商業施設の運用効率化や、新たな顧客体験の創出をテーマとした「5G×商業施設プロジェクト」では、三井不動産の商業施設運用部長である小野慎太郎氏が登壇した。ゴールは、5Gを活用した商業施設での新たな顧客体験価値の創出だ。具体的には警備や清掃のIT化や無人化、商業施設で開催するリアルイベントの他拠点同時配信などを目指す。
三井不動産が提供するアセットは、同社が運営する「ららぽーと」などの商業施設だ。KDDIからも5G提供を受ける。小野氏は、パートナー企業となったSeqsenseのCEO中村壮一郎氏を紹介した。Seqsenseは、自律移動型ロボットの製造開発を手がけている。最大の特徴は、ロボットの目にあたる、独自開発した3DLIDARだ。ソフトウェア、ハードウェア、クラウド、ウェブ、AI、ビジネスとカバー領域も広い。
中村氏は「ロボットは、ソフトとハードのインテグレーションが非常に大事だが、それに加えて、実用に向けた技術とビジネスのインテグレーションも重要で、我々はそこも行なっている」と、同社の強みを説明した。今後は、2020年度に三井不動産所有の商業施設で、5G環境下でのロボット警備システムを構築する。2021年度以降は、屋外展開、清掃への転用など、大容量のデータが必要になるアプリケーションの開発を目指すという。
テレビ番組と連動した新たなビジネスの創出をテーマとした「5G×テレビ番組プロジェクト」では、テレビ東京 コンテンツ統括局プロデューサーの飯田佳奈子氏が登壇した。ゴールは、放送局にとっての新たな商品開発につながる事業作り。4月からレギュラー化する、民放初の赤ちゃん向けの新番組「シナぷしゅ」との事業共創から、新たなビジネスモデルを探る。
テレビ東京が提供するアセットは「番組連動・IP提供」。また、すでに同社とコラボレーション実績のあるピースオブケイクが提供する「note(ノート)」からも、オンラインサロン運営の提供を受ける。飯田氏は「新たなパートナーとのコラボレーションをKDDIさんに相談して、今回の事業共創が実現した」と明かし、トラーナ CEOの志田典道氏を紹介した。
トラーナは、月額制の玩具レンタルサブスクリプションサービス「トイサブ!」を提供している。2カ月に1度、各ユーザーに最適な玩具を選んで届けている。志田氏自身が親として感じた、玩具の課題から生まれたという。各ユーザーに玩具を選んで届ける精度向上のために、ユーザーが玩具を評価する仕組みを導入している。「玩具の評価データベース」の保有データは、すでに9万件に達するという。
この事業共創では、ユーザーの声にもとづいて玩具を作り、「シナぷしゅ」で遊び方を紹介し、「トイサブ!」で実際に遊んでもらい、「note」のオンラインサロンで共有された感想や意見を吸い上げて、玩具×コンテンツをユーザー中心に売るという、新しいビジネスモデル創出を目指している。
スタジアムでの新たなスポーツ観戦体験の創出をテーマとした「5G×スタジアムプロジェクト」では、名古屋グランパスエイト 専務取締役の清水克洋氏が登壇した。ゴールは、観客の興奮をリアルタイムに最高潮に引き上げることだ。同社はこれまでも、KDDIと戦略的イノベーションパートナーシップを締結し、AR/VRなど様々な技術を活用してスタジアム観戦の感動を高める取り組みをしてきた。
提供するアセットは豊田スタジアムだ。KDDIからは5Gの提供を受ける。清水氏は「双方向型のイベント演出や、会場外でも場内と同じ熱量で観戦できる仕組みづくりなどの事業共創案を募集した」と話し、パートナー企業となったEndroll CEOの前元健志氏を紹介した。
「ARという技術を活用することで、ゲームの世界と現実の世界がシームレスに交わっていくような体験を作りたい」と前元氏。東急電鉄、パルコ、伊勢丹などとコラボレーションし、商業施設をゲームの空間に書き換えるようなサービス提供の実績を紹介した。今後は、選手の新しい側面を描いたエンターテイメントを作ることによるファンエンゲージメントの向上、スタジアムというリソース自体をテーマパークのように使うことによる観戦前コンテンツの充実を図るという。
しかし、前元氏はこの事業共創は序章に過ぎないことを言い添えて、「人の知覚とデジタルが密に交わる未来」への飽くなき意欲をのぞかせた。
MUGENLABO DAY 2020は、バーチャルイベントならではのエンターテイメント性が際立った。登壇者が、参加者からのコメントを見てすぐに回答する場面や、参加者が自由なタイミングで拍手やサイリウムを送る姿には、和やかな雰囲気が漂っていた。
また、開始時刻が遅れる(ちなみに終了時刻は予定より早かった)、資料投影に手間取るなど、運営側の“不慣れ”にも「頑張って」とコメントが続出し、一体感と温かみのあるイベントとなった。
第2部終了時の登壇者フリートークでは、「バックヤードでリアルにお会いし、『またあっちの中の世界でお会いしましょう』と話して、またバーチャル空間で再会するのは、不思議な感覚だが没入できて楽しい」といった感想があがった。
「この楽しさを知ったら、やみつきになりそう」という登壇者の意見には、VR取材を行った筆者も完全同意だ。ヘッドマウントディスプレイを装着した3D空間での参加は、PC・スマホ画面を見て2次元で参加する際の“見させられている感”がなく、姿勢も発言も入退室も自由という気楽さがあった。
第3部に開催されたバーチャルガールズデュオ KMNZ(ケモノズ)によるライブパフォーマンスでは、参加者からさまざまなエモーションが送られ、KMNZの2人が喜ぶ姿も。最前列でパフォーマーを観られる臨場感は、リアルよりも贅沢かもしれない。
これらは、バーチャルだからこその“強烈なエンターテイメント性”だ。MUGENLABO DAY 2020は、5G時代の幕開けにふさわしいオープンイノベーションイベントとなったのではないだろうか(同社によれば、各種サイトでの合計再生数は約2万回にのぼったという)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
パナソニックのBioSHADOWが誘う
心地良い室内空間のつくりかた