シャープ、戴社長が今こそ掲げる「開源節流」の経営--マインドは守りから攻めへ

 シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏は6月1日、社内イントラネットを通じて、社員に対してメッセージを発信した。

 「今こそ“開源節流”に徹底して取り組もう」と題した今回のメッセージでは、6月下旬に開催予定の株主総会以降、自らが会長兼CEOに就任し、副社長の野村勝明氏が社長兼COOに就任する新経営体制について報告。戴氏が掲げる「開源節流」の経営を継続する姿勢を示す一方、経済活動が回復の兆しを見せ始めたことを捉え、「マインドも『守り』から『攻め』へと切り替えてほしい」を呼びかけた。

シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏
シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏

 メッセージの冒頭では5月19日に発表した2019年度決算について報告。「2019年度は、『量から質へ』の方針のもと、第1四半期から第3四半期にかけて毎期着実に利益を積み上げてきたが、第4四半期は、新型コロナウイルスの影響や退職給付費用の増加、投資有価証券の評価減などによって、2016年度第2四半期以来14四半期ぶり、そして、新体制本格始動後では初めての最終赤字となった。年間では最終黒字を確保できたが、足元では依然として新型コロナウイルスの影響が残り、厳しい状況が続いている。2019年度の努力に改めて感謝するとともに、V字回復に向けた一層の奮起を期待する」とした。

 続いて、事業活動の現状について触れ、「緊急事態宣言の解除に伴い、今後、さまざまな施設や店舗の営業が段階的に正常化され、また、都道府県をまたぐ移動についても順次可能となる。海外においても、中国や韓国に続き、欧州や米州で経済活動を再開する動きが出ており、徐々に世界経済が好転する兆しが見え始めている。シャープでは、今後、取引先や顧客の動向をしっかりと見極めつつ、営業活動をはじめとしたさまざまな事業活動を強化し、他社に先がけて事業を正常化していかなければならない。一方で、新型コロナウイルス感染拡大の第2波も念頭に置き、これまで講じてきたさまざまな感染防止策を見直すことも重要である。新型コロナウイルスとの戦いは新たなステージに入っている。一人ひとりのマインドも『守り』から『攻め』へと切り替え、全社一丸となって早期の業績改善を実現しよう」と述べた。

 今回は、タイトルに盛り込んだように「開源節流」について、メッセージの多くを割いている。戴会長兼社長は、平成最後のメッセージとなった2019年4月19日の社長メッセージの中でも、「開源節流」に触れている。

 戴会長兼社長は、「足元の事業環境は、依然として新型コロナウイルスの影響が残り、厳しい状況が続いている。この流れは、なんとしても2020年度第1四半期に食い止め、V字回復を果たしていかなければならない。このためには、いまこそ、開源節流に徹底して取り組むことが極めて重要である」と前置きし、「以前のメッセージでも話したが、開源節流とは健全な財政を、川の流れに例えた言葉で、開源とは水源を開発すること、すなわち、新たな事業を創出し売上を伸ばすことを意味し、節流とは水の流れる量をしっかりと調節すること、すなわち、ムダを撲滅することを意味する」と、改めて、その意味を説明した。

 その上で、「節流が意味するムダの撲滅とは、単なる経費削減ではない。組織やオペレーション、サプライチェーン、ビジネスモデルなど、事業のあらゆる面におけるムダを取り除くことを指す。これは、付加価値を生まないものを取り除き、価値を生み出すものへと変えていくことでもある」とし、「事業活動におけるムダを見つける具体的視点として、『トヨタ生産方式』の7つのムダをはじめ、さまざまな切り口があるが、ムダが発生する原因を突き詰めて考えると、結局は『管理のムダ』と『何もしないムダ』の2つが、根本的な原因であると考えている」と定義した。

 「管理のムダ」とは、精度の低いPSI管理や、不十分な売価管理および原価管理、出資先の経営状況の管理不備など、管理力不足や管理ミスによって発生するムダを指すという。「管理のムダは、未然に防ぐことが可能であり、日頃から目を光らせ、しっかりと抑えていかなければならない」とする。

 また、「何もしないムダ」とは、構造改革の先送りや前例踏襲の仕事など、課題を認識しながらも手を打たないことによって発生するムダを指すという。「何もしないムダからは、決して目を背けず、リーダーが強い決心を持って立ち向かうとともに、部下の才能や創造性を十分に引き出し、新たな価値の創出につなげていくことが肝要である」とした。

「One SHARP」「借力使力」の姿勢で、新ソリューションを創出

 「足元では、節流に向けて、欧州テレビ事業における開発および調達プロセスの見直しや中国のテレビ設計開発会社の構造改革、ビジュアルソリューション事業におけるソリューション提案力強化を狙いとした新体制構築など、さまざまな取り組みテーマを設定し、改革に着手するとともに、きめ細かな進捗確認を行っている。各事業本部、事業部、部においても、付加価値を生まないムダがないか、いま一度、総点検してほしい」と提案した。

