楽天は8月11日、2020年度第2四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比15.7%増の6788億円、営業損益は207億円と、前四半期に続いての営業赤字となった。その要因はモバイル事業の「楽天モバイル」や「楽天スーパーロジスティクス」などの物流事業への先行投資と、投資事業の評価損によるところが大きいという。
同社の代表取締役会長 兼 社長である三木谷浩史氏は、楽天グループが築いたエコシステムがコロナ禍においても有効に機能し、強い事業成長を見せていると話す。中でも主力の「楽天市場」などEコマース関連の事業は、外出自粛による需要増でGMS(Gross Merchandize Sales:流通総額)が前年同期比48.1%増加しており、新規購入者や復活購入者数も大幅に伸びているという。
さらに三木谷氏は、この傾向が「(コロナ禍の影響が)沈静化していた1カ月くらい前でもスローダウンしなかった」と話し、Eコマースの需要は今後も高まっていくと説明。コロナ禍の影響が直撃している「楽天トラベル」を含めても、同社のコアビジネスは前年同期比で増収増益を達成しており、その楽天トラベルに関しても足元では回復基調にあると三木谷氏は話す。
そのため楽天では、需要拡大に備えたEコマース戦略を推し進めているとのこと。中でも楽天が推し進める楽天スーパーロジスティクスや、同一ショップ内で3980円以上購入すると一部例外を除き送料が無料になる、共通の送料込みライン「39ショップ」が、店舗のGMSの伸びに貢献し、顧客満足度の向上につながっていると三木谷氏は説明する。
Eコマースの伸びにともなって、Eコマースに並ぶ主力事業の「楽天カード」も順調に伸びているという。コロナ禍でリアルでの買い物が減少したことで他のクレジットカード会社が苦戦する中、楽天カードの取扱高は急拡大しており、会員数も2000万に達したという。
さらに「楽天銀行」は900万口座、「楽天証券」は440万口座に達するなど共に成長を続けており、「楽天Edy」「楽天ペイ」などと合わせたキャッシュレス決済でも「大きなマーケットシェアがあると考えている」(三木谷氏)と、FinTech分野も好調な様子を示した。
また三木谷氏は、ZホールディングスとLINEが2021年3月に経営統合することについても言及。楽天の利用者の中にも「Yahoo! Japan」や「LINE」を利用している人がいるものの、楽天ユーザーのロイヤリティは高く業界をリードしている分野もあることから、それらを強みとして「他社もいいサービスを提供すると思うので、切磋琢磨しながら自分達のサービスをブラッシュアップすればいい」と答えた。
さらに三木谷氏は、楽天が現在力を入れている「楽天モバイル」の携帯電話事業の最新動向についても説明。サービス開始から3カ月で契約申し込み数が100万回線に達するなどユーザー数が増加しており、本体代が1円になるキャンペーンを実施したオリジナルスマートフォンの「Rakuten Mini」は「売れすぎて在庫がなくなり、入荷するのに1〜2カ月かかっていた」(三木谷氏)ほどの人気だったという。
ただ、三木谷氏はこの契約数に関して「大体そんなものかなという感じ」と、爆発的に加入者を伸ばしているわけではないと説明。エリア整備が進んでいない状態で加入者を大幅に増やすとKDDIへのローミング費用がかさむことから、2020年度の加入者数は「程よいところ」(三木谷氏)にとどめ、全国でのネットワーク整備が進んだ時点で「第2弾のロケットを打ち上げていく」と三木谷氏は話した。
そのエリアに関しても、一時は大幅な遅れが目立った基地局整備の前倒しが進んでいるとのことで、6月末時点では5739局が電波を射出、「設置完了しているのは1万局以上」(三木谷氏)だという。そこで、2021年3月までに人口カバー率70%を達成するだけでなく、当初2026年末までに人口カバー率96%以上の達成を目指していた計画を、5年前倒しして2021年夏に実現したいとしている。
5年もの大幅な前倒しを実現する理由について、三木谷氏は最も難しい都市部でのエリア整備を乗り切ることができたためと説明。エリア整備を前倒しする分投資も前倒しになることから、2021〜2022年度にかけては投資コストが大幅に増える形となるが、KDDIとのローミングを減らし利益は得やすくなることから、将来的に見れば大きなプラスに働くと三木谷氏は話す。
さらに将来的には、楽天独自のエコシステムを積極活用することで楽天モバイルの加入者を増やしていく計画とのこと。楽天カードが約10年で2000万契約をしているが、楽天モバイルではそれを超える規模の契約獲得を実現できる、将来の可能性が期待できる事業になると三木谷氏は意欲を示す。
ただ三木谷氏は、国内でのサービス展開はあくまで「第1章、いや序章くらいかなと思っている」と話し、完全仮想化ネットワークを採用したRCP(Rakuten Communications Platform)の世界展開に意欲を示す。
これは仮想化技術や無線設備のオープン技術などを取り入れ、通信機器ベンダーに依存することなく、モバイル通信事業者が簡単かつ低コストでネットワークを構築できるプラットフォーム。三木谷氏によると、RCPには世界各国の政府や携帯電話事業者が関心を寄せ、多くの問い合わせが来ていることから、その開発に注力する姿勢を示している。
一方、海外でコロナ禍の影響を受けサービス開始が9月に延期されている5Gの商用サービスに関しては、NECとコアネットワークの共同開発に合意しており、予定通り9月末頃にはサービスを開始する予定だという。当初より5Gの性能をフルに発揮できるスタンドアローン運用でサービスを提供するとしており、「来るべきタイミングで大々的に発表する。料金プランにまた驚きがあると思う」(三木谷氏)と話した。
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