——今回のプロジェクトではさまざまな分野のソリューションを募集していますが、区長が特に期待を寄せている分野はありますか。
長谷部氏:特に期待している分野というのはありませんが、数年前までだと「一攫千金を当ててやろう」的なスタートアップが多かったところ、ここ2年くらいは「福祉・教育分野のこの課題をなんとかしたい」みたいな企業が増えてきた印象ですね。「大金持ちになろう」みたいな野望だけでなく、「小さな社会課題も解決していこう」という空気が感じられるのはいいことだなと思っています。
田坂氏:ちなみに、6月25日に募集を開始した今回のプロジェクトでは、2週間経過した現時点ですでに23件の応募がありました。「ヘルステック」「子育て」「教育」の3分野だけで、その半数近くになっていますね。「文化・芸術・エンタメ」分野の応募も数件あります。
長谷部氏:そこはやっぱり渋谷的ですよね。応募のあった件数や分野からも、今言ったような「小さな社会課題も解決していこう」という空気、流れを感じていて、この取り組みには根拠のない勝算があるように感じています。
——このプロジェクトはいつごろまで募集を続けるのでしょうか。
長谷部氏:ずっとやります。締め切りはありません。最初に応募のピークがきて、そこから採択された中で社会実装されていくものが現れてくると、その状況を見てまた少し応募数が増えてくるかもしれませんね。実際に走り出した案件はどんどんオープンにして、ウェブサイトで紹介していくつもりですし、「常にドアは開いています」という姿勢を見せたいと思っています。
——今回はスタートアップを中心に募っていますが、たとえばサイバーエージェントやDeNAなど、渋谷区の大手企業などが推進する「BIT VALLEY 2020」なども立ち上がっています。そうした取り組みや、Googleをはじめとする渋谷区内にオフィスを構える大企業との連携についてはいかがですか。
長谷部氏:「BIT VALLEY 2020」のチームには、小学校でプログラミング授業をしてもらったりと、すでにつながりができ始めていて、そのあたりは強化していきたいと思っています。彼らがファンドになってスタートアップを支援してくれる可能性もありますし、エコシステムとしていろいろなことが回るようにしていきたいですね。
さまざまな取り組みや活動が、一見つながっていないようで、実際には全部つながってるんですよね。それがもう少しくっきり見えるように表現できると、渋谷区にもっと吸引力を作れるんじゃないかなと思っています。渋谷にはそういう人たちがいる、動きがある、みんながつながっているという姿を見せたい。今回のプロジェクトで新たなビジネスやスタートアップが出てきたりすると、そのサイクルがもっと活性化するのかなと思います。
——渋谷区では、有志が渋谷区内の課題を発見して解決を図る「渋谷をつなげる30人」という取り組みもしています。そこで活動しているチームからの応募も期待できるのではないでしょうか。
長谷部氏:確かに、そこからの応募があってもいいですよね。
田坂氏:区長が手がけていることは、ササハタハツ(笹塚・幡ヶ谷・初台)の事業推進もそうですが、市民とつながったり、市民の声を拾うというコンセプトのものが多いんですね。まさに、渋谷をつなげる30人もその1つだと思いますが、そこで出た課題や、そこで見つけた目標について、スタートアップや大学・研究機関のソリューションがつながるような形が一番いいなとも思いますね。
——他の自治体との連携も考えているのでしょうか。
長谷部氏:渋谷区は国内外のいろいろなところと防災や文化的な面で協定を結んでいますので、もしそういった内容で取り組みたいスタートアップがあれば各自治体にもつなげますよ。
地域的にもっと広いところでやりたいのであれば、たとえば広島県の「ひろしまサンドボックス」実証プロジェクトがありますし、ハチ公のふるさとである秋田県大館市ともつながりがあって、港町の長崎県佐世保市とは防災協定を結んでいます。みなさんチャレンジ好きですし、渋谷区が持っているそうしたリソースをすべて活用して支援したいと思っています。
ただ、これらの取り組みを通じて、他の自治体と競争するつもりはありません。今の渋谷に必要だと思うからやっているわけで、スタートアップに関しては先頭に立ってやっていくことがこの街にとって大きな価値の1つだとも思っています。企画によっては隣の区と組んで進める必要がある、というものも出てくるかもしれません。
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