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シリコンバレーの「働き方」はコロナ禍でどう変わった?--現地の日本人が事例で紹介

楠山健一郎(プリンシプル代表取締役)2020年08月05日 08時00分
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 新型コロナウイルスの影響により、米国でもテレワークやオフィスのあり方に対する考え方が変わってきている。

 インターネットが普及する1990年代までは、米国でもオフィスを構え、そこに社員が出勤して働くというスタイルが常識だった。一方で、米国はそもそも国土が広いため、地元地域の顧客をターゲットとする車や住宅などは対面で営業するものの、全米をターゲットに広告や人材紹介、コンサルティング、はたまた消費財などを販売する場合は電話営業が主体であり、それこそ一度も会わずに電話だけで取引きが成立する。これは東京一極集中がゆえに、対面での取引きが成立する日本との大きな前提の違いである。

 しかし、2000年ごろからインターネットが普及しはじめ、回線スピートも強化されたことで、ネット通話やビデオコールが急速に普及した。また、フリーランスでのワークスタイルをより好む傾向にあるミレニアル世代人口が米就労人口の最大の割合を占める中、テレワークは個人と企業の働き方や雇用形態に新たな選択肢を提供するようになった。

 一方で、行き過ぎたテレワークにより、2013年ごろには米Yahoo!のCEO・マリッサ・メイヤー氏がリモートワークに否定的な見解を示し、同時期にはIBMが「リモートワークから原則出勤」に方針を切り替え、社員の怒りを買うというニュースが報じられるようになった。このように、テレワークのデメリットや、業績悪化の際にもテレワークを続けられるものかという疑問の声も上がってきている。

 それでも、今回の新型コロナウイルス感染拡大により、少なくともシリコンバレーのテック企業はほぼテレワークを強いられたことで、「別に毎日オフィスに行かなくても仕事ができる」「むしろテレワークが良い」と考える人たちも再び増えてきた。

 ギャロップ社の調査によると、コロナ前のテレワーク比率は31ポイントであったが、新型コロナウィルス後は63ポイントとなっている。

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 筆者は現在シリコンバレーに拠点があり、普段からシリコンバレーやロサンゼルスなどの西海岸のCEO、GAFAの社員などと情報交換をする機会が多い。そこでこのコロナ禍で米国のテック企業の働き方にどのような変化が起きているのか、一部の事例を以下の通り紹介したい。

TwitterやGoogleなど各社で対応に差

■いち早く対応した「Twitter」

 シリコンバレー企業の中でも特に完全テレワークに前向きだったのは、TwitterのCEOであるジャック・ドーシー氏だ。コロナ感染が始まるといち早く世界各地のオフィスを対象に全面的な在宅勤務への移行を表明。5月中旬には全従業員にコロナ後も期限を設けずテレワークを認める方針を示した。

■永続的なテレワークを認めた「Facebook」

 Facebookは、社員の永続的な在宅勤務を認めると発表した。創業者のマーク・ザッカーバーグ氏は、「今後5年から10年の間に、社員の50%がリモートで働くようになるだろう」と語り、大都市圏以外での人材確保や地域社会への貢献といったテレワークのメリットを挙げている。一方で、彼らが郊外に引っ越すことで、全米1、2を競う住宅価格が下がった際には、その分給与を下げることも明言しており波紋を広げている。

■対面で働くことを重視する「Google」

 同社はもともと、オフィスで対面で働くことを重視することで有名だ。特にカリフォルニア州マウンテンビューにある本社は、都会的なサンフランシスコ市から車で約60分(+渋滞で30〜60分)ほどの場所に位置しており、Gバス(Googleバス)というWi-Fi付きのバスを毎日走らせて出勤を促している。

 GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏は、「どのような状況でも、人々が集まるための物理的な空間が絶対に必要だ」と語り、マウンテンビュー本社を中心とした大幅な拡張を予定。2021年1月1日からは、再び皆で出社して、以前のように仕事をしていこうとも呼びかけたが、再度2021年6月末までは、全世界で社員に自宅からのリモートワークを選択したようだ。

■部門によって異なる「Apple」

 こちらは部門によって少々状況が変わるが、代表的なハードウェアであるiPhoneやMacbookなどの社外への持ち出しは原則禁止であり、これらの秘匿性の高い製品に関わっている社員は、コロナ禍でも早い段階で出勤をするように求められている。一方で、それ以外のマーケティングやソフトウエアプログラマーなどはフルテレワークとなっている。部門や扱う商材によってばらつきがあるようだが、収束につれて段階的にオフィスに戻ることを宣言している。

■起業家育成機関「Y Combinator」は対面重視

 DropboxやAirbnbなど、現在華々しく活躍しているIT企業を輩出した、世界で最も入会が難しいといわれるスタートアップ育成機関「Y Combinator」でも、対面を重視している。コロナ禍で現在は対面はできない状態だが、通常の最終面接は世界中どこの起業家であろうと、必ずシリコンバレーに呼び寄せ、創業メンバーが揃って、対面で実施している。リモートでは伝えられない非言語的な五感の部分を重要視しているようだ。

 また一度、入所が決まれば、世界中どこにいようが3カ月間はシリコンバレーに住まなければならないという条件が出されることでも知られている。徹底的に対面で、起業家がしのぎを削ることを重視しているのだ。

■NASDAQ上場のデータ解析会社のケース

 せっかくなので、私の知り合いの会社の事例も紹介したい。シリコンバレーに拠点を置き、3万人の従業員を抱えるNASDAQ上場のビッグデータ関連企業の友人からは、最近CEOが変わり、いつでもリモートワークOKの方針から原則オフィス出勤になり、リモートワークは週1回に制限された、という話を聞いた。生産性が落ちる、チームでの一体感や創造性を失うという理由である。このようにCEOの考え方によって勤務体系が大きく変わるケースもある。

■小規模なネット広告代理店のケース

 もう1社、知り合いの会社を紹介しよう。こちらは50名と小規模なネット広告代理店のケースだ。週3日など曖昧には決めずに、出社日とリモート日を明確に分けて効率性などをみながら運用しているという。具体的には、月・水・金はオフィスに出社し、なるべくコミュニケーションが必要な会議、クライアントミーティングなどを入れる。エンジニアも一堂に会することで和気あいあいとお互い教えあったり雑談も交えて仕事をする。

 一方で火・木は自宅で集中してタスクを処理する。営業チームは営業リストの整備、広告の制作・出稿チームは配信の調整、またレポートの作成など集中力が必要な作業をする。実は稼働時間をみると、火・木のテレワークデーのほうが稼働時間が長くなるものの生産性は高くなる傾向にある、とCEOは語っていた。なお、コロナ禍はリモートワークを強いられているが、自宅待機命令が解除された場合はオフィスに戻ってきてもらう予定だという。

米国でも求められる柔軟な判断

 このように、米国内でも対応は完全テレワーク派と慎重派、併用型など割れている。いずれにしても、今回の新型コロナウィルスがきっかけで、米国でもテレワークをより柔軟に活用していくケースが増えるだろう。ただし、それにより失うものを懸念している経営者も多い。生産性が上がった、下がった、従業員の意見などもあるが、企業が競争にさらされていることは確かである。

 そのような中、経営者は会社がどれくらいの規模で今後はどこを目指すのか?小さい規模で社員のライフワークバランスを重視するのか?上場を目指し、もしくは上場しており、社会的な責任や業績責任を持つのか?会社の業績が強固な仕組みに支えられ、多少の管理なしでも収益が生める状態か?まだ軌道にのらず、属人的で競合も多く、何かあれば危うい状態か?などを考慮し、柔軟性をもたせながら判断していくことになるであろう。

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