マジシャンとして公演200回超え--NTT西日本の新規事業創出プロデューサーが説くイノベーターの鍵 - (page 3)

藤井涼 (編集部) 石田仁志2020年06月02日 09時00分

 そうです。2017年7月に出向から戻り、今の部署に着任しました。そして、その3カ月後にHEROES PROJECTを立ち上げました。HEROES PROJECTでは、NTT西日本グループに所属する地域の現場社員が新規事業を創出するために必要な3つの支援をしています。1つ目は挑戦するための環境づくり、2つ目はスキルアップ、3つ目は新規事業創出の伴走です。

 立ち上げてから約1年半で150人以上が参加し、アイデアは50以上。2019年には社長公認のドリームチームプロジェクトという全社的な新規事業創出プロジェクトも立ち上がり、今では年間200人以上の新規事業創出希望者の支援をするようになりました。

ーーご自身の考えを社内で実現されるのがすごいですね!

 ありがとうございます。でも、僕一人で実現したものではなく、チーフプロデューサーの尾﨑を始め、活動をしていくにあたり、たくさんの方々にご支援していただいて実現しました。大切なのは一人で動くことではなく、たくさんの方々に応援していただくことだと思います。

ーー応援してもらうためのポイントはありますか?

 応援していただくポイントは、会社の方向性と合わせることですかね。自分のやりたいことが、会社の何に貢献するのかということを意識した上で行動することが重要だと思います。今回のHEROES PROJECTの場合は、会社の収益向上に貢献するために必要な“事業創出”や“人材育成”にもつながりますので、応援していただけたのではないかと思います。

 あとは行動実績です。どれだけ会社の方向性と合わせた発言をしたとしても、それまでに全く動いていなかったら、信用されません。NTT-WEST YouthやICOLAの活動、事業創出実績があったことから、信頼度が高まり、応援していただけたのではないかと思います。

ーー確かに会社の方向性に合わせることは大切ですよね。事業創出についてはいかがでしょうか?

 事業創出に関しては、飲食業界向けの新規事業をつくっています。こちらは大手飲料メーカーに出向した際、美味しい飲食店や心が熱い飲食店の方々とたくさんつながったのですが、僕の行きつけのお店がお金の問題や働く人材の問題、集客の問題などにより、閉店していたのを見て、なんとかしたいという思いから、飲食業界向けの新規事業創出に向けて動き始めました。

 2018年には飲食店様向けの無料集客支援サービスをリリースし、飲食店オーナーがたくさん集まる場所に自ら足を運び、また自身でも飲食店開業の学校や食育コミュニケーション協会、食品衛生責任者養成講習に通い、本当にさまざまなことを学ばさせていただきました。今となっては社内で外食に関してはプロだと自負しています。世の中でいったらまだまだですが(笑)。

 無料集客支援サービスは閉じたのですが、そこで得た社内外知識・経験・人脈は、自分の人生の中で、とても大きなものになりました。当時のこのプロジェクトは、企画から戦略、営業、プロモーション、規約などの法律関連、開発マネジメントを含め、社内は僕一人だったからです。学ぶことは多かったですし、スピード感はありましたが、自分一人で動くことの限界もこの時に感じました。

ーー新しいことに取り組む際、外から学ぶ行動力がすごいですね。一人ですべて動かすのは本当に大変だったと思います。今も一人プロジェクトなのですか?

 今は僕以外に、同部からマルチアサインで1名、社内副業5名の計7名体制で動いています。事業創出では久しぶりにプロジェクト体制で動いていますが、社内は本当に優秀な人が多く、また熱い想いを持っている人も多いと感じました。個人で動く方が誰に共有することもなく、スピードはあるかもしれませんが、チームで動く方が楽しいですし、いろいろな観点が入るので、個人で考えるよりも遥かに良い事業を創出することができると思いました。

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人に喜んでもらえることができる人になることで人生は変わる

ーー今まで社内外問わず、いろいろな動きをされていますが、その中でも最も今の及部さんに影響を与えた取り組みはなんですか。

 それはマジシャンとしての活動ですね。マジシャンになったきっかけは、「耳だけではなく、目でも楽しんでもらえるようになること」だったので、どんな人でも楽しんでもらうためにどうすればよいか真剣に考え、さまざまな研究をして、今に至ります。

