シャープ 代表取締役会長兼CEOの戴正呉氏は8月7日、社内イントラネットを通じて、CEOメッセージを配信した。これまで社長メッセージとして配信していたものを、6月に会長兼CEOに就任したことにあわせて、CEOメッセージへと名称を変更してから、2回目の配信となる。
今回のCEOメッセージのタイトルは、「2020年度の業績目標を必達し、次の成長に向けた準備を整えよう」とし、2020年度は、2021年度から開始する中期経営計画の準備の1年と捉え、「Transition」をテーマに掲げたことなどについて言及した。
戴会長兼CEOは、冒頭に、8月5日に発表した2020年度第1四半期決算の内容について触れた。
100%子会社であるAIoTクラウドが開発したビジネスコミュニケーションサービス「LINC Biz」に、7月29日に追加したばかりのウェビナー機能を利用して、堺本社を主会場としてオンラインで会見を行ったことを報告。
「依然として新型コロナウイルスの影響が残る非常に厳しい事業環境のなか、利益重視の経営を徹底するとともに、顧客ニーズの変化に迅速に対応してきた結果、売上高は前年同期を上回る水準にまで回復し、利益についても黒字化を達成することができた。前回の決算発表時に2020年度の業績見通しについて、『上期は前年下期を上回り、下期は前年上期を上回ることで、通期で前年に対して増収増益を目指す』と説明したが、その達成に向けて順調なスタートを切ることができた」と総括した。
また、「新型コロナウイルスの収束のメドがいまだ立たないことに加え、米中貿易摩擦がますます熾烈化するなど、先行きを見通すことが非常に難しい状況にあるが、サプライチェーンや各国の経済活動が引き続き回復していくことを前提に、増収増益の通期業績予想を公表した。メディアやアナリストからは、『想定より良い結果で驚いた』、『ユニークな商品やサービスで事業拡大が進みつつあり、“ブランド企業”になるという宣言通りの成果が出てきた印象だ』といった前向きな評価が出ている。新体制となった各部門が、それぞれの目標必達に総力をあげて取り組むことで、業績予想を着実に実現し、ステークホルダーの信頼向上につなげていこう」と呼びかけた。
さらに、中期経営計画の新たな考え方についても説明した。2017~2019年度までの3年間では、「Transformation」をテーマとした中期経営計画を実行。2020年度からは新たな中期経営計画を開始する予定であったが、「さらなる成長を目指す次期中期経営計画は、足元の事業環境の急激な変化を踏まえ、1年延期することにした」と前置きした。
続けて「次期中期経営計画については、新型コロナウイルスの状況やニューノーマルに向けた世の中の動き、米中貿易摩擦を踏まえたサプライチェーンの再編、保護貿易主義への傾斜など、今後の世界情勢をしっかりと見極めたうえで、2021年度からの3カ年計画として年明け以降に公表したい」と述べた。
その上で、「2020年度になすべきことは『Transition』である。つまり、将来の成長に向けた準備をしっかりと整え、次のステージへと歩みを進めていくことである。事業環境の変化への対応や、前中期経営計画で積み残した課題の早期解決に取り組むとともに、次期中期経営計画での飛躍をより確かなものとする布石を次々と打っていく考えである」とした。
ここでは、「Transition」に向けた、いくつかの具体化な取り組みを紹介した1つめが「COCORO OFFICE」である。
7月27日に提供を開始したCOCORO OFFICEは、AIoTプラットフォームを活用したスマートオフィスサービスであり、コミュニケーションや業務効率化、セキュリティ対策など、日々の仕事を支援する機器やサービスを、顧客ニーズに合わせて組み合わせ、導入計画から保守、サポートまでを一貫して提供するソリューションだ。
8月3日には、COCORO OFFICE対応機器の第1弾となるMFP(複合機)およびNASを発売。今後は「BIG PAD」や「dynabook」、スマートフォン、タブレットなどに対応機器を拡大するとともに、サービスの拡充にも取り組むことになる。また、他社の製品やサービスとの連携も推進することになる。
「これまでのビジネスソリューション事業は、MFPを中心に展開し、順調に利益を創出してきた。だが、新型コロナウイルスの影響によって、テレワークが一気に拡大するなど、事業環境が急激に変化している。これをチャンスと捉え、今後はMFPだけでなく、COCORO OFFICEを核としたソリューション提案を強化するなど、ビジネスモデルの変革を一層加速し、さらなる成長を実現していく」とした。
2つめが、「夏研科技(山東)有限公司」の設立である。7月28日に設立を発表した同社は、中国における8K+5G関連技術の研究開発やソリューションの提供を担うために、中国煙台市との合弁によって展開するもので、8月中旬には、煙台市の主催によって、開所式が行われる予定だ。
「中国では、2022年に8K試験放送の開始を予定しており、シャープはこれに向け、煙台市政府とも連携し、映像や音響、配信など、8K放送関連技術を用いたビジネスを展開していく。さらに、インフラ検査やセキュリティなど、産業向けソリューションビジネスへと、順次、事業領域を拡大し、8K+5G Ecosystemの構築を進めていく考えである」と語った。
3つめが、「ディスプレイデバイス事業の分社化」だ。同社では、ディスプレイデバイス事業とカメラモジュール事業を分社化する方向性を示していたが、ディスプレイデバイス事業を10月1日付で分社化して、シャープディスプレイテクノロジー株式会社(SDTC)を設立することを、8月5日に発表した。
「ディスプレイデバイス事業は、韓国や中国企業との激しい競争に直面している。また、新型コロナウイルスの影響によって、顧客の需要にも大きな変化が生じている。このような難しい事業環境のなか、シャープが、今後も競争を勝ち抜いていくためには、環境変化に機敏に対応し、事業を変革し続けるとともに、他社との協業などの新たな打ち手を、より一層スピードを上げて実行していかなければならない。こうした考えのもと、今回、ディスプレイデバイス事業を、先行して分社化することを決定した」とした。
さらに「ディスプレイデバイス事業の社員に、これまで以上に高いスピード感をもって事業にあたることを期待している」と述べた。また、カメラモジュール事業については、「現在具体的検討を進めており、以前発表した通り、2020年度中に分社化する予定である」とした。
4つめが、Dynabook(DBI)の完全子会社化である。東芝が保有するDBIの株式19.9%を、あらかじめ設定した価格で買い取ることができるコールオプションを行使して、8月3日にその全数を取得し、DBIを完全子会社化した。
「DBIは、AIoTクラウドを中心に、シャープグループとの連携をさらに深め、事業価値向上を図るとともに、将来の株式上場に向けた取り組みを加速していく考えである」と位置づけた。
メッセージの最後に戴会長兼CEOは、「日本では、再び新型コロナウイルスの感染者数が拡大しており、予断を許さない状況となっている。明日からお盆休みに入るが、休暇中は手洗いやうがい、マスクの着用など、基本的な感染防止策をしっかりと講じるとともに、外出時には十分に気をつけて行動をしてほしい。休み明け以降、新たな気持ちで、まずは上期目標の達成に向けて全力で頑張ろう」と締めくくった。
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