パナソニック9年ぶり純利益で赤字--新型コロナ影響は4、5月がボトム、6月からは回復基調に

 パナソニックは、2021年3月期第1四半期(2020年4~6月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比26.4%減の1兆3919億円、営業利益は93.3%減の37億円、税引前利益は94.5%減の30億円、当期純利益は前年同期の497億円の黒字から、98億円の赤字に転落した。

2020年度第1四半期連結業績
2020年度第1四半期連結業績

 パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏は、「売上高は、事業ポートフォリオ改革による非連結化影響に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響によって減収。すべてのセグメント別で減収となった。また利益は、経営体質強化の取り組みは進捗したが、減販影響が大きく減益。すべてのセグメントで減益になった。純利益では9年ぶりの赤字であり、深刻に受け止めている」と総括。新型コロナウイルスの影響は、売上高で3500億円のマイナス影響、営業利益では800億円のマイナス影響があったという。

パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏
パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏

 「オートモーティブ、アプライアンス、コネクティッドソリューションズを中心にコロナ影響があった。だが、コロナ影響は6月から売上高、利益ともに改善している。月次売上高は、4月、5月がボトムとなっており、6月からは日本や中国などを中心に回復が顕著である」とした。

 売上高は、4月が前年同月比26%減、5月は28%減となっていたが、6月は9%減になっているという。「6月は、中国では前年実績を超えている。日本でも前年並みに近い。だが、欧州、北米は厳しい状況が続いている」という。また、「調整後営業利益は683億円の減益だが、コロナ影響を除くと、117億円の増益となった」としている。

 セグメント別業績では、アプライアンスの売上高が前年同期比19%減の5547億円、営業利益は49%減の152億円となった。

 そのうち、ルームエアコンを含む空調冷熱ソリューションズの売上高は前年同期比13.3%減の1444億円。白物家電などのホームアプライアンスの売上高は前年同期比11.8%減の1978億円。テレビなどのスマートライフネットワークは46.2%減の723億円となった。

 「中国や日本などの一部地域や商品は回復基調になったが、全体では減収減益になっている」とした。

 ライフソリューションズは、前年同期比30%減の3251億円、営業利益は前年同期比56%減の56億円と減収減益。コロナ影響による市況の悪化やロックダウンによる工場稼働停止により減収になった。

 コネクティッドソリューションズの売上高は前年同期比27%減の1853億円、営業利益は前年同期の137億円の黒字から、160億円の赤字となった。航空機の運航減少により、アビオニクスを中心に減収となったのが要因だ。

 オートモーティブの売上高は前年同期比44%減の2108億円、営業利益は前年同期の100億円の赤字から5億円改善したが、マイナス95億円の赤字。「売上高は、車載機器での商品ポートフォリオの入れ替えを着実に進めたが、顧客の自動車生産台数減少によって、大きく減収となった。また、利益は、車載電池は北米工場の生産性向上などにより前年並みを確保した」という。

 インダストリアルソリューションズは、売上高が前年同期比12%減の2886億円、営業利益は75%増の92億円となった。「情報通信インフラ向けの蓄電システムやコンデンサなどは拡大したが、車載向けの減収が響き、全体では減収となった」という。

 なお、同社では、資金状況についても説明。「グロス資金は、1兆円を超える水準を確保しており、加えて、7000億円の未使用のコミットメントライン契約もあり、十分な流動性を維持している」と述べた。

2020年度第1四半期セグメント別実績
2020年度第1四半期セグメント別実績

コロナによる社会変化がもたらす事業機会への取り組みを強化

 一方、2021年3月期通期(2020年4月~2021年3月)の連結業績見通しは、売上高は前年比13.2%減の6兆5000億円、営業利益は48.9%減の1500億円、税引前利益は48.5%減の1500億円、当期純利益は55.7%減の1000億円とした。

 同社では、新型コロナウイルスの影響の不確実性が高いとして、これまで通期業績見通しを公表していなかった。

 パナソニックの梅田CFOは、「第2四半期以降、コロナ影響は、緩やかな改善を見込んでおり、第2四半期の調整後営業利益は、第1四半期と比べて影響額が半減。下期は、上期と比べてマイナスが大きく減少し、前年下期と同水準になると見込んでいる。だが、年間では減収減益になる。