 そこで、身についた力は、分析力、行動力、自己PR力、トーク力、臨機応変力などさまざまなものがあります。マジックは老若男女、年齢を問わず幅広い層に喜んでいただけることもあり、さまざまな施設や地域のイベントに呼んでいいただき、活動の幅も一気に広がったと共に人脈も一気に広がりました。“ステージマジック”を覚え、多い時は1000人以上の前でも披露してきましたが、たくさんの方々に同時に楽しんでいただける技術を身に着けたことも大きかったです。

 本業でマジシャンになるとマジックで稼がなければ生活できなくなりますが、会社に勤めながらマジックをすることで、マジックで稼ごうという気もなく、さまざまな場所でボランティア活動ができたことも非常に大きかったと思います。

 この「誰かに楽しんでもらうために頑張る行動」は、現在の新規事業創出の根源です。新規事業創出を考える時は、誰かに喜んでもらうために考えることが多いため、マジックの時に研究し、実行してきたノウハウがそのまま応用できるのです。またマジックもトライ&エラーを繰り返して良いものをつくっていきますが、そちらもアジャイル開発に似ています。

 新型コロナが広がっている今も在宅疲れの人たちに楽しんでもらおうと、オンラインマジックを始め、トライ&エラーを繰り返し、形になってきました。マジシャンとして、さまざまな現場で披露するようになってから人生は変わりました。

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一歩目を踏み出してまずはイベントの開催から

ーーいきなりマジシャンは難しいと思いますが、ご自身の活動を踏まえたうえで、改めてイノベーターになりたい人は最初にどのようなことをしたらよいでしょうか。

 社内イノベーターになるには、社内外の知識、経験、人脈が不可欠です。社内については、通常業務などで得られる知識・経験ももちろん大切ですが、最も大切なのは“人”です。どれだけいいことを考えても普段から“応援される自分”になっていなければ、成り立たないものも多いからです。そのため、普段から積極的に社内イベントを企画したり、参加したりして、コミュニケーションをとることを大切にしています。

 社外については、何よりも一歩踏み出してプライベートで挑戦すること。挑戦していくうちに、知識、経験、人脈は自ずとついてきます。最も良いのは、人が喜んでくれるような動きをすることです。みんなが喜んでくれることに進んで取り組むと、喜ばせ方も身につきますし、一緒に喜びを与えたい人も集まりますし、自然と周りは笑顔の人が増えますので、自分の人生も豊かになります。

ーーでは、具体的に何をすれば良いのでしょうか。

 誰でも始められる一歩目が、イベントを開催することです。私は音楽のイベント、日本伝統文化のイベント、異業種交流会などを20代の頃につくってきました。その経験が、社内の有志団体であるNTT-WEST Youthや、関西の活性化に向けた大企業横断の有志団体ICOLAをつくる上で活かされました。小さなイベントから積み重ねて大きなイベントを作っていき、組織の代表として動いていることも、社外の知識・人脈・経験を得る上で大きな影響を与えています。

 経営やサービスを小さくしたのがイベントです。最初はコンパや飲み会でいいと思います。それを少しずつ大きな規模にしていき、100人のイベントを複数回実施する頃には、イベント企画力や集客力が身についています。リピーターがいないと100人以上のイベントを複数回実施することは難しいため、お客さんの満足度をどうやったら高められるかに考えられるようになります。この能力は新規事業創出やマーケティング、プロモーションなどさまざまな企業活動で活かされます。

 ただ、イベントの開催は第一歩として始めやすく、経営的な知識や経験は学べますが、自分にしかできないアイデンティティをつくるものではありません。たとえば、僕の場合はパフォーマーやマジシャン、伝統芸能などの技術を身につけたことが、今ではアイデンティティとなっています。

 企画・実行力を身につけるという軸と、自分のアイデンティティを極めるという軸をどちらも持つことが、社内外の知識・経験・人脈を獲得し、活躍できるイノベーターの“鍵”です。まずは一歩踏み出してみましょう!その一歩は未来への大きな一歩になります。

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