在宅勤務だけでは不十分だ、今こそ従業員を守ろう

Forrester Research (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2020年04月13日 07時30分

 新型コロナウイルス感染症は人類の悲劇だ。人命が失われ、精神的な苦しみがもたらされ、深刻な経済混乱は避けられない。企業の最初の反応はシンプルで、可能な限り従業員を在宅勤務に適応させるというものだ。仮想プライベートネットワーク(VPN)サービスを提供するAtlas VPNが3月23日に公開した調査結果によると、米国ではVPNの利用が過去2週間のうちに124%増加したという。

 在宅勤務の緊急適用により、ソーシャルディスタンシング(他者との距離をとること)は確保された。だが、在宅勤務は万能薬ではない。企業は、そのビジネスエコシステム、企業文化、テクノロジーに関連する問題に直面しており、その解決には戦略的な方向転換が必要だ。

 「デジタルノマド」と呼ばれる、どこでも仕事ができるフリーランスや業務委託者の場合、簡単に在宅勤務に適応できるだろう。だが、そうした人々に支えられているカフェやAirbnbのホスト、コワーキングスペースなどのビジネスエコシステムは新型コロナウイルスの影響で使用できなくなった。

 もちろん、そもそも全ての従業員が在宅勤務できるわけではない。Forresterの調査では、60%は在宅勤務が可能という結果になった。つまり、40%はできないということだ。その多くは小売りの販売担当者や看護師など顧客と直接対面する職種、倉庫の従業員、工場労働者、調理師などの生産職に従事する、現場の労働者だ。

 オフィス勤務の従業員が自宅で安全に仕事できるようになる中で、こうした現場の労働者は自らの安全性に疑問を抱いている。イタリアでは現場の労働者がストライキを決起し、取り残されたと感じるとして抗議した。現場の労働者は感染リスクも高い。Amazonの6つの物流倉庫の複数の従業員が、新型コロナウイルス感染検査で陽性となった。対策としては、個人用保護具の追加と手洗いのための頻繁な休憩が効果的だ。

 在宅勤務が可能な従業員にも課題がある。リモートワーク用ツールに不慣れな多数の従業員が急に利用しなければならなくなったため、テクニカルサポート担当者の負担が増大した。適切なツールを提供するにしろ既存のツールを使うにしろ、緊急を要する。Microsoftのコラボレーションプラットフォーム「Microsoft Teams」のデイリーアクティブユーザー数(DAU)は3月中旬の1週間で40%近く急増した

 在宅勤務がはらむのは技術的な問題だけではない。従業員は不安、ストレス、落ち込みなどメンタルヘルスの問題を抱えたり、孤独を感じたり、また、仕事とプライベートの境が曖昧になったりしてしまう。リーダーは、チームのアイデンティティーと目標を強化することで従業員の体験をポジティブにし、士気を高めることができる。

 この危機的状況を乗り越える最善の方法は、自社の従業員のかけがえのない価値を再認識することだ。従業員の雇用を維持できる企業もある。Disneyは運営するテーマパークを閉鎖しているが、キャストへの給与を支払い続けている。Appleは直営店であるApple Storeの閉店中も担当従業員に給与を支払っている。すべての企業にDisneyやAppleのような余裕があるわけではないが、透明性の維持や従業員の安全を利益より優先させる姿勢は長期的には成功をもたらす。

 結局、信頼重視の戦略が大切だ。Edelman Trust Barometerによると、労働者は政府よりも雇用主を信頼するという。米国では労働者の69%が、雇用主がパンデミックに効果的に、責任を持って対処すると信じている。米国の労働者のほぼ半数が、政府は十分な対策を講じないと懸念しているため、雇用主には大きな責任がかかっている。今こそ従業員の信頼に応える時だ。

 従業員が安全に仕事に従事できるように、在宅勤務用のコラボレーションソフトであれ、現場労働者のためのマスクと手袋であれ、適切なツールを提供しよう。ポリシーと従業員の健康に関する情報を頻繁にアップデートしよう。食品スーパーのTrader Joe'sが行ったように、有給の病欠を認めるようポリシーを改めよう。

 こうした取り組みは倫理的に正しいだけでなく、ビジネスにとっても有益だ。この危機が去れば、あなたは従業員を雇用しなければならなくなるだろう。「御社はパンデミックをどのように乗り越えましたか?」というのが採用面談での新たなトピックになるだろう。採用候補者は、在宅勤務、パンデミック対策、事業の持続性に関する方針について質問してくるだろう。そうした未来に目を向けつつ、この危機の中、かけがえのない貴重な従業員を守ろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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