新型コロナウイルス感染拡大を受け、最も遠のいてしまったものの一つが旅行だろう。緊急事態宣言による外出自粛要請を受け、「巣ごもり」を余儀なくされたほか、出入国制限もあり、ゴールデンウィークや夏休み時期でも、駅や空港は閑散としていた。
この動きは、民泊のプラットフォームを提供するAirbnbにも大きな影響を与えた。宿泊のキャンセルが相次ぎ、日本においてもインバウンドの需要が激減。かつてない事態に陥った。しかし3月14日には、ホスト、ゲストともにキャンセル料やペナルティなしに予約をキャンセルできる「酌量すべき事情ポリシー」の適用を開始。4月には、すでにスタートしていた「体験プログラム」をオンラインでも提供するなど、新たな取り組みを次々に発表した。
一時期は「宿泊、体験ともにかなりの影響を受けた」とするAirbnbが、逆風の中、この数カ月をどう乗り越え、新たな旅行の形を打ち出してきたのか。Airbnb Japan 広報部長の松尾崇氏に聞いた。
――世界的に3月末の時点では、旅行業界はかなり厳しい状況になりました。
私たちは宿泊と体験の2つのサービスを提供していますが、当時はその両方にかなりの影響がありました。宿泊はインバウンドのお客様が入国できなくなってしまいましたから、この時の落ち込みはかなり大きかったですね。
緊急事態宣言が明けた6月には、「ニューノーマル」と言われる新しい生活様式に対応した日本での取り組みを発表。「近場の国内」「3密を避ける」「長期滞在型ワーケーション」の3つを打ち出し、国内のお客様にシフトした形で運営しています。おかげさまで、20~30代の若い世代を中心に、需要は回復してきています。
――3月時点で、ホストにもゲストにも負担の少ない形で予約キャンセルができるようにするなど、かなり早く手を打たれていた印象です。
新型コロナ感染拡大の中、世界的にモニタリングをし、各国のホストの方々と話し合いを続けていました。今後の対応をどうするか、ホストの方からどんな要望があるのか、ヒアリングを続けることで見えてきたニーズに対応する形で取り組みました。
オンライン体験についても、ホストの方からオンラインでやってみたいという提案をいただいたことがきっかけでスタートしたものです。各国のスタッフはつねにホストの方とコミュニケーションを取っていますので、コロナ禍においても、早急にホストの方の要望を吸い上げられたと思っています。
――実際にオンライン体験を取り入れられていかがでしたか。
体験コンテンツ自体は、ほかの旅行者と出会い、スキルを身に付けたり、食事を楽しんだり、その土地ならではのユニークな文化体験をしていただくことをコンセプトに2016年11月にスタートしました。対面を前提にして始めたので、オンラインでどのようにできるか不安もありました。
始めて気づいたのは、オンライン、オフラインにかかわらず人気コンテンツは変わらないということ。満足度の高いコンテンツは、対面でも非対面でも変わらず人気を得ています。
――どの辺りのコンテンツが人気なのでしょう。
例えば、オフラインでレビュー4.97(9月15日時点)を獲得している「創業300年の酒蔵で日本酒の試飲」体験があるのですが、オンラインでは「東京の酒蔵二十三代目当主から学んだビギナー向け日本酒入門」として実施しています。
日本酒入門というと試飲をしないでどうやってできるのかと思われるかもしれませんが、ホストのRyutaさんは説明が大変上手。日本酒の作り方や背景、文化といった部分まで含めて、非常に面白く、エンターテインメントに教えてくれることで、高い人気を得ています。
同じく、オフライン体験で1000件以上のレビューを集め、平均スコア4.92(9月15日時点)を記録しているKuniatsuさんの「日本の僧侶との瞑想」もオンラインで高い人気を得ています。このほかKentaroさんの「ユニークな古の神々が住む京都を探索しよう」など、日本独自の街歩きや、文化を体験できるようなコンテンツは、日本のみならず海外の方からもかなり注目されています。
海外の方向けに、英語で解説しているほか、海外の生活時間に合わせて体験実施時間を設定するなど、工夫もしていただいています。
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