KDDIは5月14日、2020年3月期の決算を発表した。売上高は前年度比3.1%増の5兆2372億円、営業利益は同1.1%増の1兆252億円と、増収増益の決算となった。
同社の代表取締役社長である高橋誠氏によると、増収増益の主な要因は、成長領域と位置付けるパーソナルセグメントのライフデザイン領域と、ビジネスセグメントがともに増益となり好調に伸びていることだという。2019年10月の電気通信事業法改正による影響で端末の販売は落ち込んだが、同時に販促費も減少したことで相殺され、業績に大きな影響を与えるには至らなかったとのことだ。
パーソナルセグメントに関しては、中期目標に掲げるライフデザイン領域の売上高が1兆2180億円、決済・金融取扱高が6兆5370億円と順調に推移。特に金融・決済の取扱高は、すでに中期目標を超える規模にまで大きく成長するなど順調に拡大している様子がうかがえる。
その金融・決済領域に関して注目されたのが、2〜3月に大規模キャンペーンを実施した「au PAY」である。高橋氏によると、このキャンペーンによってauユーザー以外の利用が増え、決済件数も2倍超に急拡大しているそうで、今後は5月末に予定している「Ponta」とのポイント統合などにより、獲得した顧客にau PAYを継続利用してもらう環境整備に力を入れていきたいとしている。
一方のビジネスセグメントでは、既存の通信事業をはじめとした基盤事業に加え、顧客のデジタルトランスフォーメーション推進によってIoTや5Gなどの新規領域が成長していることが業績拡大につながっているとのこと。中期目標に対しても順調な進捗で、特にIoTの累計回線数は1150万回線と、進捗を大きく上回っているという。
また今回の決算に合わせ、KDDIはグループのID基盤強化のため、UQコミュニケーションズの「UQ mobile」の事業をKDDIに承継することを発表している。
高橋氏はUQ mobileを統合することによる3つのシナジーを挙げた。1つ目が、auとの2ブランド体制による全国での営業体制強化だ。「市場を見ていると顧客の多様性が進んでいる」(高橋氏)ことから、大容量通信を求める層にはau、価格の安さを求める層にはUQ mobileといったように、複数ブランドの活用による多様な顧客へのアプローチを進めていきたい考えを示した。
2つ目のシナジーは、au以外のグループIDに対するライフデザイン領域のサービス提供である。この点について高橋氏は「近日話していく」と答えるにとどまり具体的な施策に関する言及はなかったものの、au以外にもライフデザイン領域のサービス利用を拡大し、充実化を図りたい考えがあるようだ。
そして3つ目は、重複する店舗や業務などを減らすなどして事業の効率化を進められることであり、5Gの本格展開に向け一層のコスト効率化を図りたい狙いがあるようだ。一方で、UQ mobileを手放すUQコミュニケーションズは、現在のWiMAX 2+方式による通信事業を継続するとともに、今後は現在利用している周波数帯の5G対応を進めることなども検討されているという。
ただ現状、UQ mobileは現在KDDIからネットワークを借りてサービスを提供しているMVNOであり、それが貸し手であるKDDIに統合されるとなると、ネットワークの運用形態が大きく変わることが予想される。ただ、この点に関しては高橋氏も「今の形とあまり変わらないと理解しているが、ネットワーク構成をどう変えるかはまだ理解していない」と回答するなど、事業承継が2020年10月1日とやや先ということもあってまだ決まっていない部分が多いようだ。
ちなみに高橋氏は、4月8日に本格サービスを開始した楽天モバイルの料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」に関して、開始直前にKDDIとのローミングでまかなっているパートナーエリアでの通信量上限を5GBに増やしたことにも言及。この件はKDDI側に事前の説明がなく、高橋氏も「正直寝耳に水だった」とのことで、設備面の影響もあることから事前に協議が必要ではないかと楽天側には伝えたという。
パートナーエリアでの通信量が増えたことで、KDDIとしてはローミング収入の面でプラスに働くメリットがある。だが、楽天モバイルの競争力が高まったことで顧客流出が増える可能性もあることから、高橋氏は「シェアを奪われないようにしたい」と警戒する様子も見せ、UQ mobileとのダブルブランド化によって対抗していく考えを示した。
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