突然の休校で「オンライン授業」に転換--筑波大学附属高校・山田教諭が語る舞台裏 - (page 2)

 5分に1回ぐらいキーワードの一部を話して、最後まで授業を見るとそのキーワードが完成するという方式は米国でよく行われていると聞き、取り入れている教員もいます。

 ですが、やはり授業の面白さによって惹きつけることを目指したいと考えています。ペンタブで書き込みながら授業する動画や、動画配信とZoomを組み合わせる授業など、さまざまなスタイルで実施しています。また、教員2人で生徒役と教師役をして言葉をかけあいながら行うこともあります。ほかにもLED照明を用意したり、音声品質を上げるためにマイクをピンマイクにしたりするなど試行錯誤もしましたね。

 生徒から「飽きたので面白いことやって」とリクエストされたこともあったので、1回だけ自宅で炒飯を作りながら数学の授業をするという企画モノをやったこともありました(笑)。生徒たちが考えている間に調理をして、最後に炒飯が完成して終わりというもので、思いのほか評判が良かったです。

 また、以前は数学Ⅲの授業の中で、大学1年生で学習する解析学の一部も扱っていたのですが、オンライン授業ではそれを切り分けて、難易度を下げた授業を公開しています。意欲がある生徒対象に別途「解析学入門」を開講し、意欲があれば発展的な授業を受けられる仕組みにしました。オンライン授業なら繰り返し見られるというメリットもあります。対面授業が可能になっても、こうした生徒の段階に応じたコンテンツを用意して溜めていくことができればと思っています。

 対面授業とオンライン授業での学習効果の違いはこれからわかってきますが、楽しみでもあり、怖くもあります。オンラインでは、授業後にそれぞれの生徒が感想や意見、質問を残すルールにしていて、その質問に答えることで個別のフォローはむしろできていると感じています。

 5月20日に第2回のアンケートを実施したのですが、オンライン授業は自分のペースで進められるから良いという回答もありました。4月の時点では、行事や部活の試合がなくなることで暗澹たる気持ちになっていた生徒たちも、5月には少しずつ授業にしっかりと取り組めるようになってきました。一方で、課題の未提出が続いている生徒もクラスに数人ずつ見られます。ここについては、対面での授業が開始されたので、学校に来たときにフォローしていきたいと考えています。

ーー山田先生は授業のほかにも、文化祭で遊園地のコーヒーカップを作ることを全国に普及していますね。2020年の文化祭はどうされるのでしょうか。

 コーヒーカップは2012年に私の担任したクラスが全国で初めて作り、2017年には大型化、そして2019年にはついに電動化に成功しました。今では全国で400校近い学校が製作しており、作り方などをお伝えすることも多いです。

 2020年の文化祭は例年通りの開催はできませんが、決して中止にはしないという方針を4月末に教員会議にて決めました。文化祭実行委員会と話し合い、オンライン文化祭を開催することを計画しています。バーチャルSNS「cluster」を利用したVR空間やYouTube、Zoomを活用します。うまくいくかはわかりませんが、何でも中止にしてしまうことはもったいないと思っています。

 本校でも中止になっていることはたくさんあります。週1回行っていた学校見学や国際交流などです。しかし、コロナ禍でこそチャレンジしていくことも大切です。4月のアンケート結果からは、「僕の一年を返してくれ」といった生徒たちの心の叫びが伝わってきました。コロナ禍でもやりがいや楽しみを持ってほしいという思いを強く持っています。授業についても意欲的に取り組んでほしいとの思いでここまでやってきています。

ーー進学校として学びを止めてはいけないというプレッシャーなどもあるかと思いますが、今後の教育のオンライン化についてはどのように考えていますか。

 本校は国立大附属であり、モデル校なので、今回の成果や課題を残していかなければいけないという使命感を持っています。先日も研究会を開いてオンライン授業のメリット、デメリットや、授業についていけない生徒に動画コンテンツを用意することの価値などを話し合いました。

 我が校の成果をまとめて全国に発信していくことは、今後も継続していきます。本校の ウェブサイトでも、実際のオンライン授業の動画やレポートを公開しています。文化祭に関しても、「自分たちが楽しくて良かったね」では終わらせません。生徒たちは全国の学校と連絡を取り合って、実現に向けて努力しています。やろうと思えばできる、ということを発信していきたい。私は「我々が全国を元気づけよう」という意欲を持って取り組んでいます。

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