COVID-19で加速化するDX--産官学医の識者が考えるユビキタスヘルスケアに必要なこと - (page 2)

オープンイノベーション型の価値創造をすすめるには

津脇氏:経済産業省の津脇です。よろしくお願いいたします。これまでIoT推進、中小企業を推進をやってきて、直近はキャッシュレスの推進ポイント還元事業を担当していました。8月からは、デジタル担当をしております。

 オープンイノベーションというと、中・小規模の事業者向け個人向けのサービスなどカスタマイズサービスでどういった事業にできるかがポイントだと思っています。

 デジタルのインフラが出来上がると、今まで提供してきた価値を新たにどういう形で提供するかという、価値を再定義しなくてはいけないというのが今の時代。デジタルが代替するのではなくデジタルで何を提供していくのかを考えなくてはいけない。

 オープンイノベーションが重要になり、実現したいことが何か、課題が何かとアーキテクチャを考えるとなると、共感できるところがつながって実現することが大事だと思います。

留目氏:デジタルによっての何を実現するか、目的が重要ではないかと思います。紺野先生いかがでしょうか。

紺野氏:多摩大学の紺野です。大学院でMBAの授業を担当しており、イノベーションの研究をしています。オープンイノベーションというのは話題になっていますが、あまりうまくいっているところがないというのが実情です。

 オープンイノベーションは、知識の生態系をつくる知恵を寄せあってエコシステムを作るという行動なのではないかと思います。

 そういう意味では中小企業でも個人でもいろいろな人たちが協力しあうことではないかと。草の根の知恵を使いながら社会の課題を解決していくという意味では、さきほど、シェアメディカルの峯さんのお話は非常に重要だと共感しました。

 特に医療分野はこれまでの伝統的なシステムからまさにウェルビーイング型に変わっていくと世界的にも期待されていますので、最先端で未来の一歩先行くところなのかなと感じています。

シェアメディカルのデジタル聴診デバイス「ネクステート」から、事業が広がった
シェアメディカルのデジタル聴診デバイス「ネクステート」から、事業が広がった

留目氏:目的から入るオープンイノベーションというのは重要なのではないかと思います。曽山さんいかがでしょうか。

曽山氏:私は今ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパンという組織を運営しています。三井不動産が産学の皆さんにお声掛けしてできた一般社団法人で、4年半前にできました。ヘルスケアであったりライフサイエンスであったり非常に幅広いライフサイエンスの提供をしています。イノベーションを創造し続ける時に必要なネットワークすなわちエコシステムを構築する際は日本全国をつなぐことはもちろん、海外ともつながることでより大きな深いイノベーションを起こすことを目指しております。

 オープンイノベーションを促進するためには、お互いの強みを生かし、弱みを補完することが非常に大事です。その際、特に大企業は自前主義、すなわち自分たちのやり方ですすめようとし過ぎていると感じます。

 ライフサイエンス業界は今盛り上がっている一方、新しい医療機器がなかなかできないのは、既存のプレイヤーだけでやりすぎるということがあると思います。今やそれだけでは立ち行かなくなってきています。たとえばAI、ライフサイエンス、ビックデータ等は掛け算の世界になってきています。そこを業界としてどう壁を乗り越えていくかということを感じています。

小林氏:マリアンナ医科大学の小林です。今マリアンナ医科大学では、世界レベルのICT医療を目指すということでいろいろすすめています。私は大学院の医療AIイノベーションを起こすための仕事がメインですが、医療AIのアプリケーションをつくる仕事や、デジタルヘルスセンターも担当し、さまざまな企業、産官学と仕事をしています。

 オープンイノベーションというと、IT業界などさまざまなスタートアップの方とディスカッションをして感じたのは、次世代医療は医療企業だけでは実現しないということです。

 IT系の職種の方々と一緒にならないと実現しないと思っています。デジタルネイティブの若い方々との共創、コ・クリエーション(Co-Creation)が重要だと思っております。その他重要なのが人材育成です。未来をつくれるような医療人、異なる人と書いて異人、普通の人と違う人を育成していくことが大事だと思います。

白波瀬氏:NTT西日本の白波瀬です。ユビキタスヘルスケアのプロジェクトの中で、ネクステートのデータをハイレゾストリーミングで発信したり、ネットワークアプリケーションで蓄積するためのクラウド化などを一緒に行なったりする機会がありました。

 オープンイノベーションとして、いろいろな人と付き合って早く結果を出していくかということを自分なりに考えてきました。

 ヘルスケアに関していうと、地域の課題解決にはいろいろなものを組み合わせて社会実装していくことが大事だと思っています。曽山さんの話にもありましたが、大企業は自社にあまりこだわりすぎないように、ということを考えなくてはいけないと思っています。

「シンポジウム:医療エクスペリエンスのニューノーマル-医産官連携から見えた未来の医療」が行なわれた
「シンポジウム:医療エクスペリエンスのニューノーマル-医産官連携から見えた未来の医療」が行なわれた

留目氏:ユビキタスヘルスケアという世界を共創する時、先進国での医療のあり方と後進国で求められる医療のあり方は当然変わってきています。この取り組みはまだ始まったばかりで、より大きく広げていかなくてはいけないところです。

 もともとデジタルトランスフォーメーション(DX)やオープンイノベーションといった言葉はありましたが、なかなかうまく進んでいません。

 それがCOVID-19により、変わらなくてはいけないということで「ニューノーマル」という新しい言葉がでてきました。

 しかし、ニューノーマルといっても、COVID-19が落ち着いたらまた元に戻ってしまい、ニューノーマルの掛け声だけで終わってしまうのではないかと思っています。

 これを掛け声だけでなく具体的にイメージを共有していくためにはどうすればいいでしょうか。皆さんのアイデアを伺いたいです。

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