医療現場は、ことデジタル改革については傍観者的立場を取りがちだ。理由の1つは、資金不足にある。また、持てる資金は可能な限り前線医療に割り当てられる。だが、医療提供の必要性がこれまでになく高まる中、テクノロジーが医師の役に立つことが明確になってきている。ビデオ会議から人工知能(AI)まで、新型コロナウイルス危機対策として導入されたあらゆるテクノロジーは、使われなくなることはないだろう。未来の医療は、データ分析と自動化がさらに進むと期待しよう。
新型コロナウイルス感染症に罹患した人の多くは病院で感染しており、医療スタッフ自身が感染する危険性も高い中、ロボットなら人から人への感染リスクを減らしつつ、病院の業務を支援できる。
新型コロナウイルス以前、ロボットは主に手術室で、外科医の管理下で使われていた。今では、ロボットは病院で新たな役割を担い、一部の医療スタッフに代わって医療行為や院内物流を支援している。
オランダのUVD Robotsは2月以降、多くの病院に自律移動ロボットを納入した。このロボットは、紫外線を使って病棟の細菌やウイルスを殺菌する。新型コロナウイルスの感染が最初に広まった武漢でも、ロボットは患者に食事や薬を運ぶためにも利用された。バイタルサインをチェックすることなどで新型コロナウイルスによる症状を監視するロボットや、離れた場所にいる医師と患者の問診を可能にするテレプレゼンスロボットも投入された。
だが、ロボットが人間の臨床スタッフと同じ役割を完全に担えるかという懸念が浮上している。
欧州議会は新型コロナウイルス感染症と闘うテクノロジーに関する報告書の中で、「パンデミックの中、患者や高齢者に対して自動治療や検査ロボットを使う際は、プライバシー、人間の尊厳、自主性への潜在的な影響と、技術的な、また(誤った)感情的依存の可能性に配慮する必要がある。こうした影響は、感染者の隔離やソーシャルディスタンシングによって作り出される孤独感や心の脆弱性によって強まる可能性がある」と述べ、「ロボットは、人間が提供する重要な医療行為の一部を代行できるかもしれない。だが、人間のケアで重要な、交流と共感についてはどうだろう」と疑問を呈した。
新型コロナウイルスの収束後、ロボットの魅力は強く残りそうだ。医療ロボット企業の売り込みは、働きすぎな医療スタッフの単純作業をロボットに任せることで、スタッフは患者のためにより多くの時間を割けるようになるというところだ。
だが現実には、ロボットは病棟のルーティンワークをこなすだけでなく、結局は患者と接する仕事もすることになり、患者が看護師や介護士とすごす時間を減らし、患者が人間と接触しない時間が長くなる可能性がある。
医療提供のコストも医療サービスの需要も高まり、かつ医療スタッフが不足する中、リスクの高い患者の看護は医療ロボットが担当することになるかもしれない。とはいえ、そうしたロボットのコストを考えると、本格的な変化が起こるのはまだ先のことだろう。
ロボットと共に、ドローンも人から人への新型コロナウイルス感染を防止する方法として導入されている。例えば、トラックではなくドローンで配送すれば、うっかりウイルスを拡散させてしまうかもしれない人間の運転手は介在せずに済む。
既に多くの政府が、必要とする病院に個人用防護具を届けるためのドローンを認可している。英国では、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ハンプシャーからワイト島へドローンで医療用品を運ぶテストを前倒しした。ガーナでは、新型コロナ感染検査用の患者の検体を農村地域から集め、それを検査する都心の病院に運ぶためにドローンが使われている。また、多くの国で、ドローンは僻地のコミュニティーや避難中の人々に医薬品を届けるためにも使われている。
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