NTTドコモ・ベンチャーズは2月7日、同社が出資したベンチャー企業による講演のほか、プロダクトなどを展示するイベント「NTT DOCOMO VENTURES DAY 2020」を開催した。
展示会場を含めて国内外の多くのベンチャー企業が登場するなか、オープニングの基調講演には、NTTドコモ・ベンチャーズ代表取締役社長の稲川尚之氏とともに、5G商用サービスの開始を間近に控えたNTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏が登壇。5Gサービス展開におけるベンチャーを含めたパートナーシップの重要性について語った。
吉澤氏は、昨今企業の間でデジタルトランスフォーメーション(DX)が語られているなか、デジタル化を実現するテクノロジーの中で最も太い柱は5Gであるとアピール。ただし5Gはあくまで手段であり、「パートナーと共に5Gを活用することで革新的なサービスが創出でき、イノベーションを起こして新たな価値を提供できる。それを進めていきたい」と、5G時代のサービス展開の方向性について語った。
また、5Gサービス展開の特徴として吉澤氏は、3Gや4Gを導入した際はネットワークを速やかに構築することでその後からサービスがついてくる形だったが、5Gでは開始当初からサービスが利用できると説明。「ネットワークとサービスが融合した形で、同時に提供を開始する」と述べた。その状況を整えるために、これまでにドコモの5Gのオープンパートナープログラムに3200社以上が参加し、3年前から263件のトライアルを実施してきたと説明する。
すでに2019年9月から5Gのプレサービスを開始しており、コンシューマー向けのサービスでは、同時期に開催されたラグビーワールドカップで高臨場ライブやマルチビューイングサービスを実施。3月からは「新体感ライブCONNECT」として、高画質で高臨場感のあるバーチャル最前列という8KのVRサービスを開始する。
法人向けには、ビジネスや社会の課題を解決するソリューションとして、熟練労働者不足問題を解決するARグラスを用いた遠隔作業支援をするほか、VRグラスを用いて仮想空間の中で3Dオブジェクトの制作環境を提供するとしている。
そのなかで、ベンチャーとの5G協業事例として、「TIG(ティグ)」という触れられるインタラクティブ動画技術を開発するパロニム、エッジAIサービスプラットフォームのEDGEMATRIX、センサーを活用して人の体験を他人に伝えることができる触覚提示技術のH2Lの3社を紹介し、今後もベンチャーとの協創を加速していく姿勢を示した。
「春に5Gがスタートするが、ドコモだけでできることは限られている。スピードとチャレンジ精神で新たな世界を切り開くベンチャーの力は必要。社会課題を解決するソリューションや5G時代の新しい体験・体感を実現するサービスを協創によって作り上げ、より豊かな未来を共に作っていきたい」(吉澤氏)。
続いて、NTTドコモ・ベンチャーズの稲川氏が、2019年の活動内容を報告。同社は、企業内で活動するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)という特性上、財務リターンと事業開発の両方が重要なファクターとなるという前提のもとで、「2019年は『質的深化』をテーマに活動をしてきた」(稲川氏)と説明した。
スタートアップ投資は、5G、DX、マイクロマーケティング領域を対象に過去最多となる30件を記録。投資候補を厳選し、質の良いベンチャーに投資をするために、グローバルでの投資を増やした結果、20件のグローバル投資を実行したという。
同社は投資以外にも、CVCとしてベンチャーがドコモやNTTグループと接点を持つための窓口という役割も担う。このNTTグループとの協創領域では、協業の成立が32件あり、その中で同日東証マザーズへ新規上場した無料販売掲示板のジモティーと、先述したパロニムの2社が、ドコモから出資を受けたり、提携するなどの事業創出につながったと成果を示した。
また、2019年にオフィス内に設置するコワーキングスペースをリニューアルし、活動内容について全く口を出さずに自分のペースで事業開発を進めてもらう形での「シード/アーリーステージのベンチャー企業にコワーキングスペースを開放し、自由に頑張ってもらったらどうなるかというCVC内の実験」(稲川氏)を展開。その結果「6カ月で多くの企業がピッチコンテストで優勝したり、大手からオファーが来たりして実績ができた」(同氏)としている。
今後は、技術の進化に伴うイノベーションなど専門家であれば予測できること以外の、「読めないこと」に注目し、仕掛けを行っていくという。そのために、感度が高いデジタルネイティブ世代をはじめとする「挑戦者の信じる価値にいち早く気付いてフォローアップし、背中を押して成長を支える役割を担っていく」(稲川氏)とした。
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