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コロナ時代にNTT Comのデザイン組織「KOEL」が挑む新しい創造力

阿久津良和 別井貴志 (編集部)2020年09月08日 10時00分
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 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2020年7月30日、コロナ禍におけるデザインやクリエイティブの活用方法を提唱するオンラインセミナー「コロナの時代にデザインができること:NTT Com KOEL Talk #1」を開催した。同社は2020年4月の組織再編で、事業変革・事業創出を目的としたイノベーションセンターを設立し、その一環としてデザイン部門、通称「KOEL Design Studio(KOEL)」を開設。本イベントでは、デザインファーム「KESIKI」を招き、これからの時代に求められるデザインの役割を探究した。なお、配信内容については、Youtube Liveのアーカイブから閲覧可能となっている。

パーパスを実現するためのデザイン

 第1部ではKESIKIのメンバーが「いま、デザインファームにできること」を題材に愛される会社のデザイン手法を語った。「人や社会や地球に愛される会社をデザインし、『やさしさ』がめぐる経済の実現を目指すクリエイティブ・コミュニティ」を目指すKESIKIだが、その実現にはパーパス(PURPOSE、目的・存在意義)が必要だとKESIKI 石川俊祐氏は説明する。「何のために存在するのか、何を大事にする企業なのか、自分たちの軸を決めるという作業を行わなければならない。パーパスを実現するために組織をデザインすると、行動変容につながる」(KESIKI 石川氏)。その上で“ものづくり”のプロセスが生まれてくると持論を語った。

PURPOSEを起点とした、LOVED COMPANYに必要なサイクル
PURPOSEを起点とした、LOVED COMPANYに必要なサイクル

 プライベート・エクイティ(未公開株)ファンド出身のKESIKI 内倉潤氏は、企業上場などの経験を振り返りつつ、「1年ほど経つと『自分は何のために上場するのか、何のために給料アップを目指すのか』と気付いてしまう」という。そのような場面でKESIKI 内倉氏は経営者に2つの提案を行ってきた。「企業のパーパスを明確にしよう。その上で新しいサービスを生み出す」(KESIKI 石川氏)。さらに「人の気持ちをデザインするのが本質」(KESIKI 石川氏)と述べながら、企業文化としてパーパスを根付かせる努力が欠かせないことを強調した。

KESIKI 石川俊祐氏(左)と内倉潤氏(右)
KESIKI 石川俊祐氏(左)と内倉潤氏(右)

社会の創造力を解放

 第2部はKOELが「大企業デザイン組織の挑戦」と題してNTT Comがなぜデザインに取り組むのか説明した。現在同社はDX(デジタルトランスフォーメーション)やICTを活用して社会課題を解決する「Smart World」の実現を目指している。たとえば教育分野では学力格差の是正や教師負担の軽減を目的に、教育クラウドプラットフォームサービス「まなびポケット」を提供してきた。同社は「児童一人一人にタブレットやPCが配布されたとき、ICTができることはたくさんあると我々は考えている」(NTT Com KOEL 武田透摩氏)と説明する。

 他方でVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性、英単語の頭文字から名付けた軍事用語)時代に必要なのが「UX(ユーザーエクスペリエンス)、スピード、実験マインド」の3つだという。NTT Com KOEL 武田氏は「これまでのNTT Comは大きいことに時間をかけて、じっくり取り組む。例えるなら象のようなもの。一方で総務省の調査によれば2018年時点のインターネット普及率は約80%。ICT産業に求められるものは“つながるの先”にシフトしつつある。だからこそ3つのキーワードが不可欠だ。我々も大きくて強いだけではなく、どんどん挑戦できる素早い象に変革しなければならない」(NTT Com KOEL 武田氏)と、キーワードの意味とKOELの誕生理由を説明した。

KOELのMISSION、VISION、VALUE
KOELのMISSION、VISION、VALUE

 「デザイン×コミュニケーションで社会の創造力を解放する」を標榜(ひょうぼう)するKOELの目標は「人や企業に愛される社会インフラをデザインする」(NTT Com KOEL 金智之氏)ために、デザインの価値観を「問う」「創る」「動かす」と3つのキーワードに集約。NTT Com KOEL 武田氏が掲げた「UX、スピード、実験マインド」と掛け合わせることで、愛される社会インフラがデザイン可能になると語った。2011年から組織内にデザイナーが必要だと強調してきたNTT Com KOEL 金氏だが、デザインが当たり前になる企業文化作りには苦労したという。デザイン思考を持たない人びととの認識合わせやプロトタイプ開発、デザイナーへ職種変更するための下地作りを経て、社内外からの認知と信頼獲得に成功した。「デザイン組織を作るには、偉い人を仲間にしながら相手組織の目線で戦略的に展開することで企業文化を変え、熱い思いと誇りを身につけ、皆で成長する組織を目指すと、デザイナーへの職種変更が可能となり、正しく伝えて実績を出すことで認知や信頼獲得につながる」(NTT Com KOEL 金氏)と、大企業におけるデザイン組織の作成ポイントを解説した。

