ビットキー、工事不要の顔認証ソリューションをマンションに導入--顔でエントランス解錠

 ビットキーが、既築タワーマンションのエントランスを顔認証によるウォークスルーに変える。東京都江東区にある「プラウドタワー東雲キャナルコート」に、顔が鍵になる「レジデンス向け顔認証ソリューション」を導入。6月11日に提供を開始する。

「レジデンス向け顔認証ソリューション」の実演。この距離で顔認証が判定され、エントランスの扉が開く
「レジデンス向け顔認証ソリューション」の実演。この距離で顔認証が判定され、エントランスの扉が開く

 ビットキーはスマートロック「bitlock」の開発、製造、販売などを手がけるスタートアップ。2018年8月に創業し、bitlockは約25万台を販売している。bitkeyを利用したサービスプラットフォームの企画、開発、運用も扱っており、5月には、顔認証で解錠ができるデジタルキープラットフォーム「bitkey platform」をリリースした。

 プラウドタワー東雲キャナルコートのレジデンス向け顔認証ソリューションは、既築タワーマンションとして初めて顔認証によるエントランスの解錠を実現。エントランスにタブレット端末を設置することで使用でき、工事が不要。判定にかかる時間はごくわずかなため、タブレットに顔を寄せることなく、ウォークスルーで通り抜けられる。

 ビットキー 代表取締役CCOの寳槻(ほうつき)昌則氏は「従来の顔認証は、画面前にたってのぞくと数秒間で認証が完了していたが、ビットキーは歩きながら瞬時に顔認証ができる技術を使っている」と特長を話す。ビットキーでは、顔の特徴量でデータを作成し、それを集合玄関ドアのオートロック解錠ができる「bitlock GATE」に送信することで、解錠ができる仕組み。bitlock GATEは、エントランス前にあるオートロックシステムに内蔵されており、エントランスの扉とは有線で接続。タブレット端末で顔認証の判定が済むと、Bluetooth経由でbitlock GATEに送信し、エントランスが開く。

「レジデンス向け顔認証ソリューション」の仕組み
「レジデンス向け顔認証ソリューション」の仕組み
カメラ機能とビットキーのアプリケーションをインストールしたタブレット端末
カメラ機能とビットキーのアプリケーションをインストールしたタブレット端末
bitlock GATEを内蔵したオートロックシステム
bitlock GATEを内蔵したオートロックシステム

 プラウドタワー東雲キャナルコートは、2013年に入居を開始したタワーマンション。600世帯、約2000人が居住している。現在、オートロックシステムに鍵を近づけてエントランスを解錠しているが、買い物帰りで両手に荷物を持っていたり、子どもと手をつないでいたりして、解錠がしにくいという課題があった。

 改善に向け、デバイスを携帯することでエントランスを解錠する案が出ていたが、設置やデバイス費用に懸念があったほか、デバイスを紛失する可能性や今後の発展性がないことなどから、顔認証ソリューションの導入を検討。2月から実証実験を開始し、現時点で約30人の住民が先行的に使用している。

 1週間前から実証実験に参加している住民の田中さんは、小さなお子さんが2人おり、バッグが大きかったり、ベビーカーがあったりと両手がふさがる中でのエントランスの解錠が大変だったとのこと。「顔認証になってからは、すごく楽になった。顔登録のときはメイクしていたが、すっぴんでも解錠できた」と使い勝手を話す。

 レジデンス向け顔認証ソリューションの導入にあたっては、マンション内で説明会を実施。106世帯128名が参加し、住民の興味は高い。「元々住民同士の交流が盛んで、夏祭り、クリスマス会といったイベントも年間50回ほど実施している。7期目で初期設定の委託業者をすべて変更しており、7期末時点で管理費会計は3億円の黒字」と、プラウドタワー東雲キャナルコート 管理組合理事長の副島規正氏はユニークなマンションの現状を説明する。

顔認証導入の4つの理由
顔認証導入の4つの理由
デバイスを携帯することでエントランスが解錠するシステムと顔認証システムの比較
デバイスを携帯することでエントランスが解錠するシステムと顔認証システムの比較
導入にあたっては数カ月に渡る実証実験を実施。住民の方とビットキーのスタッフによる専用LINEを設け、使い勝手などをやりとりしたという
導入にあたっては数カ月に渡る実証実験を実施。住民の方とビットキーのスタッフによる専用LINEを設け、使い勝手などをやりとりしたという

 副島氏は一般社団法人全国タワーマンション協会の代表理事も務めており、とあるイベントでビットキーの担当者と出会ったことが今回の導入につながったという。

 7月にはさらに実証実験を進め、先行体験者を300人規模に増員する計画。8月に予定している総会での承認を経て約2000人の居住者全員に導入する見込みだ。「基本は全員に登録していただくが、鍵をかざす従来の方式も併用するため、移行もスムーズにできると考えている」(副島氏)。

 顔の登録については、専用アプリをインストールしたスマートフォンのほか、エントランスに設置されたタブレット端末からも可能。「登録は何万人でも可能。大人の方は一度の登録で済むが、子どもの場合は数年ごとに登録し直す必要がある。7月にはマスクを装着していても顔認証ができるアップデートを予定している」(寳槻氏)とする。

 導入コストについては「従来のものに比べ5分の1程度の価格。今回のプラウドタワー東雲キャナルコートについては、実証実験の要素もあるため、明確なコストは出せないが、今後、新築、既築マンション向けに同様のソリューションを提供していく予定で、その時には価格を明示する」(寳槻氏)とした。

 今後は宅配会社と連携し、担当者の顔を登録することで、オートロックマンションでの置き配を実現したり、専有部にも顔認証のシステムを導入したりすることで、キーレスでの体験を広げたりといった計画を考えているとのこと。エントランスの顔認証により、居住階を特定し、エレベーターを連動して動かすといったことも想定しているとした。

左から、プラウドタワー東雲キャナルコート 管理組合理事長の副島規正氏、ビットキー 代表取締役CCOの寳槻(ほうつき)昌則氏、住民の田中さん
左から、プラウドタワー東雲キャナルコート 管理組合理事長の副島規正氏、ビットキー 代表取締役CCOの寳槻(ほうつき)昌則氏、住民の田中さん

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