アットホームが「いま解決すべき問題」として取り組む不動産業務のスマート化 - (page 2)

各店の業務フローチャートを手作り、なくせる仕事を見える化

 そのほか、スマ―ト契約はアドビ システムズと業務提携することで、加盟店向け電子サインサービス「スマート契約」を実現している。

 「電子サインの導入を考えた時に、やはりこの業界をリードしている会社と組むことが一番いいだろうと。当時はお付き合いがなく、知人から紹介してもらった。このように提携するきっかけはさまざま。不動産テックに取り組む企業などはある意味、競合会社にもなり得るので、競合になるか協業できるかは紙一重。それでも、接点を多く持つことで、スマート化を推進していきたい」と言い切る。

 人と人とのつながりから紹介してもらえるケースも多いというが、それ以外にもセミナーに足を運んだり、イベントに登壇したりと多くのアンテナを張る。最近では、アットホームのスマート化への動きを知り、案件が持ち込まれるケースも増えてきたという。

 その1つが、12月にリリースした家賃債務保証事業を展開する全保連とのシステム連携だ。これは、スマート申込において、入居申込者が入力した氏名、住所、勤務先、緊急連絡先などの申込情報を家賃債務保証会社に連携し、審査依頼できるというもの。ウェブ上で入居申込み受付から審査結果確認、通知までを一気通貫でできることが強みだ。

 業務連携や協業、自社開発とシステム開発に手を尽くす一方で、不動産会社への導入も進める。「導入していただく際に必要なのは、経営陣と現場の担当者の二層にご理解いただくこと。この2つのセクションが納得できるものを常に考えて導入を進めた。ただ不動産会社の皆さんは頭では効率化やペーパーレスなどのメリットを理解されても、慣れ親しんだ方法を変えることに抵抗がある方が多い。それを乗り越えるために、業務のフローチャートを作り、業務が変わる様を共有して、納得していただいた」という。

 フローチャートは、アットホームの社員が各店舗に半日程度かけ、現在の業務フローをヒアリング。その一つ一つを書き起こし、さらにスマート化することで効率化できたり、減らせたりする業務を可視化した。「安心感を持って導入いただくためにも、各店舗異なるフローチャートをすべて書き出した」と努力は惜しまない。

 もちろん、店舗ごとに業務フローは異なる。「グループ会社を持っていることで、入居審査までの流れが変わったり、情報確認の方法が異なったりと、本当に千差万別。ただ、このバリエーションを知れば知るほど、スマート化でカバーできる範囲が明確に見えてくる。一緒に作らせていただくことで私たちも大きな学びになった」とアットホーム側にもメリットのある作業になったという。

導入して終わりではなく、実績を出すまでをサポート

 アットホームでは、営業担当者のほかに「ITアソシエイト」という担当者が導入後の現場のサポートにあたる。「セミナーも実施しているが、実際に店舗に足を運んでの説明もする。導入はできてもどう運用するのかわからないという不動産会社は多い。導入して終わりではなく、運用する、実績を出す部分までをサポートする」ことで、実務に寄り添ったスマート化を進める。

 原氏は「不動産業務のスマート化は、業務が最も変化する管理会社がもっとも大変。ITツールの導入で業務を10~20倍のスピードを持って処理することも夢ではない」とする一方で、「仲介会社にも使いやすいシステムにすることで、実運用に対応できる」と管理、仲介会社の両面の取り込みを強調する。

 「入居申込までは仲介会社の業務だが、ITツールのログインIDそのものは管理会社が持っているケースが多く、IDを事前に提供してもらうなどの作業が発生してしまう。私たちでは、ATBBを連携することでIDのやりとりを省略。両方に使いやすいシステムを提供できると思っている」と、ATBBを運用する強みを活かす。

 期待するのはリードタイムの短縮だ。物件の情報公開から内見、申込のスマート化を進めることで、そのまま契約まで一気通貫でできる将来を見据える。「現在情報公開から契約までは短くても2週間前後はかかる。スマート化されれば、1~2日というペースでの契約も不可能ではない。これは空室期間の短縮につながり、さらには空室率の改善につながる」と将来像を描く。

 同時に見据えるのは仲介、管理会社のコア業務への集中だ。原氏は「現状は電話の応対から内見のスケジュール調整まで、とにかく手をかけて取り組んでいる。その部分がスマート化されれば、接客という本来の業務に集中できる。そこを私たちのスマート化の第一ゴールに設定し、さらに全体の業務をスマート化していけるよう、新たなサービスにも着手していきたい」とした。

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