NTT Com KOEL 武田透摩氏(左)と金智之氏(右)
NTT Com KOEL 武田透摩氏(左)と金智之氏(右)

 第3部ではKESIKI 九法崇雄氏がモデレーターを務め、「コロナの時代に活躍するデザイナーの条件」と題したQ&Aセッションを開催。KESIKI 九法氏が「そもそも『いいデザイナー』とは?」と尋ねると、それぞれ次のように回答した。「2つある。1つは相手への思いやりと想像力を持っていること。観察を通して、相手に共感と共鳴をすることが重要。もう1つはどこまでこだわれるか」(KESIKI 石川氏)。「KOELはNTT Comのインハウスデザイン部門のため、既存事業の価値を高める任務も含まれる。Smart Worldのような戦略にデザインを融合させることに知恵を絞ることも重要。ピュアなデザインも大事にしつつ、既存事業のDNAを理解してリスペクトしながら取り組めるデザイナーが必要だ」(KOEL代表 福田直亮氏)。「お客様の声を組織内に伝えていくことが必要。その意味で人のために本気になれるデザイナーは強い」(NTT Com KOEL 金氏)。

KESIKI 九法崇雄氏(左)とKOEL代表福田直亮氏(右)
KESIKI 九法崇雄氏(左)とKOEL代表福田直亮氏(右)

 続いてKESIKI 九法氏が「デザイナーの成果を、どう評価する?」と質問すると、「エモーショナルな領域が大きく、数値による評価は難しい。ただ、デザインを導入することで、事業内容が変化した部分を数値化することは絶対外してはいけない。デザイン領域に投資するという意思決定を企業として作るためには、定量と定性のバランスが必要だ」(KESIKI 福田氏)。「多くの企業が導入している業績と行動評価。NTT Comでは定性と定量、結果とプロセスの軸で判断している」(NTT Com KOEL 金氏)。「社内だけでなく、クライアント企業も含めて仕事に関わった人たちによる360度評価。KESIKIは透明性が高く、周りの人々の給料なども分かってしまう。そのため360度評価も成り立っている」(KESIKI 石川氏)と回答した。

KOEL嵯峨田氏によるセッション内容をまとめたグラフィックレコーディング
KOEL嵯峨田氏によるセッション内容をまとめたグラフィックレコーディング

 最後にKESIKI 九法氏が「デザイナーの役割はどう変わる?」と尋ねると、「世の中に対して『本当はこちらの方が自然ではないか』『この場面には異なる判断もあり得る』など、世の中の有様に問いを投げかけるような、『問い』を作り出すことがデザイナーの役割」( KESIKI 石川氏)。「弊社の話で恐縮だが、社名のとおりコミュニケーションを社会インフラとして支えてきた企業だ。そのDNAは社員であれば誰しもが感じている。そのDNAに共感し、新たなデジタル社会を作り上げる『良質な問い』を投げかけてくれるデザイナーに集まってほしい」(KESIKI 福田氏)。「既存概念から新しいビジョンを作り出すのが大切。あとクイックに作り出す。エンジニアがコーディングするように多様なものを作っていく人たちの力には到底及ばない。そういう方々とジョインし、いろいろなものを作っていきたい」(NTT Com KOEL 金氏)と回答。KESIKI 九法氏は「人を巻き込んで動かす能力がデザイナーやビジネスパーソンにも求められる時代になっていく」とセッションをまとめた。

司会のKOEL 桑原楓氏をはじめ、登壇者はコロナ対策として別室から収録。なお、新型コロナ感染予防と配信トラブルを抑える観点から、登壇者は個別に会議室ごとに別れて配信。なおNTT Comでは、通常業務については、リモートワークで実施し、出社を30%以下に抑えるなど対策を進めている
司会のKOEL 桑原楓氏をはじめ、登壇者はコロナ対策として別室から収録。なお、新型コロナ感染予防と配信トラブルを抑える観点から、登壇者は個別に会議室ごとに別れて配信。なおNTT Comでは、通常業務については、リモートワークで実施し、出社を30%以下に抑えるなど対策を進めている

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