職場でのエチケットは一般にはロボットとは無関係なものだ。だが、マサチューセッツ工科大学(MIT)の新プロジェクトは、ロボットが人間と共により効果的に働けるようにするため、ロボットにエチケットを教えようとしている。新型コロナウイルス感染症の影響で人間同士の接触が安全ではない現在、ロボットにエチケットを教え込むことで、本来なら人間同士で協力する必要のあるタスクを支援するロボットを、職場に迅速に導入できるかもしれない。
人間は働きながら職場エチケットを習得するが、ロボットにとっては当然、これは非常に異なる命題だ。MITのコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)の研究者によると、ロボットは、「Siri」や「Alexa」の人工知能(AI)のように質問し、命令を理解することでこうしたスキルを構築することはできないという。ロボットは、コミュニケーションをとるべきタイミングや、話していいかどうかを知る必要がある。
研究者はロボットに、コミュニケートすべきかどうか、いつ、どのようにコミュニケートするかを細かく伝える代わりに、「CommPlan」と名付けた新たなフレームワークを構築した。CSAILによると、これはロボットに礼儀正しさの高度な行動規範を与えるものだ。
CommPlanのフレームワークは「人間とロボットが共同作業する間、話しかけるべきかどうか、いつ、何をコミュニケートするかを決定する」と研究者は記した。最終的な決定はロボットが、可能な限り効率的にタスクを完了できるように行う。CommPlanは決定の費用対効果分析に学習と計画のアルゴリズムを用いているとCSAILは説明した。
「例えば、人間に質問することがロボットがミスをしないことにつながって時間の節約になるのか、人間の作業を中断させることで作業を遅らせることになるのか? ロボットは、与えられた過去の行動データに基づいて、人間が忙しいか答える余裕があるかといった要因の組み合わせを検討する」
CSAILのチームは、台所を想定した作業で実験した。サンドイッチを作って包み、ジュースを注ぐというものだ。実験の結果、CommPlanを使うと人間とロボットのチームはより安全かつ効率的に作業ができることが分かったという。
このフレームワークの論文の共著者でCSAILの博士課程、Vaibhav Unhelkar氏は声明文で、こうした行動規範の作成はプログラマーにとってかなりの時間と労力、専門知識が必要なため、CommPlanの成功に勇気づけられたと述べた。「CommPlanは、人間の専門家とアルゴリズムの力を合わせ、より効果的で同時に開発者の手間を省ける行動規範を作成する」(同氏)
研究者らはさらに、手作りの行動規範は型にはまったものになるので、過剰なコミュニケーションのような問題に悩まされる可能性があると述べた。
論文の別の共著者でMITの大学院生、Shen Li氏は声明文で「手作り行動規範の多くは、Slackで頻繁に話しかけてくる迷惑な同僚や、仕事の進捗具合について何度も確認する小うるさい上司のようになる。あなたが緊急な状況でのファーストレスポンダーであれば、同僚からの過度のコミュニケーションは重要な任務の邪魔になるだろう」と語った。
研究者らは、CommPlanの良好な実験結果について、このフレームワークが「医療、救急搬送、宇宙事業、製造業など、さまざまな分野に適している」ことを示すと述べた。CSAILによると、今のところこのフレームワークは話し言葉でしか使っていないが、ジェスチャーや拡張現実(AR)システムなど、他のアプローチにも応用できるという。
ブラウン大学のStefanie Tellex教授は声明文で「この研究成果は、人間がロボットから必要とするものと、ロボットが適切な量のコミュニケーションを試みることを論じている点で興味深い」とした。
Tellex氏はこの研究に関わっていないが、「この取り組みで、ロボットは人間の要求により敏感に反応するようになり、人間にとってより役立つものになるだろう」とも述べた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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