新型コロナウイルス関連

不動産会社が明かす「リモートワーク」の実情--3社にメリットや課題を聞いた

 新型コロナウイルス感染拡大防止を受け発令された緊急事態宣言。リモートワーク推奨が広がる中、対面での業務が多いとされる不動産会社はどのように対応しているのだろうか。

 音声認識で物件を特定して物件情報を応答する「スマート物確」や内覧予約がネットでできる「スマート内覧」など、不動産業務のIT化を推進するライナフがオンラインセミナー「導入企業が語る『不動産会社のリモートワーク』~コロナ共存時代で勝ち抜く会社とは?~」を開催。三菱地所ハウスネットとGood不動産を迎え、不動産会社のリモートワークの現状を話した。

 オンラインセミナーに登場したのは、ライナフ 営業部営業2課課長山中啓太郎氏、三菱地所ハウスネット 企画部主任の村元英明氏、Good不動産 営業本部IT戦略室係長の山口裕人氏。モデレータはライナフ 営業部マーケティング課の佐藤亜紀氏が務めた。いずれも自宅、ホテルなどのリモート環境からZoomを使ってセミナーを実施した。リモートワークに関しては、以前から少しずつ取り組んでいたが、緊急事態宣言を受け、急遽切りかえたという3社。どのように環境を整え、またどんな問題が生じたのか、実践することによって見えてきたメリット、デメリットはあるのかなど、3社のリアルな声を質問形式で紹介する。

Q1:現状のリモートワーク体制は。

ライナフ/山中氏:以前から一部社員がリモートワークを実施していたが、今回の新型コロナ感染拡大防止を受け、全社に導入した。ただ、郵便物やFAXの受け取り、印鑑周りの業務などがあり、管理部のスタッフが週一で出社し対応している。そのほかの社員は現状出社を禁止している。

三菱地所ハウスネット/村元氏:約1年前からリモートワークの整備を開始し、2019年10月の台風の接近、通過時に試験的にリモートワークを取り入れた。現在、原則在宅勤務にしているが、出社率は50%強というのが現状。すべての業務が在宅でできているわけではない。

Good不動産/山口氏:新型コロナ感染拡大を受け、リモートワークを開始した。現在社員の30%が出社しており、70%がリモートワークになっている。出社しているスタッフについては、時差出勤とローテーションを組み替えることで感染の防止を推奨。ローテーションの組み換えは週5日出社すれば良いということになっており、土曜日から水曜日など、人との接触をできるだけ抑えられる出勤体制になるよう工夫している。

Q2:リモートワークでの環境は。また、顧客やユーザーなど社外との打ち合わせ、商談は。

ライナフ/山中氏:全社員にスマートフォンを支給しており、テザリングを使ってWi-Fi接続もできるようにしている。社内でのやりとりには「Slack」を使用。Slack内には「雑談チャンネル」を設け、社員同士のコミュニケーションが取れるようにしている。

 打ち合わせなどにはZoomと「Microsoft Teams」を使用。今まで遠方のお客様とのやりとりは対面を求められることが多かったが、今回のことを機にリモートでの打ち合わせが進んでいると感じている。

三菱地所ハウスネット/村本氏:2月に全社員に向けモバイルPCを配布した。

Good不動産/山口氏:社内のコミュニケーションツールとして「Chatwork」、ビデオ会議ツールとして「Google Meet」「Zoom」を使っている。オーナーの方とは独自のオーナー向けアプリを用意しており、それを通してのやりとりも進めている。

Q3:リモートワークになっての懸念点は。

ライナフ/山中氏:業務のパフォーマンスは維持できていると考えており、社内のコミュニケーションもSlackにより取れているようだ。ただ、難しいのは新入社員教育。仕事になれてもらうにはオンラインだけでは難しい。

 また通信環境も課題の1つ。Zoomで打ち合わせをしていると接続が悪くなることもある。社内システムへはVPNを使ってアクセスしているが、社員数が40名程度なので、そこについては全く問題ないと感じている。

三菱地所ハウスネット/村元氏:基幹システムを使うためにVPN接続を利用しているが、自宅のWi-Fi環境や貸与しているスマートフォンの環境によって、満足に接続できないケースが出てきている。これは接続の上限数の想定よりも数をオーバーしているためで、社内でも早いもの勝ちのような状況が起きてしまった。

Good不動産/山口氏:私自身はVPNを使って基幹システムに入る作業はないが、使用しているスタッフから通信環境の不安定さや動きが遅い、そのため業務が捗らないという声が上がっている。

 また個人的なことになるが出社時間がなくなり、起きてそのまま仕事というスタイルになりがちで、仕事とプライベートの切換えが難しい。また非対面でのコミュニケーションが不慣れなため、なれるまではスタッフとのやりとりが大変だと感じた。

Q4:リモートワークに切り替わってからの現状の業務の状況は。

三菱地所ハウスネット/村元氏:IT重説と電子契約を導入しており、リーシング部分でのIT化は進んでいるが、管理部分はまだまだ。オーナー向けのアプリを導入し始めた経緯もあり、入居者向けアプリも選定して、解約、更新受付や問い合わせ対応も遠隔化していきたいと考えている。

 社内業務として、テレワーク化できていないのは経理部分。精算、送金、請求などが紙対応なので、その部分はまだまだだと感じている。

Good不動産/山口氏:管理面は電子契約までの取り組みができている。独自の募集支援・業務改善システム「GoWeb!」を通じて空室募集や入居申請といった契約部分をいかに電子化して対応するのか、仲介店舗における対面をいかに減らすのかがこれからの課題だと思っている。

 逆に紙でのやりとりが残っているのは経理関連。家賃の明細などはオーナーアプリを通じて送付できるが、すべてがアプリに切り替わっているわけではないので、若干紙のやりとりが残っている。見積書もメール送付できる仕組みは整っているが、オーナーの方によっては紙を優先されるケースもあり、対面でのやりとりが生じる。この部分を100%アプリに切り替えるのは難しいと思っているが、世代ごとに使っていただきやすいツールを準備していきたいと考えている。

Q5:緊急事態宣言の状態が長期化した場合最大のデメリットは。

ライナフ/山中氏:リモートワークか対面かの二択ではなく、両方にいい面があるので、場合によって使い分けられる体制を整えておくことが重要だと感じている。

三菱地所ハウスネット/村元氏:市況の落ち込みが一番怖い。新型コロナウイルス感染拡大防止を受け、お客様からの反響が少ないという側面もあるが、社内がリモートワークにより仕事が回しづらくなっていたり、対応が遅くなってしまったりといった部分も関係している点もあるのではないだろうか。

Good不動産/山口氏:緊急事態宣言の環境が長期化する前提で考えている。デメリットでいうと、管理業務で対面が残っている部分。課題は多くあるが、管理会社の働き方を変えていくという考えからすれば、今回のことは不動産産業界にとってプラスに働くと捉えられる。

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