「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM 第3期」の参加企業である2社のロボットスタートアップが、京急グループ本社において8月12日に警備ロボットの実証実験を実施した。2020年度内に京急グループ内での実装を目指す。
KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMとは、京急電鉄とサムライインキュベートが取り組むオープンイノベーションプログラムのこと。京急では「モビリティを軸とした豊かなライフスタイルの創出」を掲げ、自社アセットを活用したスタートアップとのオープンイノベーション、新しい顧客体験の創出に取り組んでいる。
第3期は、2019年12月より共創スタートアップの募集を開始。92社の応募から選抜し、2020年6月2日に参加企業10社を発表した。今回の実証実験に参加したのは、コロナ禍のため自動化・省人化の重要度が高まっている警備・ビル管理で役立つ「警備ロボット」を手がけるSEQSENSEとMira Roboticsの2社だ。
SEQSENSE(シークセンス)は、警備用の自律移動型セキュリティロボット「SQ-2」による全自動の立哨(りっしょう)・巡回警備と遠隔通話、Mira Roboticsは、アバターロボット「ugo(ユーゴ)」による、遠隔操作による検温・音声案内などの来訪者対応と立哨警備について、それぞれデモンストレーションをした。
京急電鉄 新規事業推進室の橋本雄太氏は、今回の実証実験の背景について、京急グループが展開する商業施設や駅などでの警備や運営管理における人手不足、現場で働く方々の新型コロナウイルス感染予防対策が急務であることを挙げる。中長期的には京急沿線における新たな価値観の街づくりにつなげることを目指していると話した上で、警備分野における2社との取り組みのすみ分けについて、以下のように説明した。
「SEQSENSEの高度な空間認識技術を活用して空間をデジタル化し、新たな付加価値を創出して、スマートシティのような中長期的な取り組みに発展させたいと考えている。Mira Roboticsのugoは、アームがあることが大きな特徴でマルチタスクが可能。将来的には掃除や家事代行のようなサービスも見据えている」(橋本氏)
SEQSENSE「SQ-2」のデモでは、自動運転による立哨・巡回警備と、遠隔通話が行われた。確認したい場所をあらかじめウェイポイントとして設定すれば、自己位置推定と環境地図作成を行い、自動で最短距離をリアルタイムに経路計算して、物や人を回避しながら自律移動する。このソフトウェアは独自開発だ。デモでは、透明の自動開閉扉を自分で判断して通過し、目的地まで到達する様子が披露された。
精度の高い自律走行を可能にしているのが、上部に3つ装備された3Dライダーだ。走行中は常に、3つの3Dライダーを搭載した部分が回転しており、これにより「ロボットの足元以外、ほぼ360度認識できる」(中村氏)という。
ロボット胴体には180度魚眼カメラを3つ、前方中央には高精度カメラを備え、360度撮影も常時可能。警備カメラでは捉えきれない場所も確認でき、記録したデータを後から確認することもできる。また、全てのカメラ映像は、遠隔地に設置した1つのモニターで見ることが可能だ。
離れた場所にいる制御者との遠隔通話もできる。「Touch to call」と表示された箇所に手をかざすと、3Dライダーが反応して、遠隔通話を自動で開始する仕組みだ。マイクとスピーカーも搭載しており、実証実験では会話の実演も披露された。
SQ-2は国内で唯一実用化された警備ロボットだとSEQSENSEの中村氏は説明する。子どもの急な飛び出しも検知して走行停止するなどの安全性も評価されており、創業3年目で実用化に至ったという。現在、SEQSENSEに出資する三菱地所のオフィスビル内で、主にエントランスの警備ロボットとして稼働しており、費用は1台につき月額30万円ほどだという。
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