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衛星データから「駐車場向けスペース」を自動検出--3社が語る駐車場ビジネスのDX最前線 - (page 2)

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不動産業界における「衛星データ×AI画像認証」の可能性

 後半のパネルディスカッションでは、モデレーターの川戸氏がさまざまな質問をぶつけて、駐車場ビジネスの現状や取り組み意義、不動産・建設領域における衛星データ活用の可能性などについて、3者の意見を引き出した。

——駐車場ビジネスは、どれくらい市場規模なのでしょうか?伸びしろはありますか?

田中氏:駐車場ビジネスの市場規模は1兆円程度だといわれていますが、潜在ニーズを含めると約5兆円あると見ています。車の総保有台数が約8000万台であるのに対して、コインパーキングは約470万台しかないという調査データもあり、コンパーキング不足が窺えるのですが、違法な瞬間路上駐車台数は東京都と大阪府の合計だけでも約8万件近くあり、これらに対してすべてコインパーキングを整備すると約5兆円になると試算しています。

 一方、我々が開拓を進めている月極、マンション、個人宅の空きスペースは約3000万台分あると見ています。これをいかにマッチングさせていくかは、駐車場業界の大きなテーマではないかと考えています。

——そうなると、営業の方が練り歩いて空きスペースを探して提案するという、アナログ営業からの脱却はまさに鍵となりそうです。

田中氏:はい、駐車場業者は約3000社と言われているなか、売れやすい“ホットスポット”は限られているので、いかに早くホットスポットを見つけてオーナーさんに提案できるかが、勝負の分かれ道になると考えています。効率よく空きスペースを探していくために、衛星データをうまく活用していきたいです。

山崎氏:日本ではこれまで、宇宙データはサイエンスとして捉えられていましたが、akippaさんとのプロジェクトは、実利用においても選ばれるようになった好事例だと思います。

——衛星データの活用は、どんなことが難しいのでしょうか?

山崎氏:宇宙というと、大抵の方が「えっ?」となりますので、とりあえずやってみようというマインドを持って、ハードルを飛び越えることが最初の困難になるかと思います。今回は、akippaさんが解決したい経営課題が明確で、Ridge-iさんという専門技術をお持ちでチャレンジ精神溢れるパートナーができて、トライアングルのチーミングで取り組めたことで、よい成果を出せたのではないかと思います。衛星データと機械学習を組み合わせた取り組みは、日本でも初めてではないでしょうか。

杉山氏:駐車場には、個人宅の駐車場から更地のような空きスペースまで、いろいろなパターンがあるので、駐車場というテーマ自体が難しかったですね。『対象とする場所の定義は、これで合っていますか?』と、ひとつひとつ確認して、認識を合わせて進めるよう工夫しました。また、もう1つ苦労したのは、衛星データといま世の中にある地図データがうまくあわない、という点です。ここを合わせるとどこかが合わない、ということが起きて、有益ではない情報もモデルに入れてしまうことになりました。

山崎氏:地図とずれてしまうのは、衛星側の要件ですね。衛星データは、航空写真のような測量レベルの精度ではないので、基本的には重ね合わせるとずれてしまうし、補正してプロダクトにしていく手間は必要です。

田中氏:我々は要望するだけなので楽だったのですが(笑)、精度と網羅性はある程度トレードオフの関係ですよね。

杉山氏:akippaさんの場合は、車がスペースに停車していても、それは一瞬を捉えているだけで営業候補先にはなり得るので、車の有無に関わらずスペースを検知するようにしました。『網羅性重視で、精度は一定以上』と、方針を明確に示していただけたのは、ありがたかったです。

——衛星データや機械学習の技術を、不動産・建設領域で活用していくには、どのような展開が考えられますか?

山崎氏:衛星データは、面的に広いエリアの情報を取ることが得意です。プラント建設地を例に挙げると、多くの場合が過疎でかつ危険地域ということで、頻繁には行けませんが、そこを衛星データを使って定点で観測するという使い方があります。LバンドSARというセンサーは、地盤沈下や隆起に基づいたインフラのダメージ予測に使われていて、将来的な検査のプライオリティ付けに活用されていますね。

 欧州では、衛星データでビル群建築エリアを検知して、内装業社などへの営業・マーケティング情報として販売している会社もあります。また、最近は災害も多いので、衛星データから土地の災害リスクを可視化するなども、需要がありそうですね。

杉山氏:機械学習の技術活用では、建設現場で生産性向上もしくは安全管理のために、何がどのように動いているのかを分析するケースはあります。

 実際、危険区域に人間が立ち入るとアラートを出すなどの技術もありますね。また最近では、構造物のメンテナンスで、ドローンや地上のセンサーから画像や点群データを取得して解析する事例もあります。期待される精度によって方法は変わりますが、衛星からビル群建築などの大規模な地表情報の変更をとらえたり、不動産・建築業界にある地上のデータと組み合わせることで、有益な情報として価値を生み出せる可能性は多々あるのではないでしょうか。

——最後に、3社のプロジェクトの今後の展開についてお聞かせください。

杉山氏:現状、mean IoUというスコアが75%なので、もう少し精度を上げたい。衛星データで有望そうなエリアを検知して、そこに地上でしか入手できない情報やリアルタイムな情報を掛け合わせていく取り組みを進めていきたいです。

山崎氏:今年度中は引き続きアルゴリズムの精度を上げる取り組みを行いながら、akippaユーザーさん向けのUI/UXを開発したいと思っています。

田中氏:営業の1人あたり生産性を上げていきたいです。人員を減らすのではなく、1人が捌ける件数が増えることで、事業を成長させたい。掛け合わせる情報としては、人口、車の交通量、天気なども考えられますし、我々が想像していない軸もあり得ると思うので、できるだけ多くの視点で試していきたいと思います。

 パネルディスカッションと質疑応答を終えて、朝日インタラクティブ編集統括の別井貴志は、「最新テクノロジーを使うのは当たり前の世の中になったが、やはりどういったデータをどのように取得して、どう組み合わせて分析していくかが重要な時代なのだなと思う。それから、やはり共創の時代だということ。共創することで価値が向上していく、というのがいまのトレンドなのではないか」と話し、本セッションを締めくくった。

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