続いて、現場で新規事業創出に取り組んでいるNTTPCコミュニケーションズの飯田氏が登場。飯田氏はソフトウェア技術者で、2019年度DigiComの優勝者である。音声とAIを用いた新規事業創出を担当し、声とAIを活用した「VOICE MART」プロジェクトを立ち上げ、事業化を目指している。
まず飯田氏は、NTTPCの新規事業に対する企業文化に言及。「新しい分野に挑戦するのが良しとされる会社で、コンスタントに新規事業創出の取り組みが行われている」という。そのような企業風土の中で飯田氏は、新規事業創出チームで活動をしているのだが、「いざサービスインしようとしてもなかなかうまくいかない」と悩みを打ち明ける。
「我々のチームはエンジニアが多く、技術情報のキャッチは速い。プロトタイプをすぐに作成してビジネスパートナーやイベントでリーチした人にヒアリングを行うが、パートナーが見つけられない」(飯田氏)
提案し、トライアルが終わって本格サービス展開の話になると、相手は「無償ならやるけど」と遠回しに断られてしまうのだという。その原因を飯田氏は、「課題解決するのにお金を出すまでもないアイデアだった」ことと、そもそも「パートナー探しのフック数が足りてないのでは」と分析する。そこで現在、親会社で展開する渡辺氏のビジネスイノベーション推進室と協力して新規事業への取り組みを進めているという流れである。
飯田氏が取り組むVOICE MARTとは、AIを使った声ライブラリと、それを使えるようにするプラットフォームである。VOICE MARTに個人、俳優、声優などが声を登録。その声を使いたい人が使ってサービスやアミューズメントに活用できるというもの。2019年度のDigiComで優勝して、今は事業性検証の段階にある。
まだ、「他人の声を自由に利用できる、そんな技術があるというレベル」(飯田氏)であるが、これを応用すると今後、声帯切除者の声を元の声に変換できたり、スマートスピーカーの声を芸能人の声に変えたり、コールセンターでクレームを受けにくい声で対応したりなどの活用が見込めるという。
飯田氏はVOICE MARTのビジネスモデル構築のために、NTTコミュニケーションズグループ全体のリソースを活用している。DigiComに参加した理由には、アイデアの価値検証ができることを挙げる。「審査員は我々より新規事業に詳しく、精度の高い目線で評価してくれる。評価されれば、いいアイデアとして自信をもって進められる」とする。
さらにもう一点、グループ内に出すことで、グループ内に応援者を得られるメリットがあるという。「NTTPCの10倍以上の人数から応援者を探せる。結果が伴うと、圧倒的に事業を進めやすくなる」(飯田氏)という訳である。現在、Business Innovation Challengeの2期生に応募して新規事業創出に取り組み、課題として認識している「課題解決にお金を出すまでもないアイデア」問題や「パートナー探しのフック」問題に対して知見を得て、事業化へ歩みを進めているところである。
最後に飯田氏は、自らの新規事業創出における取り組みにおけるポイントを、「NTTPCの『認める』文化」「継続的なチャレンジと振り返り」「親会社であるNTTコミュニケーションズを巻き込んだ新規事業創出」という3点にまとめて、再度渡辺氏にバトンタッチ。渡辺氏は、今回話した取り組みについて「まだ成果は出ていないし、これからも改善し続けなければいけない」と総括し、大企業における組織による新規事業創出の難しさと更なる挑戦の必要性について念押しした。
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