ルワンダに日本発の「プログラミング学校」を設立--DIVE INTO CODE・野呂氏の挑戦 - (page 2)

ルワンダ人と日本人の「生徒の違い」

——実際に開校してみていかがでしたか。また、日本の生徒との違いなどはあるのでしょうか。

 日本人と比較しても何の遜色もなく、むしろITを学んだバッググラウンドがあれば、日本人より活躍するんじゃないかと感じました。ただ、1点だけ課題だなと思ったことがあります。それは、現地には日本のように学生時代からアルバイトをするような環境がなく、彼らは仕事の進め方をよく知らないということです。

 たとえば、「報・連・相(報告、連絡、相談)」や出退勤といった、一緒にコラボレートすることに慣れていないのです。ITの知識だけでは結べない信頼関係を教えていかないといけません。ただ、受講した人たちは大学を卒業していたこともあり、みんな真面目なのでしっかり説明すると理解してくれました。

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現地スクールで受講生たちへ講義

——現地には仕事が少ない状況ですが、受講生はどのようなキャリアを描いていますか。

 受講生全員にインタビューしたところ、ルワンダ国内の会社に勤めたいという意見はほとんどなく、自分の会社を作りたいという意見が多かったです。人を雇って雇用を生み出したいと。あとは、海外の企業と一緒に働きたいとも考えていて、3年くらい出稼ぎに出て実務経験をつけて、それからルワンダに戻ってきたいという意見を持っている人もいます。

 また、若者のために教育がしたいという人も多いです。仮説なのですが、経済がずっと伸びているので、明るい未来を信じているからだと思います。いつか起業して自己実現した先には、後進の育成に携わりたいと言っています。日本人からはあまり聞かないキャリア観ですね。

——ルワンダの「IT立国」という点についてはどのような印象を持っていますか。

 国全体がITに向いているため、関心は高いです。ITに詳しくなりたいと思っている人が多いし、「IT立国」という言葉に対してはエネルギーをもらっている印象です。光ファイバーやWi-Fiの整備にも力を入れています。

 とはいえ、ケニアや南アフリカなど他国に比べると、IT化は進んでいません。企業や産業に落とし込めていないのです。個人的にはIT立国を掲げるがゆえに、IT以外の産業を飛ばし過ぎている印象です。サービス業などの産業が発展しないと、IT化といってもなかなか予算がつきません。今後どうステップしていくのか気になります。

アフリカ展開とプログラミングスクールの今後

——アフリカという市場についてどのような可能性を感じていますか。

 アフリカは、私たちの会社の最終目的を達成する上で重要な戦略的拠点であり、かつ誰でもチャレンジしていけるんだということ発信していくメッセージの意味でも極めて重要な地域です。ABEイニシアティブ(African Business Education Initiative for Youth)の留学生たちとの交流も3年前から行っていて、インターン生も受け入れています。

ABEイニシアティブの留学生たちとの交流も
ABEイニシアティブの留学生たちとの交流も

 ABEイニシアティブの人たちに私たちのビジネスの話をすると、とても興味を持ってくれます。教育機会ががないから若者が他のところにエネルギーを使ってしまい、国が荒廃していくので、そのエネルギーの矛先と、学んで仕事につなげる機会さえあれば、きっと国が良くなると信じているんですよね。その方たちに私たちは(プログラミングという)すぐに提供できるものがあるので、機会を提供したいという使命感に駆られています。経済合理性をちゃんと満たしながらやる難しさはありますが、今後も続けていきます。

 アフリカをマーケットと認識して取り組んでいる日本企業はごく一部です。でも、同じ目標を共有すれば一緒に働くことができて、信頼関係を築けます。現状は、現地のスクールのフランチャイズのような形で広げていく方法や、先進国の受講生をサポートする仕事としてオフショア教育という新しいカテゴリの仕事を作る方法などを想定しています。仕事の獲得に関しては、日本や現地の開発会社が協力してくれるとありがたいと思います。

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セネガルにて中谷真一外務大臣政務官と現地に戻ったABEイニシアティブ生

——今後は世界にプログラミングスクールをどのように展開していく予定ですか。

 今は新型コロナウイルス対策で世界中が影響を受けていて、みんなの心がひとつになっているタイミングだと思います。今後オンラインで人がつながることがもっと気軽になり、国境を越えるとても大きな機会が訪れるんじゃないかと思っています。日本もアフリカも関係なく、オンラインで教育機会をもっと提供できるように動き始めています。オンラインのブートキャンプのように、各国の受講生が一緒になれる機会を作っていきたいと思っています。

 そして、長期的には欧米にもサービスを展開したいと考えています。日本とアフリカのパワーで米国と欧州に行くことが次の目標です。すでにルワンダ展開により英語圏への展開が可能な状態ですが、セネガルに展開できるとフランス語圏への可能性が広がります。世界では英語とフランス語を多くの人が使っているので、戦略的には東半分がルワンダから、西半分はセネガルから、そして日本のサービスクオリティを掛け合わせれば、世界各国にサービスを展開できると考えています。大きな教育のコミュニティを作ることが目標です。

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マッキー・サル・セネガル共和国大統領と握手

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