 航空、住宅関連、自動車業界向け事業では下期も影響が残ると見ている。経営体質強化策に加えて、削減できるものはさらに削減する」とする一方、「コロナによって伸びている事業もある。空調関係、衛星関係、5G関連は、技術開発投資や増産投資をしながら、事業構造転換も図っていく」とした。

 新型コロナウイルスの通期売上高への影響は、2019年度の1400億円に対して、2020年度は6500億円を想定。営業利益では、2019年度の300億円に対して、2020年度は1500億円の影響を想定している。また、2020年度は構造改革費用で500億円を見込んでいる。

 アプライアンスの売上高は前年同期比9%減の2兆3700億円、営業利益は19%億円増の730億円を見込む。「空調や白物家電を中心に経営体質強化に取り組み、増益になる見通し。中国、日本に加えて、アジアが立ち上がってくることを期待している」とした。

 ライフソリューションズは、前年比23%減の1兆4800億円、調整後営業利益は234億円減の750億円。「住宅関連事業などの減販影響がある」という。

 コネクティッドソリューションズの売上高は前年同期比13%減の9000億円、調整後営業利益は610億円減の150億円。「アビオニクスが厳しいが、そのほかのソリューションビジネスや、リモートワークの常態化などにより、PCの伸びが期待される」とした。

 オートモーティブの売上高は前年同期比16%減の1兆2500億円、調整後営業利益は5億円改善するが、マイナス300億円の赤字。「車載機器は固定費削減を進めるが減益。車載電池は北米工場の生産性向上などにより増益を見込む」という。

 インダストリアルソリューションズは、売上高が前年同期比6%減の1兆2000億円、調整後営業利益は174億円増の550億円とした。「売上高は、情報通信インフラ向けの需要が好調だが、車載向けの減販により減収になる」としている。

 一方、梅田CFOは、「中期戦略の収益改善については、経営体質強化などを着実に推進するとともに、コロナによる社会変化がもたらす事業機会への取り組みを強化する」と述べ、「中期戦略として掲げた経営体質強化、車載事業の収益改善、事業ポートフォリオ改革を、着実に推進する。また、コロナについては、事業リスクへの対策、事業機会獲得への取り組みを実施する考えだ。2020年度は、コロナ影響があるが、低収益体質からの脱却に向けた取り組みを強化する」と語った。

2020年度連結業績見通し
2020年度連結業績見通し
200年度セグメント別見通し
200年度セグメント別見通し

中国GS-Solarとの協業契約を解消「毅然とした対応で」

 なお、同社では、中国の太陽電池メーカーであるGS-Solarとの協業契約の解消を発表した。新たな協業先の提携を含めて、さまざまな手段を検討するとしながらも、2022年度の黒字化を目指す姿勢を示した。

 梅田CFOは、「発表リリースのなかでに、『今後、GS-Solarに対して、法的手段も辞さない姿勢で毅然とした対応をする』としているように、契約を交わしたあとに、契約が履行されなかったことには毅然とした対応をしたい。こうした動きから、両社の状況を想像してもらいたい」と述べた。

 この契約では、パナソニックが、太陽電池の研究開発機能を分離して新会社を設立して、GS-Solarと共同出資を行う一方、ソーラー事業の子会社であるSun Everywhere Sdn. Bhd.(旧パナソニックエナジーマレーシア)を譲渡することに合意していた。だが、GS-Solarは、契約で定めた期限を超え、さらに新型コロナウイルスによる影響を考慮した期間を過ぎても、協業開始に必要な要件を満たさなかったため、今回、契約解消を決定したという。

 なお、2022年度の黒字化については、「生産設備や使用するポリシリコンについては、事業譲渡を前提とした手当てがついている。2021年度には赤字が残るが、2022年度には赤字が残らない形で対処したい」と述べた。

 同社では、4つの事業を構造的赤字事業とし、これを2021年度までに撲滅する方針を打ち出している。太陽電池事業は、構造的赤字事業のひとつだが、「経営体質強化策により、1年遅れで対応する。残りの3つの構造的赤字事業への対応は予定通りに2021年度までに進める」と述べた。

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