5Gが次期「iPhone」の体験を左右する

Patrick Holland (CNET News) 翻訳校正: 矢倉美登里 高橋朋子 佐藤卓 吉武稔夫 (ガリレオ)2020年09月08日 12時15分

 2020年は、人類にとっては酷い年だが、新しいスマートフォンやカメラ、ゲーム機については実りある年と言っていいだろう。まだ9月だが、次期「Xbox Series X」や「PlayStation 5(PS5)」、ソニーの新しいミラーレスカメラ「α7S III」、サムスンの「Galaxy Note20 Ultra」など、すでに多くの新製品がリリースまたは発表されている。テクノロジー製品の発売が相次ぐ9月を迎え、なかでも大きな期待を集めるリリースは次期「iPhone」だ。その名称は「iPhone 12」になるとうわさされている。

YouTubeチャンネル「ConceptsiPhone」が公開したコンセプト映像より
YouTubeチャンネル「ConceptsiPhone」が公開したコンセプト映像より
提供:ConceptsiPhone

 リークやうわさによると、iPhone 12は高リフレッシュレートのディスプレイ、より幅広いサイズ展開、LiDAR深度センサーなど、多数の新機能を搭載するとみられる。しかし最も重要な新機能は、カメラや期待の「A14」プロセッサーではなく、5Gへの対応だろう。

 これはすなわち、iPhone 12で最も重要な機能にAppleが関わる余地はあまりなく、その命運は米大手通信事業者であるAT&T、T-Mobile、およびVerizonの手にしっかりと握られることを意味する。ユーザーが利用する通信事業者と居住地によって、iPhone 12における5G体験が大きく異なる可能性がある。ハードウェアからソフトウェアまで、製品のほぼ全ての要素を自ら作り上げる姿勢で知られるAppleは、いつもと違う立場に置かれることとなる。

 ところが米国の5Gをめぐる現状は、誇大宣伝と期待が入り交じり、およそ美しくまとまっているとは言いがたい。通信事業者によって、使われる5Gの周波数帯が異なっている。驚異的な速度を提供するが、カバー範囲が狭くて常時接続できない周波数帯もあれば、カバー範囲が広くて接続は安定しているものの、4G LTEと速度がさほど変わらない周波数帯もある。そして米国には、3社の大手通信事業者全てが5Gネットワークを提供する地域もあれば、1社も提供しない地域もある。

 では、iPhone 12が失敗に終わるか否かは、5Gによって決まるのだろうか。もちろん、売れ行きの面ではそうはならない。新型iPhoneはおそらく飛ぶように売れるだろう。しかし、iPhone 12を買った全ての人がそれを5Gネットワークに接続して使いこなし、素晴らしい体験を得られるとは限らない。それに、5Gに接続できる新規ユーザーが何百万人とはいかなくとも何十万人か出てくると、まだ初期段階にある5Gネットワークのトラフィックが急増するだろう。つまりは大勢の人が新しいiPhoneでひどい5G体験をする可能性もあるわけだ。場合によっては、4Gを使い続けたほうがまだましということになりかねない。

iPhone 5
2012年に「iPhone 5」が発売された際、4G LTEのトラフィックは急増した
提供:Patrick Holland/CNET

 筆者は、2012年に4G LTE対応の「iPhone 5」が登場したときのことをよく覚えている。発売されたばかりの9月にiPhone 5を購入した筆者は、通信速度の速さを体感できた。だが、10月の感謝祭の頃になると、多くの人々がiPhone 5を持つようになり、新たに増えたトラフィックが同じ通信ネットワークに集中したため、4G LTEの通信速度は頭打ちになる。幸いにも、4G LTE回線は時間の経過とともに強化され、通信ネットワークがより多くのトラフィックを処理できるようになった。

 5Gでは、状況はさらに複雑になる。全ての5G環境が同じように構築されているわけではないからだ。先に述べた超高速の5Gを利用するには、中帯域および低帯域の5Gとは異なるアンテナが必要になる。アンテナが異なるということは、同じiPhone 5Gでもモデルによって違いが生じることになる。

 では、なぜAppleは5Gで賭けに出るのだろうか。そうしなければならない事情があるからだ。今は環境が完全には整っていないとしても、数年後にはほとんどの人が5Gでデータ通信をするようになるだろう。また、4G LTEが優れたセーフティネットになっていることも理由の1つだ。自分の住む地域で5Gに接続できないiPhone 12ユーザーでも、4G LTEなら接続できる。もっとも、高いお金を払って5G対応のiPhoneを手に入れたのに、5G通信をカバーしている場所が全くなかったりまばらだったりすれば、残念な気持ちになるだろうが。

 だが、筆者の友人や家族を見ると、多くの人が5G対応のiPhoneの発売を待ち焦がれているようだ。「iPhone 11」や「iPhone 11 Pro」が素晴らしくないわけでも、筆者の友人が5Gをとりわけ楽しみにしているわけでもない。彼らにとっては、たとえすぐに5G接続を利用できないとしても、5GのiPhoneは将来的に満足させてくれるものなのだ。

 もしあなたがiPhoneの5G対応を待って買うのを控えているなら、この秋に報われる可能性がある。しかし、住んでいる地域の5G接続状況や通信事業者のサービスをあらかじめ確認しよう。もし5Gを気にせず、iPhoneをアップグレードする年になっていれば、購入に丁度いい条件が整っているといえる。信頼できて快適な4G LTEを今後も使えるし、いずれは5Gの普及によってさらに高速なサービスを利用できるかもしれない。

 それは、この酷い1年の中でちょっとした癒しをもたらしてくれるはずだ。

 Appleにコメントを求めたが、回答はすぐには得られなかった。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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