 一方、「開源」については、「新たな事業を創出するという観点では、顧客の利便性や満足度を第一に考え、当社ならではの新たな価値を提案するマーケットオリエンテッドの発想が大切である」とし、「現在、世の中は、New Normalといわれるように、新たな日常に向けて大きく動き始めており、オンラインサービスや非接触型ソリューションに対するさまざまなニーズが生まれている。今後は、こうした変化を機敏に捉え、自らが持つリソースや商品、技術だけでなく、『One SHARP』や『借力使力』の姿勢で、新たなソリューションを創出していかなければならない。ここでは、コアとなるCOCORO LIFE事業やAIoTクラウド事業、COCORO OFFICE事業のさらなる拡大はもとより、さまざまな新規事業の創出にも取り組み、事業変革を実現していこう」と呼びかけた。

 また、5月29日に開催した取締役会で、ディスプレイ事業およびカメラモジュール事業を、2020年度中に分社化する方針を決議したことに触れ、「これも、開源に向けた取り組みのひとつである。分社化の狙いは、経営責任の明確化と意思決定の迅速化を図るとともに、他社との協業を通じて継続的な設備投資、開発投資を実行し、さらなる事業拡大を目指すことである。だが、分社化後も連結子会社としての位置づけは維持し、将来にわたって、両社が生み出す先進的デバイスを、One SHARPでの事業戦略構築に活かしていきたい」と述べた。

 さらに、「開源と節流のいずれにおいても、付加価値を積み重ねていく『プラス経営』の発想が重要である。このためには、自らの事業や製品を、イノベーション、顧客のセグメンテーション、差別化、ローカルフィット、地理的条件、サプライチェーン、協業・借力使力など、さまざまな視点から分析し、新たな価値創出に結びつく鍵を、見いだしていくことが大切である。ぜひとも、常日頃から、いかに付加価値を創出するかということを念頭に置き、業務に取り組んでほしい」とした。

 また、「今後、開源節流の取り組みを一段と強化していく」としながら、6月下旬に、戴会長兼社長が会長兼CEOに、野村副社長が社長兼COOに就任することを報告。「新たな経営体制で取り組みを進めていくことになる。新体制の詳細については、株主総会終了後、改めて話をする予定である。新たな体制のもと、社員とともに、より一層、事業拡大に邁進していきたい」と述べた。

 ここでは、5月31日付で退任した副社長の石田佳久氏についても触れ、「石田副社長には、私が社長に就任した2016年にシャープに入社し、欧米やDynabookの事業拡大を中心に大変活躍してもらった。この4年間の石田副社長のシャープへの貢献に対して、この場を借りて、改めて感謝申し上げたい」と語った。

5月31日付で退任した副社長の石田佳久氏
5月31日付で退任した副社長の石田佳久氏

賞与とは別枠の社長ファンドを付与

 最後に言及したのが、6月10日に支給が予定されている賞与に関してだ。「今回の賞与は2019年度下期の業績評価に基づき支給するが、第4四半期が赤字となり、基準ランクを上回る部門が1部門もないなど、全社的に大変厳しい評価結果となった。今回の賞与支給額も従来通り、信賞必罰のポリシーに沿って決定するため、厳しい内容になっている」としながらも、「こうした状況を踏まえ、今後、社員が一致団結して業績回復に取り組んでもらえるよう、賞与とは別枠の社長ファンドで、2019年12月の賞与支給時に付与したCOCORO MEMBERSのクーポンを、前回よりも金額を上乗せして、国内勤務者を対象に付与することにした」と、奮起を促すための特別措置を用意したことを発表した。

 戴会長兼社長は、「マネージャーのみに適用していた四半期単位の業績評価制度を、今期から一般社員にも適用する。この制度では、赤字の場合は、部門業績部分の賞与がゼロになる。事業責任者は、これまで以上に重い業績責任を負うことを認識しなければならない。ぜひ、強いリーダーシップを発揮し、一丸となって、業績改善に取り組んでほしい。第1四半期もあと1カ月となったが、ともにがんばろう」と、社員に発破をかけた。

 なお、今回の社長メッセージは、会長兼CEOに就任することが発表されてから、初めてのメッセージとなった。

 社長就任直後の2016年8月22日に、社内に向けて「社長メッセージ」を発信して以降、ほぼ毎月のように発信してきた同氏だが、6月下旬以降に会長兼CEOに就任し、社長の肩書が外れるまでの残り約4週間で、最後となる「社長メッセージ」を発信するのか、さらに、会長兼CEOとなっても、継続的にメッセージを発信するのかが注目される。

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