COVID-19で加速化するDX--産官学医の識者が考えるユビキタスヘルスケアに必要なこと - (page 3)

ニューノーマルを、掛け声だけで終わらせないためには

津脇氏:COVID-19で、社会の考え方価値観が大きく変わったと思います。医療現場、行政側、教育分野、働き方、そういうものが否応なしに変わり、急にオンライン化しなくてはいけなくなりました。そうした中、インフラの部分だけでなく、ライフスタイルや社会の仕組みルールの部分ですごく不足した部分があったと思います。

 インフラをどう変えるかということとセットで個人の生活もそうですし、ガバナンスイノベーション、ルールのあり方、フェイス・トゥー・フェイスで接触しない前提でルールを作るのが大事。

 もうひとつ、今を変わりたいと思っていますが、結局どの偶像を崇拝すればいいのかというのが多い。小さくてわかりやすい成功事例を、どう見える化するかが、求められているのかなと思います。

留目氏:小さくても一歩進めていくというところですね。その先には共通の目的ゴール作りがあるのではないかなと思いますが、まさに「目的工学」というとこでご専門の紺野先生お願いいたします。

紺野氏:「ニューノーマル」ということで、私の所でやっているマイクロシンクタンクで国内外の識者にヒアリングをしました。その中でパンデミックリスクをみればノーノーマル、ノーマルがないかもしれないという話がでました。そういう時代に入ったので、聴診データや健診データなど自分が取得できる個人データをサーバー上に置けば、自分たちのデジタルツインズみたいなものが持てます。それを自分たちがマネジメントできるとなると、都市のあり方も随分変わってきます。

留目氏:レジリエンスの話とつながったのではないかと思います。レジリエンスが高い社会を作るためにレジリエンスの高い個人が必要で、レジリエンスの高い個人がどうやって成立するかというと、データ、パーソナルセルフアライアンスに近いようなものですね。データは、誰かが広告を送るためにあるのではなく、本来、自分自身を理解するために蓄積するものということにあると思います。

紺野氏:今はユーザの許可がないと共有できないという話が多いですが、われわれが自己知識(自己に対する学び)を持つことが大事ですね。

白波瀬氏:今の世の中はいろいろな情報が流しやすくなっています。テレビ番組などでは、結構ネガティブなニュースを流すことが多いと思います。そこを、よかったところを流して共有できるようにするのが、1つの課題になっていると思います。

 イノベーションを起こすには、人と会わないとうまくいかないと思っていて、初対面がオンラインで仲良くなれるのかみたいな話があるのではないかと思います。私も若干古い頭の人間なので、できないと思いがち。しかし、案外若い人たちはアバターを使ってチャットなどをしてみると、コミュニケーションがうまくいったなど、いろいろなこと言うわけです。

 そうしたことを、ネガティブなフィルターをかまさずに積極的に拡散し、その中で良いものがより進化していくみたいなものではないかと思っています。後はチャレンジすることだと思います。

ファシリテーターの留目 真伸氏(SUNDRED)
ファシリテーターの留目 真伸氏(SUNDRED)

留目氏:良いものをシェアしていくというのには、ソーシャルの良さがあるのではないかと思います。そんな中でオンラインでの関係性がいっぱいあります。ディスカッション時代に入っているわけですが、これは声で整理するわけですよね。リアルの良さももちろんありますが、オンラインにはオンラインなりの良さもありますね。

 さて会場からの質問が出ています。「ヘルスケアのオープンイノベーションはそのやりやすさから広がってきましたが、メディカルの方にすすめていかなくてはと思っています。しかしそこには線引きの難しさというか、医療のほうをイノベーションに近づけていくにはもう一つドライバーが必要ではないかと思います。ここをどうお考えですか」ということで、曽山さんいかがですか。

曽山氏:その通りだと思います。医療は安全面からいろいろ守っている業界です。しかし、そこを守ってばかりいると、どうしても壁ができてしまいます。今日伺ったシェアメディカルの取り組みというのは、まさに少しずつ打ち破ろうとしているところだと思います。

 そういうものを推進する上で医療従事者、製薬企業、医療機器メーカーだけが始めるのではなく、外からちょっと刺激を入れるというか、その周りの部分から崩していくのが良いと思います。

 COVID-19により、世の中が変化してしまったのだからやるしかないということで、ニューノーマルの話と一緒ですが、落ち着いたときに戻らないように地歩を固めていくことが必要ではないかと思います。

小林氏:規制の問題からなかなか進めないという話がありました。これからの医療をどう変えていくかというと、実は医産官学だけではなかなか社会まで変えられないという思いがあります。

 もっと広く国民に理解をいただかないと社会は変わっていかないという思いが高まってきました。国民から理解を得られなければ政治家が動きませんし、規制も変わっていきません。

 個人情報というと、今は負の側面に関する報道が多いですが、個人情報をあるところに預ければ素晴らしい医療を受けられるという説明がまだなされていないのではないかと思っています。

 そういう意味では医産官学+国民というところでターゲットを広げていかないと、規制緩和にならないのではないかと。

 DXが加速していますが、まだ医療の世界ではオンライン診療含めて慎重な意見が非常に多く、なかなか動きません。元に戻ろうという動きもありますので、最終的には国民の理解を得なくてはいけないと思っています。

 そのためにはもっと人材を増やし、エネルギーに溢れるような方々を多く育成していくことが必要ではないかと思っています。

留目氏:皆さんのようにクロスセクターで壁を越えてつながり始める多様なコミュニティーメンタルモデルが理解され、術を築きつつあると思っています。国民というと、少し大きすぎかもしれないのですが、コミュニティーサイズにあわせて共感されるようなストーリー作りをどうすすめていくかは重要だと思います。あらゆる産業でそういったことが求められているようになってきていますが、皆さんの意見を伺いたいです。

 
 

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