について話した。
続けて「1950年代は色、形のスペシャリストであることが重要視されたが、現在は材料やユーザーインターフェース、エコシステムなど、より広い分野での対応が求められる。デザイナー自身のスキルや要求される専門性も高くなってきている」(臼井氏)と、デザイン職能の領域拡大について触れた。
パナソニック デザイン本部では、お客様視点に立って、潜在ニーズを掘り起こす「インサイト」、言葉にならないものを形にする「ビジュアライズ」、スピードをあげ、繰り返し作れる「アジャイル」の3つをデザイナーが持つ力とし、「人々のくらし、社会のそばにはいつもパナソニックデザインがいる。B2B、B2Cと組織自体は分かれているが、デザイナ―がお客様視点で課題をクリアしたり、提案する力は一緒」とし、事業領域に壁はない点を強調した。
イノベーションを起こすデザインプロセスとして、気づきとなる「インサイト」、考える「ストラテジー」、つくる「クリエイト」、伝える「ストーリーテリング」の4つのステップを紹介。また「20~30年前は炊飯器を作ったら、翌年はもっといい炊飯器を作る、既存の延長上で磨き上げることを繰り返した。しかし現在は『そもそも炊飯器とは何か』という存在を再定義し、改めて考えることにしている」と説明した。
デザイン本部では、全社を横断してデザインの統制を図る「デザインマネジメント」、各デザインセンターから若手を選抜した「FUTURE LIFE FACTORY」、システム、サービス系のデザイン担当者による「Media & Spatial Design Laboratory」の3つの部門を持ち、その下に各事業部のデザインセンターがある構成。4月からは中国の新カンパニー設立にあわせ「China North Asia Design Center」も立ち上がった。
今後は、多様性、流動性、連携化の3つに取り組んでいく方針。臼田氏は「デザインのベースになるのは日本らしさ。さりげない気遣いや丁寧なものづくりといった、日本人が持つ良さをしっかり、商品やサービスにいかすことによって、次の100年も輝けるブランドにデザインの力でなりたい」とした。
同日には、コンセプトモデルpagoも披露した。pagoは、懐中電灯のような形状をした知育玩具。対象物をキャプチャして、その名称や詳細説明が聞ける「インプットモード」と、集めた対象物をテレビ画面上に映し出す「アウトプットモード」を持つ。将来的には小型プロジェクタを取り付け、壁や天井への投映も視野に入れる。
スマートフォンやタブレッドなど画面を見て過ごすことが多くなってきた子どもに対し、外の世界と触れ合い、さらに触れ合ったものを家族でシェアできる機能を備えることで、楽しみを見つけてほしいという思いのもと開発した。
発売日、価格は未定だが、ダンボール素材を使ったベータ版を体験キットとして販売することを検討中。すでにドイツで開催された展示会に参考出品しており、多くの反響を集めたという。
パナソニックでは、金型を起こすなど、通常の商品開発ではスピードが遅くなってしまう面をベータ版などを活用することで、アジャイルな新領域のプロダクト開発につなげたい方針だ。
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