新型コロナウイルス関連

パナソニック、新型コロナ影響で北米の需要は半減するも「4月が底、リモートで新製品開発も」

 パナソニックは、2020年3月期 (2019年4月~2020年3月)連結業績を発表した。売上高は前年比6.4%減の7兆4906億円、調整後営業利益は12.3%減の2867億円、営業利益は28.6%減の2938億円、税引前利益は30.1%減の2911億円、当期純利益は20.6%減の2257億円となった。

2019年度連結業績
2019年度連結業績
2019年度 セグメント別実績(年間)
2019年度 セグメント別実績(年間)

フリーキャッシュフローは大幅改善、十分な流動性を確保

 パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏は、「売上高は、事業ポートフォリオ改革、中国での投資需要低迷に加えて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、減収となった。また、調整後営業利益は、固定費削減などは着実に進捗したものの、減販損によって減益。営業利益および純利益は、事業構造改革費用などにより減益となった。だが、フリーキャッシュフローは大幅改善し、資金は十分な流動性を確保している」と総括した。

パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏(撮影は2月3日の決算発表時)
パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏(撮影は2月3日の決算発表時)

 営業利益においては、売上減少に伴う減販損は890億円となり、「中国での投資需要の低迷や、新型コロナウイルスの影響によるもの」と説明。合理化によるプラス効果は、北米の円筒形電池工場での取り組みなどにより432億円。固定費は車載電池の生産能力拡大に伴い増加したが、間接諸経費の圧縮などにより306億円の増益になった。また、事業ポートフォリオ改革による事業譲渡益で1226億円、事業構造改革費用などで1155億円を計上したという。なお、ROEは前年度からは下回り11.5%となったが、10%以上の水準を維持した。

 セグメント別業績では、アプライアンスの製販連結の売上高が前年比6%減の2兆6493億円、調整後営業利益は130億円減の682億円となった。

 そのうち、ルームエアコンを含む空調冷熱ソリューションズの売上高は前年並の4930億円。白物家電などのホームアプライアンスの売上高は前年比3.7%減の8784億円。テレビなどのスマートライフネットワークは13.3%減の5619億円となった。

 「空調が増収となったが、スマートライフネットワークの減収や、新型コロナウイルスの影響によって全体としては減収になった。営業利益は、空調や日本のホームアプライアンスが堅調だったが、減販損および構造改革費用などにより減益になった」という。

 第4四半期には、アプライアンスの営業利益がマイナス270億円の赤字になっているが、「新型コロナウイルスの影響が最も大きかったのがアプライアンスであった。また、テレビの構造改革を進めるなかで、設備などの減損計上も発生している。減損を計上した拠点の地域については現時点では明らかにできない」などと述べた。

 テレビ事業は、現在、協業先を模索している段階にあるが、「あらゆる可能性を持って協業先と協議をしている。テレビ事業は、2019年度は100億円を超える赤字であったが、2021年度のテレビ事業の黒字化の計画に変更はない。2020年度は赤字となるが、2桁億円であり、しかもそれほど大きな赤字にはならないとみている。固定費の改善や地域を絞り込んだ販売、そして、協業先との提携により、改善を図る」と述べた。

 ライフソリューションズは、前年比6%減の1兆9125億円、調整後営業利益は82億円増の981億円。配線器具等を扱う電材事業やハウジング事業が堅調に推移したが、パナソニックホームズなどの非連結化の影響によって減収になった。

コネクティッドソリューションズの売上高は前年比8%減の1兆357億円、調整後営業利益は237億円減の762億円。プロセスオートメーションやアビオニクスの減販のほか、新型コロナウイルスの影響が全事業におよび減収となった。また、営業利益は、Windows 7のサポート終了に伴い、PC事業が好調だったモバイルソリューションズやパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)の増益、事業譲渡益などがあったが、減販損が響いて減益になった。

 オートモーティブの売上高は前年比3%減の1兆4824億円、調整後営業利益は187億円減となりマイナス305億円の赤字。車載電池の増産投資効果があったものの、市況の減速や新型コロナウイルスの影響、車載機器の製品サイクル移行期による減販をカバーできずに減収となった。営業利益は、円筒形車載電池の北米工場が、第3四半期に引き続き、第4四半期も黒字化を達成し、収益性を大きく改善したが、角形車載電池の固定費や欧州充電器件名の開発費の増加、のれん減損などによって減益になった。

 なお、テスラ向けの電池を生産しているギガファクトリーは、2020年3月末に生産能力が32GW/hに到達した。4月はロックダウンのため、生産が販売程度に落ちこんだが、「すでに35GW/hに向けた設備は入っており、今後は材料のレシピの改善と技術革新の取り組みを行う。新型コロナウイルスの影響で立ち上げ自体は遅れているが、2021年度に向けて35GW/hを目指す。今後の生産拡大に向けては、テスラからは強いデマンドがある。協議している段階にある」と述べた。

2019年度 セグメント別実績(年間)
2019年度 セグメント別実績(年間)

 インダストリアルソリューションズは、売上高が前年比10%減の1兆2827億円、調整後営業利益は259億円減の376億円となった。米中貿易摩擦の影響や新型コロナウイルスの影響、半導体の減損などもあり、減収減益になった。

 なお、事業ポートフォリオ改革の進捗については、車載用角形電池や街づくり、セキュリティシステム事業において、パートナー企業との共創を進めたことを報告。一方で、赤字事業である半導体、液晶パネル、ソーラー事業については、「方向付けを完了した」と述べた。

 梅田氏は、「2019年度は、事業ポートフォリオ改革の着実な実行と、経営体質の強化という2つの成果があった。赤字事業の方向付けを進め、固定費削減の取り組みを進めるとともに、フリーキャッシュフローについても大幅に改善した。低収益体質からの脱却に向けた取り組みは継続、推進できた」と振り返った。

 一方、20201年3月期(2020年4月~2021年3月)の連結業績見通しは、「新型コロナウイルス感染症の拡大が与える影響の不確実性が高い。今後、連結業績予想を合理的に算定することが可能となった時点で、速やかに開示する予定」だとして公表しなかった。

 だが、梅田氏は、「2020年度も、引き続き、固定費削減や赤字事業への対策など、経営体質強化を進める。また、黒字化が急務である車載事業については、車載機器の開発費抑制や円筒形車載電池の増販、生産性改善といった収益改善に取り組む。事業ポートフォリオ改革についても着実に推進する姿勢は変わらない」とし、「経営環境は、新型コロナウイルスの感染拡大などにより不透明性が増しているが、低収益体質からの脱却に向けた取り組みは、着実に進めていく」とした。

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