KDDIは3月24日、事業共創プラットフォーム「KDDI∞Labo」のイベント「MUGENLABO DAY 2020」を、遠隔地からも参加できるバーチャルイベントとして開催した。目玉は、スタートアップと大企業による新たな事業共創プログラム「∞(無限)の翼」。本イベントで、注目の第1弾が発表された。
このイベントは3部構成で開催された。第1部は主催者であるKDDIによる挨拶。第2部は∞の翼のプロジェクト発表。第3部では、バーチャルガールズデュオ KMNZ(ケモノズ)がライブパフォーマンスをした。本稿では、5G時代の新たなオープンイノベーションである「∞の翼」を中心にレポートする。
イベントでは、バーチャルSNS「クラスター」が活用された。KDDI Open Innovation Fundの出資先であるクラスターと、KDDIの連携が功を奏した好事例だ。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、KDDIは2月18日時点で、早々にバーチャルイベントとして開催する旨を発表していた。イベントにはクラスターアプリ経由で参加でき、YouTube LIVEでも配信された。
第1部ではまず、KDDI代表取締役社長の高橋誠氏が登壇。5Gは高速大容量、低遅延、同時多接続という技術的な変革が注目されているが、高橋氏は「5G時代=ビジネスモデルの変革期」だと強調する。
「新しい時代の変わり目に、新しいビジネスモデルを提案した人が勝てる時代。5Gが産業の垣根をなくし、パートナーシップで新たなビジネスモデルを創る時がきた」と高橋氏。「5Gは大企業とスタートアップをつなぎ合わせる“接着剤”だ」と話し、KDDI ∞ Labo長の中馬和彦氏にバトンタッチした。
中馬氏は、「これまで、インターネットとリアルの世界は別々に存在していたが、5Gの時代はリアルの世界がネットに融合される」と語り、5G時代に向けた新たなイノベーションプログラムを2つ発表した。「5G for Startups」と「∞の翼」だ。
KDDIからスタートアップへ、アセットを提供するプログラム「5G for Startups」では、3つの支援を用意した。1つ目は、クラウド環境構築やMEC環境への移行など、5Gプロダクトの開発支援。2つ目は、KDDI DIGITAL GATE(虎ノ門)の開放など開発環境支援。3つ目は、5Gを完備するKDDI直営店の空間を開放する広報支援だ。「これを皮切りに、∞ Labのパートナー企業からも続々とアセットが提供される」と中馬氏。スタートアップ企業に参加を呼びかけた。
続いてメインアジェンダとして、「∞の翼」の趣旨が説明された。スタートアップ数社がアイデアを持ち寄り、大企業はアセットを提供して、5Gが接着剤になりながら、今までにないような事業を共創していく。こうした新しい座組みが∞の翼である。大企業が予算を組んで実施予定のプロジェクトに、スタートアップの技術やアイデアが合わさり、一緒に事業を創るという。第1弾として発表されたのは、4つのプロジェクトだ。
第2部では、∞の翼の4つのプロジェクトが発表された。まず大企業の代表者が登壇し、ゴールや提供アセットなどを説明したのち、パートナーとなったスタートアップを紹介。次にスタートアップの代表者が登壇し、事業共創のアイデアや自社の強みを説明した。
新たなイベント参加やコミュニケーション体験をテーマとした、「5G×コミュニケーション」では、ミクシィのインキュベーション事業部長である江本真一氏が登壇した。ゴールは、ポストソーシャルゲーム時代のエッジコンテンツへの挑戦だ。ここで重要になるのが、リアルアバター。アニメ配信のアバターとは異なり、「その人の存在を認識できる」というパワーを持つ。
ミクシィが提供するアセットは「マーケットイン」だ。スタートアップのテクノロジーやアイデアを、ミクシィがサービス化してユーザーに届けて、加速度的に広める、「バイラルマーケティング力」を提供する。リアルアバターは非常に大容量。江本氏は「5Gの高速大容量、同時多接続という特色が生かされる」と言及し、最初のパートナー企業となったVRCのCEO 謝英弟(シェーインディー)氏を紹介した。
VRCは、全身を3Dモデリングして、わずか20秒でリアルな3Dアバターを生成する技術を持つ。本イベント登壇者のリアルアバターも、同社が生成したという。リアルアバターには、実世界での体験データを保有させることができる。人間の分身としてバーチャル世界に入ることで、様々なサービスをアップグレードできるという。謝氏は「リアルとバーチャル世界のパイプ役として、3Dの世界観を普及していきたい」と想いを語った。
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