3月14日に、山手線30番目の駅として開業した「高輪ゲートウェイ駅」。JR東日本では同駅を、JR東日本グループのさまざまな「やってみよう」を盛り込み、最新の駅サービス設備の導入や実証実験を進める場と位置付けており、駅構内では自動清掃ロボットや駅案内AIサイネージなどが試行設置されている。
そして、その「やってみよう」の1つとして、3月23日に駅構内にオープンするのが、無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」だ。
この店舗は、JR東日本グループのJR東日本スタートアップと、無人AIレジの開発などを手掛けるサインポストの合弁によって設立した、TOUCH TO GOが展開するもの。2017年に大宮駅で、2018年に赤羽駅で実証実験を実施しており、今回初の常設店舗として高輪ゲートウェイ駅に開設する。
店舗に入ると、自動改札機のようなゲートが備え付けられている。このゲートを通った後は、一般店舗と同様に、商品を手に取るだけ。入店者の行動は、天井に設置した約50台のカメラが認識しているほか、棚の重量センサーも併用しているという。商品は、決済前にカバンの中へ入れてしまっても問題ない。
有人レジの代わりとして、出口には決済端末が設置されている。画面には手に取った商品が表示されており、問題なければそのまま決済して終了だ。決済手段は、開業時点ではSuicaやPASMOなどの交通系ICカードに対応する。6月ごろには、クレジットカードや他の電子マネーにも対応する予定だ。
このほか店内には、無人販売に対応したコーヒーマシンが設置されている。カップをマシンにセットし、商品を選択した後に交通系ICカードで決済するというものだが、日本では初の導入事例だという。
TOUCH TO GO 代表取締役社長の阿久津智紀氏は、この店舗の無人AI決済ソリューションを、サブスクリプションモデルとして小売店向けに提供する考えを説明。このリアル店舗については「システムを見てもらうショールームとして運営している」と語った。
TOUCH TO GOの特徴は、入店時に会員情報などの認証を必要とせず、対応する決済手段さえ持っていれば、誰でも利用できること。阿久津氏は、Amazonが米国で展開する無人店舗「Amazon Go」を例に挙げ、「Amazonのアカウントがなければ入店できず、入口が狭まってしまう」と説明。TOUCH TO GOでは、誰でも利用できる店舗を目指していると語った。
TOUCH TO GOの正式運用はこの品川ゲートウェイが初だが、2018年に赤羽駅にて実証実験が行われたことがある。当時の店舗では開発途上ということもあり、同時入店が可能な人数が3人に制限されていた。今回の店舗では、開業当初は最大10人程度の制限を設けるものの、最終的には人数制限を掛けずに運用する予定だといい、導入時における利用者の利便性低下を防ぐ。
また、店員による品出しの際には、バックヤードから入店するというイレギュラーな状態が発生する。実証実験時にはシステムを毎回止めて対応する必要があったというが、今回の店舗設置に向け、システムをブラッシュアップ。バックオペレーションの運用も含めた店舗運営を主眼に、営業中の商品入れ換えに対応するシステムを開発したという。
なお、TOUCH TO GOは「無人AI 決済店舗」と銘打っているが、品出しを担当するバックヤードのスタッフは依然として必要だ。しかし、今回の店舗のような決済端末が2台ある場合、通常ならばレジ要員2人とバックヤード要員1人、計3人が最低でも必要となるという。TOUCH TO GOは、このレジ要員2人分の人件費を削減できるソリューションだ。
導入費用については、1か月あたり約80万円で提供する予定だという。阿久津氏は、「アルバイトの時給が1100円だとすると、1カ月では1人あたり約80万円の人件費が必要となる」とし、アルバイト1人と同等レベルの価格で売り出していくと説明した。今後は「NewDays」のようなJR東日本グループの店舗に拘らず、さまざまな小売店への導入を目指すといい、阿久津氏は2020年度中の導入を目標として掲げた。
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